資産潤沢計画

スーパーちょぼ:インフィニタス♾

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 その日、カケルは怒っていた。


「年金制度がよくてインカム制度がだめな理由は?」


 いつになく憤慨している友人にノボルが手を焼いていると、カケルは放課後の教室でさらに一歩詰め寄り、


「働きたくても働けない人なんて世界中に沢山いるのに、わざわざ年齢で区切る意味、あります?」


 と僅かに声を震わせながら、ノボルを黒板際に追い込むや懐かしの壁ドンをした。


 が、ちょっと背が足りなかった。


「ドンマイ、未成年」


 ノボルはおつかれーとばかりにカケルの頭をぽんぽんした。


「誕生日が憎い」

「まあそう怒るなって。あ、ちょっと失礼」


 スマホを取り出すや「あ、この前の」などと呟きながら、ノボルはフリマアプリでまた何かを購入している様子。


「彼女にプレゼントですかあ?」

「いやいや、流石にフリマで買ったのバレたら怒られるっしょ」

「あ、彼女いたんだ」

「まあまあ。それより前にカケルに頼まれて買った本あったじゃん。なんかパソコンのやつ」

「Python1年生? それとも2年生?」

「いやどっちでもいいけど」


 ノボルは勘弁してよとばかりに小さく笑うと何やらスマホのグラフを開いてみせた。


「そのときのポイントがいくつか入ってたから期限切れる前にイーサリアム買ってみましたー」

「なんだポイ活か」

「そこは資産潤沢計画と呼んでくれたまえ」

「でも仮想通貨って、なんかちょっと、ねぇ?」

「まあまあ」


 ノボルはそのまま問い合わせ画面を開くや高速で何かを打ち込みはじめた。


「いつもお世話になっております……イーサリアムの取引で……ステーキングが利用出来るようになると……大変……嬉しいです……っと」

「何それ」

「なにってあれ」

「あれ?」

「だから――」


 ノボルはスマホを閉じるとようやくひと息ついた。


「つまり――株の配当金がよくて暗号資産のステーキングがだめな理由はってことじゃん?」

「わかんない」

「カケルが自由に使える頃にはもっと便利になってるといいねって話」

「ふーん?」

「ほら、よくカケルの叔母さんが言ってたじゃん。もしほんとうにインカム制度が世界的に広まるとしたら、それは中央集権的なものと対極にある庶民、しかも誰でも気軽に使えるような身近なアプリのようなものから始まるんじゃないかって」



 (了)

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