最終話 幸せだったんですね

登場人物


山西やまにし太希たいき

性別:男

年齢:26

身長:178


中星なかぼし圭吾けいご

性別:男

年齢:26

身長:182


四条しじょう七海ななみ

性別:女

年齢:26

身長:156


木田きだ華恋かれん

性別:女

年齢:28

身長:160




「あいつ立ち直ると思うか?」


そう雨の中、傘をかけながら歩く圭吾けいごは隣を歩く七海ななみに尋ねる。


「さぁ?もうウチ等にできる事はないよ。嫌、最初からなかったのかもね。

他人にできる事なんて。

結局は自分で乗り越えないとダメなんだよ。」


そう話す七海の横で圭吾は足を止めていた。


七海はその圭吾が見つめる方へ目線を向ける。


そこには喫茶店の中で太希たいきと話す“水樹みずき”の姿があった。


驚いた2人は急いでその喫茶店に入ると

太希達の前に駆け寄る。


『どいう事?!』


そう圭吾と七海は声を合わせて太希に尋ねる。


「落ち着きたまえ、君達。

気持ちはよ~く分かる。

でも、別人だ。」


そう太希が言うと2人は口を閉じる。


木田きだ華恋かれんさん。ちなみに、同棲してる彼氏がいるよ。」


そう太希が紹介すると圭吾と七海はゆっくり顔を華恋に向ける。


『すいませんでした。』


そう2人は声を合わせて華恋に頭を下げる。


「いえいえ。大丈夫ですよ。

このお二人もさっき話してくれた水樹さんの知り合いですか?」


そう華恋が落ち着いた声で尋ねる。


「はい。オレと同じく水樹に恋心を持っていたオレの親友の中星なかぼし圭吾と好きな人を譲れるほど水樹と仲の良かった水樹の幼なじみの四条しじょう七海です。」


そう太希が2人を紹介する。


『余計な事まで言うな。』


そう圭吾と七海が声を合わせて太希に不満をぶつける。


そんな3人の仲のいい様子に華恋は微笑む。


そんな時、喫茶店の窓を叩く音がする。

その音に全員の視線が向く。


そこに居たのは1人男性だった。


「すいません。彼氏が迎えに来ましたので、私はこれで。」


そう言うと華恋は軽く頭を下げる。


「今日は本当にありがとうございました。」


そう言って太希は深く頭を下げる。


「いえいえ。山西やまにしさんの気持ちが少しでも楽になったなら、良かったです。」


そう華恋は優しく微笑む。


「はい。お陰様で。」


そう太希は明るい表情を見せる。


その表情を見て安心した華恋はもう1度、軽く頭を下げると店を出て行く。


残された太希達は窓から彼氏と仲良く帰る華恋を見送った。


「・・・オレ達も帰るか。」


そう太希が圭吾と七海に声をかける。


「ねぇ。彼女とどんな話をしたの?」


そう七海が尋ねる。


そんな七海に目線を向けると太希は悪い微笑みを見せる。


「秘密。」


そう言って太希はレジに向かう。


そんな太希の背中を七海は圭吾と一緒に見つめると2人で首を傾げ合う。



ー数分前ー


「幸せだったんですね。水樹さんは。」


そう太希の話を聞いた華恋は言う。


そんな華恋に太希は疑問の眼差しを向ける。


「だって、山西さんの話を聞いて想像する水樹さんはいつも笑顔だから。」


そう華恋に言われて太希が思い出すのは

大好きだった水樹の優しい微笑みだった。


「たった4ヶ月だけでも、山西さんと一緒に生活できて水樹さんは幸せだったと思いますよ。そりゃ、亡くなってしまった事は悲しいと思います。その事実は変わりません。でも、だからって楽しい思い出全部を悲しいものに変えちゃダメですよ。だって…思い出の中の水樹さんは幸せそうに笑ってるんですから。

その幸せは本物だから。だから…幸せのまま山西さんの心にしまってください。

そして、少しずつでいいので前を向いて歩いてください。私が水樹さんだったら、それを願うと思うから。」


そう華恋は真剣な眼差しと声で太希に伝える。



喫茶店を出ると雨は上がっていた。


「2人共、ありがとな。」


そう太希が後ろに居る圭吾と七海にお礼を言う。


「なんだよ、急に。気持ち悪いな。」


そう言いながら圭吾は太希の前を歩く。


「ど~か~ん。」


そう言って七海も圭吾の後を追う。


そんな2人の背中を見つめながら太希は軽く微笑むと歩き出す。


虹が綺麗にできた。目の前の道を。

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明日には虹が咲く 若福品作 @7205

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