第66話 ピッタリと肌を付けるのは気持ちいいです


 準備運動が終わったら、目の前の流れるプールに入った。奈央子さんが浮輪を頭から入れてプカプカ浮いていると確かに緩く流れる。


 俺もそれに付いて行くのだが、何もする事がない。競泳プールでも無いので泳ぐ事も出来ず、ただ歩いていると


「京之介さん。引いてくれます?」

「はい」

 

 浮輪についている紐を引っ張っていると目の前で浮輪をお尻から入れて遊んでいるペアが居た。

「私もあの様にしてみたいです」


 一度引くのを止めると彼女は立ち上がって浮輪を後ろに回してお尻からスポンと入った。そして

「京之介さん、足側から浮輪を押してください。歩いているだけだと詰まらないでしょうから泳ぐ形にするといいのでは?」


 確かに言えるなと思いそれをしようと思ったのだが、彼女の足を閉じさせてその両脇を手で押す様にすると俺の顔に彼女の足の裏を付ける様な形なる。これは不味いと思って


「奈央子さん、少し足を開いて貰えますか」

「こうですか」


 彼女は少し広めに足を開くと今度は…彼女の大事な所を直視する形になる。


「あのやっぱり前から…」

「私は構いませんよ」


 ふふっ、思い切り恥ずかしいけど京之介さんなら構わない。

「でも」

「それでお願いします」


 言われてしまったので足の間に手を入れて軽く水の中からつま先が出ない様にバタ足で泳ぐ。大事な所を見ない様にすると今度は彼女の豊満な胸が目の前になる。


 仕方なしに顔を水の中に入れて泳ごうと思ったら前が見えない。どうしようもないので彼女の胸をなるべく見ない様に空を見たり横を見たりして前に進んだ。首の運動でもしているようだ。


 その恰好でしばらく泳いでいると丁度ウォータースライダーが右手に見えた。人が並んでいる。

「京之介さん、あれやりたいです」


 奈央子さんが指差している。今のままより良いと思い

「そうですね。元の位置に戻って浮輪おいてから来ましょうか」

「はい」


 ほぼ流れるプールを一周した後、俺達のシートが引いてある場所に戻って浮輪を戻した後、ウォータースライダーに向かった。


 十分位してスタート位置に行くとお兄さんが

「二人で滑りますか?」

「はい」

 一人ずつと言う前に奈央子さんに返事されてしまった。


「分かりました。彼氏さんは前に座って彼女さんは後ろから彼氏さんのお腹に手を回してギュッと握って下さい」

「はい」


 そう言えば去年こんなシチュエーションを杉崎さんとやった様な。

「はいではスタートして下さい」


 私は京之介さんの背中に私の胸を思い切り押し付けて手を彼のお腹の前に回すと両手をギューッと握った。嬉しい。こんな風に出来るなんて。ずっとこうして居たい。


 奈央子さんの大きな胸が俺の背中に思い切り押し付けられている。何とも言えない感覚だ。手で触っているのとは違う。

 その胸が右に曲がったり左に曲がる度に背中で捻じれる。気持ちいいのが本音なのだけど何とも言えない。


 やがてウォータースライダーから飛び出してプールの中に


 ドボーン!



 立ち上がっても奈央子さんが俺の背中に着いたままだ。

「あの、奈央子さん。もう終わりましたけど」

「えっ、そうでしたか。もう一度やりましょう」

「でも…」

「一緒に滑りたいのです」


 結局三回も滑った。ちょっと元気になってしまった所を慰めつつプールから出ると

「もうお昼ですね」

「はい、何食べましょうか」

「食堂の中でなく、売店で買ってシートの上で食べますか?」

「いいですね」


 そのまま、二人で売店に行って焼きそばとかフランクフルトそれにお好み焼きと炭酸ジュースを買ってシートに戻った。


二人で周りの景色を見ながらゆっくりと食べていると奈央子さんが

「隣の遊園地、大きいですね。今度二人で一緒に来たいです」

「いいですね。そうしましょうか」

「はい」

 嬉しそうに返事をしてくれた。

 


 食べ終わった後、ゆっくりとしながら彼女を見ていると

「京之介さん、ここは波の出るプールが有るとWEBの案内で書いてありました。行ってみません?」


 去年行って知っているので

「いいですよ。そうしましょうか」

「はい」


 食べ終わったごみを片付けると二人で波の出るプールの方に歩いて行った。

「本当だ。波が出て来る。結構大きな波ですね」

「そうですね」


 二人で腰の辺りまでの深さの所に来ると波が出る度に飛び上がったり波の下にもぐったりしていたのだが、

「京之介さん、手を繋いで波が来たら一緒に飛び上がりましょうか?」

「いいですよ」


 手を繋いで波が来る度に飛んでいると彼女が段々近付いて来ていつの間にかぴったりと俺の体にくっ付いて腰の後ろに手を回して来た。


「あの、奈央子さん?」

「少しの間だけこうして一緒に飛びましょう」


 俺の鳩尾辺りに彼女胸がべったりと押し付けられている。そのまま何回か一緒に飛んだ時だった。

「「あっ!」」


 彼女の体が俺の方に圧し掛かって来てそのまま水の中に…。えっ?


 彼女の唇が俺の唇にくっ付いている。もう、キス位ならするのに。そのまま起き上がって唇を離すと

「くっ付いてしまいましたね」

「奈央子さん!」

「えへへ」

「もう」


 それからも少し一緒に遊んだ後、プールから上がった。大きな時計の針が午後二時半を差していた。

「そろそろ上がりますか」

「はい」


 シートに戻って片付けた後、更衣室の前にあるシャワー設備で水を浴びて体を綺麗にした後、お互いに更衣室に入った。


 俺は、タオルで体を拭いた後、着替えてから髪の毛をもう一度タオルで拭いた。多少濡れているけどいいやと思って少しオールバック気味にして更衣室を出た。


 更衣室の前で待っていると誰とは言わないけど何となく見られている気がする。それを無視して奈央子さんを待っていると二十分位して出て来た。彼女の髪の毛も多少濡れている。俺の顔を見ると


「京之介さん、お待たせしました」

「行きましょうか」

「はい」


 ゲートを出るとすぐ前に駅が有る。ホームで電車を待って乗るとあっという間に乗客で一杯になった。


 来た時と同じようにするのかと思ったら奈央子さんが俺の腕に彼女の腕を深く回すとそのまま寄りかかって来た。彼女を見ると目を閉じている。


 ふふっ、私達の事は誰も知らないし、この位なら彼も許してくれる。今日はここに来て本当に良かった。京之介さんとずっとこうして居たい。



 俺も少し眠ってしまったが、渋山より前で目が覚めた。乗り替えてから彼女の家まで送って行った。


 まだ薄暗くはないけど、誰も歩いていない。奈央子さんが

「京之介さん」


 そう言って背伸びして目を閉じた。俺は彼女を柔らく抱くと少しだけ唇を合わせた。ゆっくりと離すと

「京之介さん、今日は本当に楽しかったです。今度は遊園地に行きましょうね」

「はい、俺の楽しかったです。遊園地行きましょう」

「はい。あの…」

「えっ?」

「京之介さん、愛してます」


 彼女が顔を真っ赤にして言った。俺も

「奈央子さん、俺も愛してます」


 彼女の顔が耳元迄真っ赤になって俺に抱き着いて来た。

「京之介さん、嬉しいです」


 幸い人が歩いてこなかった。しっかりと抱き寄せた後もう一度唇を合わせてから離れた。


「じゃあ、また」

「はい」


 名残惜しいけど仕方ない。俺は手を振りながら離れて行くと彼女も手を振ってくれた。


 京之介さんが私に愛していると言ってくれた。嬉しいです。早く来年が来ないかな。


―――― 

次回をお楽しみに。

面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

カクヨムコン10向けに新作公開しました。現代ファンタジー部門です。

「僕の花が散る前に」

https://kakuyomu.jp/works/16818093089353060867

交通事故で亡くした妻への思いが具現化する物語です。

応援(☆☆☆)宜しくお願いします。

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女の子救ったからって恋愛出来る訳じゃない @kana_01

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