第65話 奈央子さんとプールデート


 家族旅行から帰った翌日八月十五日は奈央子さんと一緒にプールに行く日だ。彼女とは俺の家の最寄り駅の学校方面ホームで午前八時半に待合せ。


 近くに区のプールも有るしその傍には子供向けというか家族向けのミニウォータースライダー付のプールもあると言ったのだけど、もっと大きくて遊園地の傍に有る様なプールが良いというのでこの時間になった。去年智や杉崎さんと行った所だ。


 午前八時十五分にホームに行って待っていると電車が入って来てドアが開くと約束した車両の三番目のドアに奈央子さんが立っていた。

 大きなバッグを持っている。何が入っているんだろう?俺は普通のスポーツバッグだけど。

 

 直ぐにそのドアから電車に乗ると

「おはようございます。奈央子さん」

「おはようございます。京之介さん」


 奈央子さんは、黄色のTシャツに白いホットパンツと今の時期らしい格好だ。俺は白のTシャツとジーンズ。


 この時期はまだ夏真っ盛りだ。特に気候変動で例年より気温が高いと聞いている。お陰で電車の中は相当に冷房が効いていた。


 乗り替える渋山まで十五分。通学時間程ではないが結構混んでいて座れない。二人でドアの傍に立ったままにしている。


 奈央子さんとの距離が近いが普段、部屋でくっ付いている事も多いので(決してあれをしている訳ではないです)あまり抵抗が無い。付き合う前だったらとても出来ないけど。


 京之介さんが直ぐ傍に立っている。距離にして三十センチも無い。私の胸のトップと京之介さんの距離はもっと近い。本当は悪戯したいけど流石にここでは控えておきます。だって今日は水着姿で思い切り彼にくっ付いて入れるから。



 渋山に着いて乗り替える。乗換え距離が有るが仕方ない。乗換えホームまで行って電車を待っていると少しして入って来た。


 ドアが開くと人がいっぱい降りて来る。それを待って中に入る俺と奈央子さんのバッグは上の網棚…今はプラスチックだけど、そこに乗せて二人で座った。結構空いている。


「京之介さん、家族旅行は如何でした?」

「はい、楽しかったです。毎年行く海水浴場なので土地勘も付いているのし遊びやすいですね。泊っているホテルも毎年同じです」

「そうですか。羨ましいです。我が家はそういうイベントは中々無いので」

「我が家も夏のこのイベントだけですから」

「そうですか」


 来年一緒に行きたいなんて言ったら嫌な気持ちになるだろうな。京之介さんそういうの嫌いだし。それに京之介さんの家族にそこまで溶け込んでいる訳でもない。仕方ないかな。


 早く家族に奈央子さんの事きちんと紹介して来年の夏には一緒に連れて行けると良いんだけど、それにはお母さんとお姉ちゃんの思いを変えさせないといけない。

 今回の旅行でも詩織さんを俺に押し付けているのは彼女が一緒のホテルに泊まった事からでも分かる。



 二人共少し無口になってしまったけど、奈央子さんが俺の手を掴んで自分の腿の上に置いた。ホットパンツなので彼女の柔らかさが直に伝わってくる。


 そして俺の顔を見て微笑んでいる。周りの人が俺達を見て微笑む人も言えれば、何となく妬んでいる人も居るのは気の所為か。

 でもこの人とは何も話さなくても心が落ち着いていられる。


 渋山から一時間程で着いた。駅の前はもう遊園地の入口だ。途中で乗って来た乗客のほとんどが降りた。

 早速チケット売り場に並んで二人でプール券を買った。遊園地に入る券とは違っている。


 ゲートでプール券を見せて右に折れて三十メートルほど歩くともう一つゲートが有る。

 プール券に印刷されているQRコードをゲートの右手前の読み取り機にタッチするとゲートが開いた。


 入ってすぐに更衣室がある。右が男子、左が女子だ。

「奈央子さん、着替えたらここで待ち合せしましょう」

「分かりました」


 そう言うと彼女は更衣室に入って行った。


 男は水着に着替えるのは簡単だ。全部脱いでサポーターと水着を着て防水バッグに貴重品を入れれば終わりだ。ここでは男はラッシュガードは要らない。


 五分も掛からない。更衣室を出て、元の場所で待っていると十五分位して奈央子さんが出て来た。

 長い髪の毛を頭の上で丸めてキャップを被っている。この前買った花が描かれているオレンジ色のセパレートの水着を着て手には水色のラッシュガードと防水バッグ。

 

 京之介様の水着姿、素敵です。体には贅肉のぜの字も付いていません。周りの女性も彼を見ているのが分かります。あの体に…。私としたらなんて事を考えているのでしょう。

 

 何故か奈央子さんが顔を赤くして近くに来ると

「京之介さん、この前買った水着です。いかがですか?」

「とっても似合っていますよ」


 デパートの着替え室で見せられているが流石に恥ずかしい。はっきりと出ている形のいい大きな胸、括れた腰に素敵なお尻だ。彼女の生お胸も見ているだけに何とも言えない感じ。


「何処に場所取りますか?」

「うーん。思ったより混んでいますね。監視員のいる傍が空いていますけど」

「私は、少し離れている方が良いですね」

「そうですか。ではそこは?」

「その先の方が良いですね」


 監視員から三十メートルは離れている。ちょっと遠い気もするがいいだろう。

「分かりました。所で失礼ですが奈央子さんは泳げますか?」

「少しなら」

「浮輪どうします?」


 ずっと京之介さんに掴まっていようと思いましたけど、後もあるでしょう。ここは

「はい、借りましょうか」



 売店で浮輪を借りると奈央子さんの指差した辺りまで歩いた。奈央子さんが持って来たシートを敷くと一度防水バッグを置いてから簡単に準備運動をした。


 体を動かす毎に揺れ動く胸が気になって仕方がないので彼女と別の方を向く事にした。


 ふふっ、京之介さん、私の胸に興味があるようです。私はいつでも良いのに。でも彼ははっきりと三年になって責任取れる年になったらと言っていました。だからそれまで待ちます。


―――― 

プール編次話に続きます。連日投稿します。

次回をお楽しみに。

面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

カクヨムコン10向けに新作公開しました。現代ファンタジー部門です。

「僕の花が散る前に」

https://kakuyomu.jp/works/16818093089353060867

交通事故で亡くした妻への思いが具現化する物語です。

応援(☆☆☆)宜しくお願いします。

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