#6 DIEジェストからの、第1人物遭遇
さー、今日も今日とて1日以上生存できる棲み処を探していきましょう。
え? 何を摂っているのかって? プラムっぽい果実ですね。
ついでによく熟れたやつにたかっていた小鳥も捕まえて腹を満たしました。これとてもせねば
これらを食べてわかったこと・・・この森の果実は寒冷地域に生えているわけでもないのに糖度が高い。おかげで1日で取るべき必須カロリーを摂取できて・・・ないよなぁ。
小鳥とかならとにかく、俺くらい大きな動物が少しの果物と魚、動物で1日歩き回るだけの
変温動物と違って、恒温動物は生きるのにどうしても多めのエネルギーが要る。
その点俺は不思議と、これっぽっちのカロリー摂取で体が動かせるのだ。人間だったら今ごろ、ひもじさに苦しんでいたことだろう。
なんかこの体の異様なスタミナを考えると嫌なものが胸の内で動くので、この先は深く考えないようにしよう。
とにかく、雨にも負けるし風にも負けるコボルトボディであるが燃費の良さだけは邪神Xに感謝するしかない。死ぬほど嫌だけど。
腹も満たされたことだし水でも飲みに行こうかな。さすがに水を飲もうとして人魚に引きずり込まれるような出来事は起きないですよねハハハ。
──────────────────────────────────────
「ゥ"ばッ!!」
衝撃の余韻を残して右肩から先の感覚が失せた。間近で爆発が起きたせいか片耳がよく聞こえないし、右目もあまり見えない。
「くそォ・・・ ちょっと状況が好転しそうになったらすぐこれかよッ・・・!」
俺の腕を奪い取った敵は、黒い小粒のぽよぽよしたなんかだった。
き奴はぱっと見だと風変わりなスライムにしか見えないが、さっきまであいつは見えなかった。そう、透明化できるのだ。そしてあのにっくきぽよぽよは、自爆で以て攻撃するというボム兵みたいな特性があるらしい。
しかも爆発四散した肉体はすぐさま集合して再生しようとしている。生命力サイヤ人か? どうやって物を考えてんだ。ボム兵の立つ瀬がないだろうが、おい。
「ニトログリセリンスライムとか森の魔物が持ってていい能力じゃねえだろォー!? ふざけんのも大概にしろやァー!!」
手負いの俺は一目散に──再生の終えたスライム目掛けて突貫する。こんな体で生き延びたとしても、ハンディキャップを抱えていてはこんなクソ森で長生きはできまい、それなら───
「クソが、死ぬほど痛いんだぞ分かア"ッ───」
今日の俺、爆破スライムによる爆死。
──────────────────────────────────────
こんにちは異世界。
やーいやーいお前の治安羅生門以下~。アホバカ死ねゴミ。
これでわかった。俺のやたら高いスタミナは基礎値が高いわけじゃない。リスポーンするたびに全快しているからだ。
以前某インクラフトがどうのと言ったよな? あの例えはあながち間違ってないかもしれない。ハンデ付きのリスポーンなんて某ロムソフトウェアかよ、って話でもあるけど。
これからはもっと気を付けないと。現在自分の力で分かっているのは、
1・死んだら死亡地点の近くにリスポーンする
2・道具を持っていた場合全部ロストする
3・体力は全快する
この3点だ。今のところ明確に知能を持っているっぽいのがあのヴィンデ●ケーターもどきだけだからいいとして、賢い奴にこの特性を察知されたらどんな目に遭うか。減らない食料エンドがマジで現実のものになりかねない。
だから、これからはもっと賢く、怪我も最小限に立ち振る舞わないといけない。
爆破で腕を
──────────────────────────────────────
「言った側からこれだよォーッ!!」
棍棒が空を切り、ぶおんっと恐ろしい重低音が尾を引く。
俺を襲っているのはまたあのヴィ●ディケーターもどきだ。コイツは小太りで武器も別物だから、多分あいつらとは別人だろう。
デブな邪悪な村人もどきはしかし、恐ろしく機敏であり、振り下ろした棍棒をそれと同じ速度で構え直していた。その脂肪全部筋肉か!? 処刑者スモウかよ!
「がッでュ"るびゅバッ!!」
そんなことを思っているうちに攻撃を避けきれなくなり、横っ腹に一撃をもらう。内臓がひしゃげ(あるいは潰れ)俺は錐揉み回転しながら茂みに突っ込んだ。
地面に手をつき立ち上がろうとするが、骨がしくしくと痛みを訴えていてろくに力が入らない。咳き込んだ拍子に、血の混じったヘドが出た。
「ゲボッ・・・い、いい一撃くれるじゃねえか・・・!」
ヴ●ンディケーターもどきが迫ってくる。無感情に細められた灰色の目には俺という獲物が映っていて。
「ま、待て・・・! 俺たちには言葉があります! だからォぶボッ」
たぶん、3発目で俺は死んだ。
──────────────────────────────────────
こんにちは異世界。
死亡地点から離れる時にちらっと見たが、俺を殺したデブは案の定焚き火を焚いて頭が潰れたアンパンマンみたいになってた俺の体を焼いていた。
頭蛮族かよ。蛮族だったわ。
さっきは命乞いにエアプフ●ーレンの魔族みたいなこと口走ったが、連中が話を聞いてくれるのなら俺は殺されるわけがないので。
通じたとして、奴らが俺という食料を放置して兎狩りにでも行くとは思えないし。
さてさて、第1回自分会議を始めましょう。
議題はもちろん、これからどうやって生き残るか。正確には、どうやって生存時間を伸ばすか。
このDIEリスポーン時代、少なくともまる1日昼寝して過ごせるようになるには森を抜け出すか強くなるしかない。前者は地形の把握が難しい以上現実的でない。そもそも俺に地形把握のスキルなんて贅沢なものはない。
なら後者、強くなるための手段をいかに身に着けるか。はい自分Aさん早かった。
手っ取り早い案は、武器を持つこと。これは簡単だ。石ころや重い木の枝でもいい。そういった武器1つで生存確率は大幅に上昇する。
これに対する問題・・・武器を持っていても、俺という貧弱な生き物が扱いきれるとは思えない。
武器には相応の重量というものがある。俺は身軽で機敏なものの、裏を返せばそれしか得手がない。
技量を磨くとしてもFF10並みに敵と出会いまくる森の中じゃ、スキルアップのための時間が圧倒的に足りない。
リスポーン能力を活かして強引に時間を捻出すればいい、と思うよね? しかし、死んだら道具を全ロスするという点を忘れてはいけない。どんなに凄い武器でも、手から離れてしまえばそれきりだ。
非力な俺でも持てるような武器があったとしても、遠距離攻撃持ちにはどうしようもないことはよく知っている。文字通り骨身にしみて。
となれば身一つで発動できる技術、魔法系の何かが欲しくなる。
人間離れした生き物がウロチョロする人外魔境だ。魔法くらいあってほしい話だがあったらあったで習得方法が分からない。本を読む? 生まれついてのスキル? 前者だとしたらこの世界の言語を学ぶ必要があるし、後者だと才能がなかった場合マジでどうにもならない。
この森で生き延びるには強くなるしかない。けれど武器を手に入れる方法がわからない。死にたくなければ武器を見つける方法を見つけなきゃいけない。
クソ。
◇ ◇ ◇
がさ、と茂みが動いた。
俺はびくっとして、落ちていた木の枝を拾い上げた。
後々のことを考えたら、逃げなかったのは大正解だった───その時の俺は及び腰でそれを構えながら、どうやって生き延びるか頭がいっぱいだったんでね──そして、茂みから浅黒い顔が突き出した。
「・・・・・・・・・・・」
女の顔だった。それもあの邪悪な村人もどきと違って、人間味のある顔つきをしている。
彼女(多分)はじっと俺の顔を見つめていたが、やがておかしそうに表情を歪めると茂みから体を出した。
長く太く編み込んだ黒髪に、ミミズが這った跡のような刺青(?)が施された褐色の肌。先のとがったつば広帽子に、なぜかへその部分が
一言で例えるならば魔女。そんな印象を抱かせる格好をした女は、さっきとは打って変わり、冷たい金色の瞳で俺を見下ろした。
おかしい、さっきの顔の位置的にどうやってもこの女はこんな背が高いはずがない。大入道に見下ろされているような威圧感に、体が竦む。
「使い魔に親切してくれた犬人はお前か」
え、と呟く。主語を欠いた不躾な問いなのはさておいて、言葉がわかる。
「・・・え、なんですか?」
「おいおい、質問に質問を返してんじゃあねえよ。オレが質問してんだからお前は答える側。ガキでもわかるシステムだぜ。次バカの1つ覚えしたら蹴るからな」
「あ・・・は、はい」
「尾が狐のようになった有角の猫に肉を分け与えた暇人はお前だな」
「・・・はい」
一瞬黙ったのは、この質問のせいでまた災難を被るかもしれないという恐れがあってのことだ。色々聞きたいこともあったが、この状況、質問には必要最低限の答えで返した方がいいはずだ。
不意に女が腰を折り曲げた。恐ろしく柔らかい体をしている。顔が一気に近づいたので、俺はさらに縮み上がった。
見つめ合う。
女がにたりと笑って、踵を返した。
「ついてきな。オレ手ずから風呂にぶち込んでやるよ」
「へ、は?」
「お前は死体臭くてたまんねーっつってんだ。まったく臭くてかなわんぜ。その後は飯だ。どうせロクなもん食ってないんだろ」
「あっ・・・そ、そんなに臭いっスか? ハハハ、スンマセ・・・」
さんざんな言われようだが実際死にまくっているので文句は言えない。
とにかく、俺は大股で歩くその女の後を追いかけた。
最弱コボルトのよみがえり @timtimkimotie
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。最弱コボルトのよみがえりの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます