転生少女は王宮の下働き

星色

転生少女は王宮の下働き

息抜きに書いてみました。あくまで息抜きなので場所の位置とか規則とか設定とかなんかあやふやなのは気にしないで欲しいです。異世界感は少なめ。最後まで読んでくれると嬉しいです。

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前世なんて存在しないと思っていた。

仏教も信じるし、クリスマスキリストも一応信じてる。でもその前世だけは何故か信じられなかった。


———実際に体験するまではね


今世ではルリアは孤児として生まれ、『ルリア』と言う名前を院長から貰った。

前世では難関大学に上位で合格するほどの頭の良さがあったのでどこかに大商人に秘書にでもなろうかなと思っていたにだけれどルリアが15歳、王歴1234年の年に大掛かりな『引き抜き』が行われた。


引き抜きとは足りない王宮の雑用などにの下働きを権力と金で庶民から。王宮は基本、特殊な資格などを持っている場合や特例の者以外は男子禁制である。


まあ全員が男ではないと言うことだ。

そしてたまたま女であったルリアは引き抜かれた下働きに採用わけである。


(早く寝たいなあ)


「はぁ」

「どうしたのルア?」


ここにきて3ヶ月。ルリアが現状に不満の溜息を漏らすと同僚というべきか、同じ時に王宮に入ってきて勝手に話しかけてくる『マイル』が横に張り付いてくる。紫色の髪をツインテールにしており、ルリアは『マイ』と読んでいる。


(いつも能天気、何を考えてるんだろう)


引き抜かれたのにも関わらずいつも能天気でいられるのは彼女の良いところであり、欠点でもある。


「早く寝たい」

「ちゃんと仕事が終われば寝れるし頑張ろ〜?」

「・・・」


マイが洗濯籠を持ちながらルリアの顔を覗き込む。ルリアが眠いのにはいくつか理由があるが下働きは夜の10時消灯で朝の4時起きである。


前世では一日十二時間は寝ないと気が済まなかったルリアは常に眠いので隈がついてる状態だ。孤児院の時は結構好きなだけ眠れたがここじゃそうも行かない。


ある働けば解放されるがなので明確な期間は不明だ。まあ頑張れば出れるかもしれないと言うこと。


ここは簡単言ってしまえば中国の後宮のような場所である。ここは下働きしかいない場所だと言うのに香水の匂いが鼻につく。


下級妃嬪たちのいる場所からは結構な晴れているはずなのだがここまで香水の匂いがひどいとなると体中にふりかけているのだろう。


そういえば前世でもルリアはあまり香水が好きではなかった。せいぜい柔らかい匂いのものを接待の時につける程度だった。


籠に括り付けてある木簡を見る。そこには方角と記号、数字が書かれている。


(今日は別の場所かあ)


洗った服を入れた洗濯カゴを木簡に書いてある指定の場所まで運べばとりあえず午前の仕事は終わりである。とは言っても午後も永遠と服を洗い続ける。多分籠の中身は下級妃嬪の娘のもんだろう。


「本当最近は手荒れが酷いね〜。なんでルアはそんな手が綺麗なの」

「さあ、真面目にやってないだけかも」

「え〜、ちょっと教えてよ」


最近は特に手荒れがひどいとマイが愚痴る。12月の冬で乾燥していることも関係があると思うが、特に最近は下級妃嬪達が寒いということもあって服をポンポン洗いに回すからだろう。服を洗う時の石鹸も気になる。


「魔法でどうにかできないのかな! なんか、ぼーんって」

「魔法でどうにもできないから下女にやらせてるんでしょ」


そう言いながらマイが籠を上に持ち上げる。前にそれでカゴの中身を落としそうになっていたが大丈夫だろうか。


最近皆が抱えている問題、それは手荒れ。下級妃嬪たちの服を洗う石鹸なのでそれなりのものであり粗悪品ではないと思うが、いかんせん大量に洗うので手荒れは起きる。


ルリアの手が荒れていないのはただ単に気をつけていると言うこともあるが、前世の知識で作ったハンドクリームを使っているのが大きい。


本当は他の下女にも使わせてやりたいが、噂になって目立つのはゴメンである。それに自分用のしかない。

ハンドクリームは植物油と精油、蜜蝋があれば10分で出来る。


植物油は中庭にたくさんある種を潰して濾せば結構簡単に手に入る。精油もこの前隅に生えていたローズを使えば良い。


問題は蜜蝋である。蜂の巣をこの前見つけたが駆除されてしまっていた。

前世ならネットでボタン一つだったが今世ではそうもいかない。


(まあ、マイなら大丈夫か?)


『西◎十二』と書かれた建物に洗濯籠を運ぶと他の下働きがそのカゴを持っていく。彼女たちは他の下働きが洗った濡れている服を干す係である。とても羨ましい


どうにかしてその係になれないだろうかと考えるがいい案が思い浮かばない。

するとマイがルリアの手を持って引っ張る。

痛い。


「早くしないとお昼ご飯なくなるよ!」

「そんなに急がなくても今日は少し早く終わったから大丈夫だと思うよ」

「そう?」


嘘ではない、一応本当である。ぱあっと明るい笑みを浮かべてジャンプする姿はなんとも言えない小動物感があった。


ルリアは下働き、もとい下女の食堂へと向かった。



昼食を食べた後、午後の仕事も終わらせたルリアは些細なひと時を過ごしていた。


(やっぱり気持ちい)


一つ気になる事と言えば胸の圧迫感だろうか。まあコレばかりは仕方がない。十人ほどの他の下女と雑魚寝をしながら瞳を閉じた。寝る時間は六時間しかない、寝れる場所なら何でもいいのだ。


ーー


「ほんと最近手荒れが酷くて嫌になっちゃうわあ」

「そうそう、第二王子のライネル様すんっごい綺麗なんだって」

「今日、東側の方に来るらしい見てみようよ!」


昼食が終わり、残りのお茶を啜りながら耳を傾ける。ちなみにここは西なので毎朝暗くて寒い。喋った順にエミル、マイ、サリア。なんともお喋りな三人だ。


「ねえ、ルアも行こうよ!」


ルリアがぼーっとしているとマイが話しかけてくる。普通の下女であるならこう言う話に飛びつくのかもしれないがルリアは二十四歳まで生きた前世の記憶がある。さらには男にもあまり興味はなかったのだ。


(さて、どうしたものか)


ルリアにとってこのお誘いは迷惑極まりなく、そんな時間があるなら目を瞑って寝てしまいたいほどだ。

がしかし、前世の経験でお誘いはほどほどに受けたほうがいいと言うことをルリアは知っていた。


「わかった行くよ。でも休憩中だけ」

「本当? やったー!」

「ちょっとマイ、あんま飛び跳ねないでね?」


するとエミルがマイに注意する。マイが飛び跳ねると小動物みたいな感じがして可愛いのだが、ここは下女の集まる食堂。注目される行為はやめてほしいと切実に思った。


ーー


皆の仕事が終わるとルリア達は目的地第二王子である東側に向かっていた。


「ねえルア、その地味な眼鏡だっけ? 外したら?」

「そうそう、綺麗な碧眼なのに勿体無いよ〜」


そう言ってくるのはエミルとマイ。皆はそう言ってくるがこれなしでは視界がぼやけてしまうので必需品である。外しても見えないことはないが、効率が悪くなってしまう。


(前世じゃ視力2あったんだけどなあ)


この眼鏡は孤児院にいた時に院長から貰ったものである。結構高いので盗まれたら院長に申し訳ないと王宮に行く前に返そうとしたのだが「これはルリアのだから、ルリアが持ってなさい」と言われた。


別にルリアは「わかったわ、その代わりに絶対戻ってきなさいよ」とか言われてもよかったと思っていたが。


そのまま目的地に向かっているとどっかの侍女五人がこちらに向かってくる。真っ先に気づいたルリアは何かフラグを感じたが気にせず進むと


「ちょっと、西側の下女がなんで東なんかにいるの?」

「そうよ、早く仕事に戻りなさいっ」

「そうよそうよ!」


見事に突っかかってきた。ルリアは正直面倒ごとは苦手なので退散しようとしたが、マイが悔しそうにしていた。彼女たちの服などから見るに中級妃嬪の侍女といったところだろうか。


仕方がないとルリアは彼女たちを方をチラッと見る。


(コレはいける)


ルリアはにちゃあ、と笑みを浮かべた。


「ちょっと何よ、ちらっと見てきて」

「いえいえ、少しお手が荒れているようでしたので」

「それが何よ」


五人の中で一番偉そうな侍女がルリアに話しかける。手で身だしなみを整えると大きく息を吸った。

眼鏡から見えるその碧眼は何か、独特の雰囲気を放っていた。


「手荒れ、直したくありません?」

「まあ、侍女として直したくありますが何か」

「やっぱなんかあったんだ〜」


ルリアは袖からスッと一つの小瓶を取り出すと手のひらに乗せた。


「これ、なんだと思います?」


何も言わないのでさっさと次の説明に移る。


「ハンドクリーム、と言うものです。そもそもなんで手荒れが起きるか知っていますか?」

「水洗いをしているとよくなるけど」

「ええ、そうです。水洗いをしていると良くなります。」


手荒れの原因とは簡単に言えば水洗いなどで皮膚の皮脂が流されることが原因である。ハンドクリームはその油分でなくなった皮脂の代わりをするのだ。


「手荒れの原因は手の表面にある皮脂が水洗いなどによってなくなることで乾燥するからです。このハンドクリームに入っている油分で皮脂の代わりをすることによって手荒れを防ぎます。」


小瓶の蓋を外して塗りながら説明をする。目を丸くしているがわかっただろうか。


(もう少し簡単に説明したほうがよかったかな?)


「説明だけじゃわからないと思うので手に取って塗ってみてください。」


小瓶を侍女たちに渡すと早速手に取り塗り始めた。表情から見るに評判は今のところいいようである。

一番偉そうな侍女がこちらに体の向きを変える。


「このハンドクリームとやらが手荒れを治すのはわかった。それで何なのよ」


するとルリアの待っていた回答が侍女から発せられる。


「はい、そのハンドクリームは差し上げるので東側に第二王子であるライネル様を見てみたく通らせてはくれないでしょうか?」

「わかったわ、いいわよ」

「ありがとうございます。それでは」


マイの手を引くと目的地に向かった。

しばらくして侍女たちから遠ざかるとサリアが話しかけてくる。


(さーて、どうしたものか)


「ルアの手綺麗だとは思ってたけどそのハンドクリームとか言うやつのおかげだったんだね」

「私も欲しい〜」

「はい、どうぞ。もう自分用のしか持ってないので欲しかったら蜜蝋をください。」


袖から小瓶をもう一つ出すとサリアたちに渡す。孤児院から元々何瓶か持ってきたいたが、これで残り2瓶になってしまった。


「ハンドクリームも色々ありがとう〜ルア!」

「いえいえ」

「ラベンダーのいい匂いだね!」


早速塗ったようである。塗りすぎると吹き出物ができたりするがそれを言う必要はない。


すると太陽に照らされる白い豪華な建物が目に入る。柱には彫刻が施されおり、ルア達が十人ほどで雑魚寝をする宿舎とは大違いだった。


「ほら、見て!」


そう言うエミルの先を見るとそこには人だかりができていた。鼻に付くきつい香水の匂いが風によって運ばれる。その人だかりにはルリアのような下女も含まれていたが圧倒的に下級妃嬪や中級妃嬪が多かった。


美しい衣もゆらゆらとさせながら黄色い声をあげていた。


「「「私たちももうちょっと近くに行こう!」」」


マイ達に引っ張られるがままにこのレクサン王国の第二王子、ライネル=ファイ=レクサンの人だかりへ向かった。



(思ったよりはイケメンだなあ)


普通の女ならば見た瞬間黄色い声を上げ、惚れてしまうような美貌だったが前世の記憶持ちであり、元々あまり男にも興味のなかったルリアの顔は無表情だった。強いて言うならば少し眠そうな瞳。


その瞳は第二王子ではなく、空に向いていた。


(早く寝たいなあ)


ーー


「やあ」

「「「きゃああー!」」」


この国の第二王子であるライネルは整った顔に笑みを貼り付けていた。その中世的でありながら肩幅は大きく、高身長切れ長の瞳は手を適当に振れば女の心を奪うのには容易かった。


藍髪に藍の瞳は宝石のように美しい。

女達に黄色い声できゃーきゃー言われ若干の疲れが出るが、それでも彼は笑みを崩さない。しかしライネルは憂鬱だった。


今日の彼の仕事は東側の偵察だった。理由は最近東側で下女が十名ほどが強姦に遭い失踪すると言う事件が起こっているからだ。聞いたことなので実際に強姦に遭っているかは不明。


事件が発覚したのつい先日のこと。夜に巡回中の見回りがたまたま部屋から出て強姦されそうになっていた下女を発見したという。暗くて顔はわからなかったそうで、そのまま逃げてしまったらしい。


ここまで事件が拡大したのはここを管理している男が下女が失踪したことを知っている下女たちに金を渡し、黙らせていたからだという。

事情を聞くと処罰を喰らいたくないと言う理由で黙っていたとのこと。


そんな憂鬱な彼だったが一人、印象に残るがいた。


黄色い声をあげる周りの女達の雰囲気に飲まれず、ただ空を見上げているだけの小柄な少女。

ここの地域では珍しい黒髪と眼鏡。他は特に何もない普通の下女だったものの、その独特な雰囲気が記憶に残った。



新たに下女が失踪したと言う話が回ってきたのは、それから僅か一週間ほどのことだった。


ライネルは綺麗な装飾がされた机に頭をぶつける。


どん、どんと鈍い音が大部屋に響き渡る。ここの部屋にいるのはライネルと秘書であり友人でもある『ダイン』、侍従三名と昔からのお世話が係である女性のカミラ。第二王子にしては少しというかだいぶ少ない。


「ライネル様、ミリア第二王妃から手紙でございます。」

「二人の時は気軽に読んでくれと言ってるだろ。まあ、ありがとう」


すると黒髪黒眼であるダインがミリアから手紙が来ていると一つの封筒を渡してくる。そういえば黒髪の妙な少女が居たなと言うことを思い出しつつ手紙を読むと、こう書いてあった。


『第二王子ライネル様へ

 お話があります。  』


重い体を立ち上がらせるとシンプルだが上等な上着を羽織る。


「少しミリア王妃の所に行ってくる。」

「いえ、ですがまだお仕事が」

「それはお前がやればいい」


そういうとライネルは扉を開けミリアの場所へと向かっていった。

実際、大丈夫か大丈夫じゃないかと言ったのを判断し、判子を押すだけの書類しかないので誰にも言わなかったら誰にもわからない。


ーー


「それでミリア王妃、どういったお話で」


ライネルは単刀直入に聞く。ミリア王妃のお願いだったのできたがライネルもまた早く仕事を終わらせ休憩したかった。


「わかったわ、見てこれ」


銀髪翡翠眼の美女であるミリアが侍女頭であるユーリアから持って来させたのは一つの小瓶だった。この小瓶が何なのだろうと首を傾げているとミリアが口を開いた。


「これね、うちの侍女が持ってきた『ハンドクリーム』って言うらしいんだけどこれ手に塗るとすごいのよ!」

「は、はあ」

「最近乾燥していて手荒れがひどいでしょう? 油脂を塗って我慢してたんだけどこのハンドクリームベタつかないのよ」


油脂とは固形にした油のことであり、主に手荒れから守るものだ。


「それでね、なんで持ってるの? って聞いたら貰ったて言うのよ。」

「貰った、と言いますと?」

「なんかね、洗濯しようと西側にいたらね、その時に黒い髪で眼鏡を掛けている下女からもらったらしいの。」


その時だ、ライネルの中で一人の少女が思い浮かぶ。


「でもね、誰かわからないのよ。それでね」

「わかりました、探しておきましょう。」


ライネルはミリアが言い終わる前に言葉を発する。その目はおもちゃを見つけた子供のような目であった。


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最後まで読んでくれてありがとうございます。中途半端ですし、なんお小説かよくわからないですがポイントと言うか星を入れてあげると喜びます。

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