3.他力本願な聖女様。
すみません。
体調不良気味(片頭痛?)なので、ちょっと休みます。
再開時期はまた告知します。
――
例によって平穏な学校での昼休み。
クラスメイトはみな各々に仲良しグループで机を囲み、弁当を開くなどして団らんしている。そういった場において、中心人物となるのが綾辻小萌だ。
なんでも小萌の手料理弁当は絶品らしく、男女問わずに恵んでもらうための列ができている。さながら教会に並ぶ、敬虔な信者であるかのようだ。
「綾辻さん! これって、毎日手作りしてるんですか!?」
「えぇ、そうですよ。みなさんに、食べてもらいたくて」
「そんな……! まさしく聖女様だ……!!」
彼女から施しを受けたクラスメイトは、あまりの感動に涙を流す。
そして、食事を口に運び感嘆の声を上げるのだ。
「美味しい、まるで料理人のそれだ!!」
そんな彼らを眺めて、俺は思う。
それ作ってるの、小萌のお母さんだぞ――と。
「なんとまぁ、ホント自分の評価ばかりだよな」
綾辻小萌は、自分を良く見せるためなら手段を択ばない。
あるいは自分のためなら、他はどうなろうと良いエゴイストだった。そんな彼女の振る舞いを改めて認め、俺は幼馴染みとして思う。
「なにか少しでも、変えてやらないとな……」
◆
「……私が、自分で料理を作れって?」
「そうだよ。いつかクラスのみんなにもバレて、思い切り恥をかくぞ」
「知らないわよ、そんなの。お母さんが学校にきて話すわけでもあるまいし」
そんなわけで放課後、俺の部屋。
今回は海晴が部活動の助っ人とかで不在のため、しっかりと二人きりで話ができた。しかし俺の指摘に対して、小萌は鼻で笑うかのように一蹴する。
たしかに、彼女の言うことにも一理あった。
バレなければどうということはない。
家庭科の授業では、周囲が気を利かせまくって何もせずに完了しているし。
「いや、そういうことじゃないよ」
「だったら、どういうことなのよ」
でも俺はあえて引き下がらず、少しの勇気を出して言った。
「将来の旦那さんに、不味い飯を出すつもりか?」――と。
つまりは、そういうことである。
別にこちらとしては、料理が必ずしも女性のものである、とは思っていない。これはあくまで、小萌に自分でやらせるための口実だ。もっともこの理由付けはまだジャブのようなもので、彼女が納得するなど微塵も考えていない。
だから俺は、他の理由も提示しようと――。
「それに、あと――」
「なるほどね。それはたしかに、困ったことになるわ」
「…………ん?」
だが、そこで思わぬ反応。
小萌は腕を組み、そっぽを向きながら言うのだった。
困ったこと、というと。すなわち『未来の旦那への手料理』について、か。俺としては深く考えていた言葉ではないため、ほんの少しだけ理解が遅れてしまった。
「それで、どうすればいいの。……私は包丁を握ったこともないわよ」
「よく高校生にもなって、恥ずかしげもなく言えるな」
そうしていると、小萌が堂々とした態度で発言する。
俺は思わずツッコむと、彼女は思い切り眉間に皺を寄せながら――。
「うるさいわね、初めて刻むのは知久でも良いのよ!?」
「シンプル殺人!?」
今度は、そんな爆弾発言。
俺はあまりの剣幕に慄くが、しかしここまできたら引くに引けない。そう考え、また少しの勇気を振り絞って提案するのだった。
「仕方ないから一緒に練習しよう。……簡単な料理なら、俺にもできるし」
「え、知久って料理できるの?」
「親が共働きだからな。昔から、よく作ってるよ」
「…………バカの癖に生意気ね!」
「一言余計だっての……」
すると、何やら驚いかれたかと思えば罵倒される。
俺の両親が働きに出ているのは、昔から知っているとばかり思っていたが。そもそも俺だって、彼女の親がどのような仕事をしているか詳しく知らない。いくら幼馴染みとはいえど、プライベートについてはそんなものかもしれなかった。
「それじゃ、今日は親も遅いしさっそくやるか」
「え、あ……その、二人きりで?」
「なんだよ。嫌なのか?」
「いや、その――」
俺の言葉に、珍しく声を詰まらせる小萌。
しかし数秒の沈黙の後に、いつものような軽蔑の眼差しを向けつつ言った。
「知久みたいな奴の手ほどきを受ける自分が、情けなかっただけよ」――と。
やはり俺の幼馴染みは、本日も平常運転のようである。
――
そんなわけで、今度は小萌さんの話。
面白かった、続きが気になる。
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履かない天使と自愛の聖女。~どうして俺の周りには、マトモな女の子がいないのか~ あざね @sennami0406
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