第64話 若くて綺麗な女性が居れば
次の日も詩織さんの家族と浜辺で一緒になった。今日はお母さん達を除いて全員水着だ。お姉ちゃんの水着姿は小さい事からよく見ているけど、詩織さんの水着姿はドキッとした。
お姉ちゃんはオレンジ色の花柄があるセパレートだけど、詩織さんは真っ白な生地のセパレート。
二人共抜群にスタイルがいい。その上、美人だ。勿論お母さん達もだけど。周りの男性達がずっと見ている。偶に連れの女性に突かれている人も居るけど。
「京之介様、泳ぎには行かないのですか?」
「行きますけど…」
「京之介、お父さんと行くか?」
「でもそうなるとここには詩織さんのお父さんだけになるし」
「はははっ、そうだな。私は京之介君ほど強くないからな」
「いや、そういう意味で言ったのではないんですけど」
「京之介さん、私も居ます」
「分かりました。お父さん行こうか」
「そうだな」
お父さんと一緒にラッシュガードを脱いで簡単な準備運動をしているとやたらと視線を感じる。見ると周りの女性達がこっちを見ている恥ずかしい。
§詩織
ふふっ、京之介さんがラッシュガードを脱いだら周りの女性達が一斉に彼の方を見始めた。当たり前です。高身長、イケメンでこの体です。誰だって見てしまいます。
俺はお父さんと昨日と同じ様に遊泳限界点にあるブイまで泳ぐと並んでいるブイを二つほど泳いで戻って来た。
あーぁ、やっぱり。お姉ちゃんと詩織さんに声を掛けている男が二人いる。詩織さんは全高一位といっても女性。下手に手も出せない。仕方なく
「お父さん、ちょっと先に行く」
「ああ」
「ねえ、少しだけで良いからさ。俺達と泳がない?」
「結構です」
「あんた達、親が居る前で何言っているの?」
「えーと。お母さんですか。美人ですね。だから娘さんも美人なんだぁ。ちょっと遊ぶだけですから」
「いい加減にしないと…」
「おお、綺麗な女の子が、凄い事を…」
「いい加減に止めないか」
§愛理
やっぱり弟で無いと駄目か。
「誰だ。お前は」
「この人達は俺の家族だ。退け」
俺より背の低い二人が俺の体を見ると
「ふん、恰好だけだろう」
「あっ、こいつ。お、おい止めろ」
「なんだよ」
「もにょもにょ」
「何だって、全日本空手選手権一位!」
「行くぞ」
「あ、ああ」
なんか間違っている様な。でもいいか。お父さんが来て
「やっぱり、京之介が居た方が良いようだな」
「そうね。弟が居た方が良いわね。京之介、大学来るわよね」
「お姉ちゃん、こんな所でそんな事言わないの」
お母さん達が笑っている。この後、もう一度海に入った。今度は詩織さんと俺だ。お父さんが居れば安心だ。
詩織さんがラッシュガードを脱ぐとあの時を一瞬だけど思い出してしまった。
海の中に入ると
「京之介様、随分暖かいですね」
「はい、最近の傾向ですかね。少し泳ぎますか」
「はい」
詩織さんは普通に泳げるようだ。ブイの所まで泳いで来るとブイに掴まると思ったら
「えっ!」
ブイに掴まっている俺に思い切り抱き着いて来た。
「詩織さん」
「京之介様、最近こうして貰えません。詩織は寂しいです。だから今だけ」
彼女の柔らかい肌。大きな胸が思い切りくっ付けられてきた。ちょっと不味い。あっ!
「ふふっ、大きくなってしまいましたね」
「詩織さん…」
この人こういう時は大胆なんだよな。
「京之介様、いつでも心の準備は出来ております。だから」
「駄目です。まだ責任取れる年齢では無いです」
出まかせで言ったつもりが、
「私は良いのですよ。京之介様となら。こうやって」
彼女が下半身を押し付けて来ている。
「あっちのブイに行きます」
「はい」
§詩織
京之介様の顔が真っ赤です。楽しい。でも随分京之介様の成分を感じ取ることが出来ました。この旅行で何とか出来ないかな?
隣のブイまで泳いでも同じ事をするので
「もう戻ります」
「はい」
俺は泳ぎながらひたすら鎮まるのを待った。全くこの人はこんなきれいな顔をしてあっちが好きなのだろうか?可能性大ありだよな。参ったなぁ。早く奈央子さんとしちゃおうかな。…何考えているんだ俺。
波打ち際に来る頃には大分鎮まっていた。良かった。
§愛理
京之介と詩織ちゃんが戻って来た。ブイの傍で随分くっ付いていたようだけど。ふふっ、弟のあそこが少し膨らんでいる。詩織ちゃん積極的だな。何とか二人だけに出来ないものかな。
その後は、海の家で、皆でお昼を食べた。勿論定番の海のラーメンは外せない。おでん、フランクフルト、イカ焼き等一杯食べた。お父さん達はもう泳がないつもりかビールにイカの刺身を頼んで楽しそうに話をしている。
思い切りお腹を満たした後は、もう一度休憩していたパラソルの傍に戻った。お姉ちゃんと詩織さんと俺で波打ち際でお城とか作って楽しんだ。ちょっと子供っぽいけど。
ただ、二人が俺の目の前で下を向いていると当然ながら思い切り谷間が見える訳で…。でも何故か二人共意識して見せている感じがしたのは気の所為か?
そして午後三時位にホテルに戻った。俺はお父さんと一緒に大浴場に行って体を洗った後、大きなお風呂に入った。お父さんと並んで入っていると
「京之介、詩織さんの事、どう思っている?」
「どうって。友達だよ」
「彼女がお前に思いを寄せているのは知っているだろう」
「それはね。でも俺は他に好きな人が居る」
「有栖川奈央子さんか?」
「うん、彼女の事、本当に好きなんだ。詩織さんは綺麗で頭もいい。普通に考えたら彼女を選んでもおかしくない。
でも俺はその前に奈央子さんを好きになった。比べるつもりは無いけど、俺は詩織さんより奈央子さんが好きだ」
「そうか、そこまで気持ちがはっきりしているなら大丈夫そうだな」
「お父さん、何でそんな事聞くの?」
「なに、愛理とお母さんが詩織さんをお前に推し過ぎているのが気になってな」
「なんで詩織さんを俺に押し付けるの?」
「詩織さんは、お母さんの日本舞踊の教室の生徒で小さい頃から知っている。彼女のお母さんもだ。
勿論愛理も中学まではその教室に通っていた。その辺の繋がりだと思っている。有栖川さんはお前が助けた子だけど偶々今の高校で偶然知り合っただけ。
それだけではお前に相応しいと思っていないのだろう。だけど詩織さんはお母さんと愛理がずっと見て来ている」
「なるほどなぁ。でも迷惑とは言わないけど詩織さんとは…」
「それでいい。お前の人生だ。自分で決めなさい」
「ありがとう。お父さん」
俺とお父さんはしばらくして部屋に戻った。
「愛理、お父さん達が戻って来た。私達も行くわよ」
「はい」
今度はお母さんとお姉ちゃんがお風呂に行った。俺はお風呂場の入口に有った自販機で買った炭酸ジュースを飲んで窓から外の景色を見ている。
とても綺麗だ。富士山が夕焼けに照らされたら綺麗だろうな。そんな事を思っているとお母さん達が帰って来た。
二人で色々と鏡を見ながら何かしているけど俺には全く分からない。それが済むとお母さんが
「そろそろご飯時ね。行きましょうか」
「「うん」」
夕食は部屋毎に決まっているテーブル席に座った。詩織さん達とは離れている。お父さんはビール、お母さんもお付き合いする様だ。俺とお姉ちゃんは冷たい麦茶を頼んだ。
料理は海の幸が大きな船の形をした器にこれでもかという程盛られて、それとは別に手前には前菜や着火剤が下に置かれた小さなお鍋が置いてある。
家族だけで食べる夕食は俺が一番大切な時間だ。楽しい会話をして思い切りお腹を膨らませると、お姉ちゃんが、
「後で海岸で花火しようか」
「勿論、それしないと締まらないよ」
「そうだな」
という訳で、家族で東京から買って来てある花火を持って海岸に出た。大分位。そこかしこで同じように花火をしている。まさに夏の夜の海岸って感じ。
もう最後の線香花火になった時、
「京之介様」
「あっ、詩織さん」
「私達も直ぐそこで花火をしていたんですよ。最後に気付いて良かったです。私も線香花火をさせて下さい」
そう言うと詩織さんは手に持っている線香花火を見せた。後ろを見ると詩織さんのご両親が俺の両親と話をしている。
線香花火というのは人の感情を湧き出させてくれる様に輝く。最後かと思うとまた大きくなったりする。
「京之介様、勝負しません?」
「勝負?」
「はい、私が勝ったら帰ってから私の部屋で一日私とデートする。もし京之介様が勝ったら私と京之介様の部屋で一日デートする。どうですか?」
「それって勝っても負けても同じじゃないですか」
「はい」
はぁ、この人は、でもこの雰囲気では断れないか。同時に線香花火に火を点けた。綺麗に弾ける線香花火。だけど結果は…。同時に終わった。
「これは予想していませんでした。では二日間デートと言う事で」
「調子に乗らないで下さい。一日だけ」
「では私の部屋で」
どこかに行っていなくなっていたお姉ちゃんが、
「詩織ちゃん良かったわね」
「はい」
まだ日にちも場所も決めていないのに、全くこの二人は…。
――――
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
カクヨムコン10向けに新作公開しました。現代ファンタジー部門です。
「僕の花が散る前に」
https://kakuyomu.jp/works/16818093089353060867
そろそろ堅苦しい話からぐっと人間系の話になって来ています。
応援(☆☆☆)宜しくお願いします。
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