まともな奴が居なかったデスゲーム

@tetetet

第1話






 ワタシはデスゲーム主催者。

 名前は田中。

 これからをデスゲームを始める。


 一室に閉じ込めた5人の男女。

 彼らはどのようにして、殺し合うのか。


 モニター越しに、それを見る。

 楽しみでしょうがない。


 『目を覚ませ!近くを歩いていたゴミクズ共!!デスゲームを始めるぞ!!』


 選ばれし男女が、この声に反応する。

 ワタシ直々に誘拐した奴らだ。

 上手く踊ってくれることを期待。



 え?どうやって誘拐したかって?


 それは、パワーだ。

 現代日本で、突如鉄パイプを持った奴に襲われ、勝てる奴などいない。

 後は気絶した隙に、マンションの一室で監禁するだけなのだ。


 「いたいし、くっさい、、なんで私だけこんな目に、、」


 エントリーナンバー1、路地裏を一人で歩いていた女子高生。


 ん?なんでこいつを参加者にしたのかって?

 勝てそうだから、選んだ。


 「お、おお、おんな、めざめ、めざめた、、そそそ想像を超えた遅さで、びっくりしました」


 エントリーナンバー2、路地裏をうろうろしていた小柄な男子中学生。

 こいつも勝てそうだから選んだ。


 「ぎぃやぁぁあ!商談!商談がぁぁ!時間!!遅刻する!!人生かかってるんだぁぁ!出してくれ!出してくぇぇ!!」


 エントリーナンバー3、路地裏を走っていたサラリーマン。

 不意を打てそうだったので選んだ。


 「死合、吾輩の敗北、、か、、」


 エントリーナンバー4、路地裏を歩いていた筋肉ムキムキのマッチョマン。

 勝てる気がしたから選んだ。


 「ちっ、、、」


 エントリーナンバー5、その辺で寝ていたホームレス。

 重傷のワタシでも勝てそうだから選んだ。


 『ふふふ。あなた達には三つの《デスゲーム》をして貰う』


 「はぁぁぁ!!頼むぅ!頼む!!俺だけでも!出してくれぇぇ!頼むぅぅ!人生かかってるんだぁ!!」


 サラリーマンがモニターを乱打する。


 ふふふ。

 煩い。


 それに無意味だ。

 このモニターには、叔父さんから貰ったアクリル製液晶テレビ保護パネルを貼ってある。

 だから、非常に頑丈なのだ。


 『静かに。早く出たければ、ゲームをこなす事だ』


 「はやく、はやくしてくれぇぇ!人生かかってんだぁぁ!」


 今度はサラリーマンが扉を乱打する。


 本当に煩い。

 ハズレを引いた。


 いや、逆にこんな奴もデスゲームの醍醐味、か?

 その可能性はある。

 無きにしもあらず。


 『ふふふ。始めよう。まずは一つ目、ババ抜きだ。敗者は死ぬ。全ゲーム終了後に、な』


 ワタシは部屋の中に、トランプを放り込む。



 え?どうやったかって?


 やり方は簡単。

 予め空けておいた穴に、ポイーと入れるだけ。

 ワタシはデスゲーム用部屋の、一つ上の階にいるので。


 「おい。おっさん。まじくっせぇ。ウザイんだけど。あっち行くかさっさと死んでくんね?セクハラーとでも叫べばお前の人生終わらせられんだよ」


 「••••ちっ」


 「こここ、ころころこされれますよ、ややややりまぁしょう」


 「敗者は従うのみ」


 「早く!早くしてくれぇぇ!!早く!!」


 ふふふ。

 中学生はトランプのシャッフルをし、ムキムキは正座でそれを待ち、サラリーマンは床でジタバタする。

 正に順調。

 話を聞かず、ホームレスに絡む女子高生を除けば。


 いや、これもある種の愚かさ。

 これも、あり。

 ありか?

 話を聞かない奴もデスゲームの醍醐味?


 「つーか。私参加しないからさー。お前らの中で決めてくんなーい。私女。お前ら男。私が死ぬのかわいそすぎね?」


 「ちっ」


 『ふふふ。危機感が無いな。参加しないなら、強制的に敗者とする。そして、敗者の末路も見せてやろう。お前達には首輪が付いているな?』


 五人はそれぞれ、自らに付けられた首輪を見る。


 ここでワタシはそれと色と形が全く同じな首輪を穴に投げ入れる。

 直後、それは爆発した。


 『敗者は、こうだ。今すぐやる事だな』


 「ひ、ひぃ、、クソっ、、私だけ、、あいつらじゃなくて、、」


 「、、敗者は従うのみ」


 「ちっ」


 「早く!早く終わらせてくれぇ!!出してくれぇぇ」


 ふふふ。恐れよ。

 叔父さんから貰った小型爆弾付き首輪の威力を。

 近頃の技術力は、これをも可能にしたのだ。


 「ははは早くややや、やりまぁしょう。いたずらの域を遥かに超えたこのゲームを」


 冷や汗を掻いた中学生が、カードを皆に配っていく。


 中学生、意外に便利だ。

 挙動不審でキモいなと思っていたが。


 こいつは当たりだ。

 次のデスゲームにも招待したい。


 「じゃじゃじゃ、始めましょぉう。ぼぼぼぼくかからら反時計けいい周りででで」


 ついに《デスゲーム》が始まった。

 中学生、ムキムキ、サラリーマン、ホームレス、女子高生の順番になる。

 最初、中学生がムキムキのカードを引いた。


 「あ。あ、あ、わ、私にジョーカーあんじゃーん。ねぇ、くっさいおっさーん。と、取ってー。終わったらやらせてあげるからさ。おねがーい」


 「ちっ」


 ふふふ。

 始まったぞ。

 心理戦が。


 見せてくれ、人間の愚かさを。

 晒してくれ、失敗し、絶望した顔を。


 「こここ、これれだ、ややった、やりますねぇ、上がり、」


 「、我は上がりだ」


 「速く!速く!早くおわらせてくれぇぇ!速く!俺は上がったんだぁぁ!!」


 と思ったら、一瞬でゲームが終わりそう。

 何故ならジョーカーが全く動いていないから。

 

 「ちっ」


 「ねぇえ取れよ!取れよ!取ってよ!!」


 女子高生のジョーカーを、ホームレスが取らない。


 ホームレスが女子高生を見捨てている。

 これでは、ただの柄当てゲームだ。


 「ねぇえ!取れよ!取れよ!!お前なんかより価値あるんだよぉ!!若さも!性別も!未来も!!私はぁ!!」


 「ちっ」


 「あぁぁ、あぁぁぁ」


 ホームレスが、最後の一枚を引く。

 絶望し、女子高生は呻き声を出す。

 

 ふふふ。

 いい反応だ。


 実は当たりを引いていた。

 当たりの女子高生よ。

 己の愚かさを恥じるのだ。


 そして、ここからが本番。


 『ふふふふ。貴様は死、確定だ。また言うが、全ゲーム終了後に、な。さあ次は7並べだ。敗者は死ぬ』


 「出来んのか!?仮面付けたお前!!私殺したら人殺しだぞ!一生娑婆じゃくらせねぇからな!?あぁぁ!?」


 『ふふふ。お前達を誘拐したワタシが、今更躊躇すると思うか?ボタンを押すだけでドガンだ。ふふふふ』


 「ななななな何かエロいなちょっと」


 「何ってんだよ!キモいんだよ!死ねよ!!お前も死ねよ!!」


 ふふふ。

 まさに《デスゲーム》。


 負けて死が確定した連中が、どう足を引っ張り合うのか。

 ワタシは楽しみでしょうがない。

 ふふふふ。

 

 「死ね!!」


 「ややや、ややめめめてて、やめろろろ、」


 女子高生が中学生の首を絞める。

 ジタバタする中学生。

 


 やめろ、女子高生。

 物理で行かないで。

 ゲームが崩壊する。


 「黙れ!!お前はもう死んでんだよ!!早くしてくれ!!!俺は遅れても死ぬんだよ!!」


 「ぎゃあ、」


 サラリーマンが女子高生を殴り飛ばす。

 女子高生は転がっていく。


 ふふふ。

 煩いとは思っていたが。


 ナイス物理攻撃。

 お前も当たりだったよ。サラリーマン。


 「ひ、ひぃぃ、、こ、こ、殺してやる、、私が7並べで、、全員!!」


 「敗者は従うのみ、、」


 「ちっ」


 今度はサラリーマン、中学生、ムキムキ、ホームレス、女子高生という順番になる。


 ふふふ。

 果たしてどうなるか。

 七並べ。


 「早く終わらせる!会議があるんだ!!残り全員手札を見せ合おう!!こいつだけ殺せば!!犠牲はない!!早く終われる!!」


 「ふざけんな!!ふざけんなよぉぉ!!ぜってぇ殺してやる!!全員!!殺してやる!!」


 「ややや辞めたくなりますよ、、」


 「ちっ」


 「敗者は従うのみ、、」


 サラリーマンの提案に、中学生と女子高生が首をふる。

 他二人はいつも通りのことしか話さなかった。



 ふふふふ。

 潰しあえ。

 密室で潰し合うのだ。お前達。


 助けは絶対に来ない。

 叔父さんの友達に権力者がいる。

 その人に揉み消して貰えるらしいのだ。


 「あああ!もう面倒くさい!!早く!!始め!」


 何故か普通に始まった。

 なんで?

 

 「ぜんっぜん!!全然!ぜんぜんないじゃない!!弱過ぎる!!何でよ!また!私だけ!!いつもそう!!」


 「ややや、潰ししあいいはややめましょぉう、、」


 「敗者は従うのみ、、六、感謝、」


 「ちっ」


 中学生が次々に、六と八を出す。

 ムキムキもホームレスも五と九を置いていく。

 

 何だその謎の倫理観。

 女子高生に中学生の手札さえあれば。


 中学生もハズレだ。

 七並べにした意味がなくなる。 

 やめて欲しい。


 「また最後、私!!お前!殺してやる!!殺してやる!絶対!!!」


 「おおおお!はやくしろぉぉ!!!早く!!早く!早く、早く、、パス、、最後の、、」


 これが、最後のパス。

 サラリーマンの敗北だ。


 「やった!やったんだ!殺した!私が!殺して、、やった、、殺した、、」


 ふふふふ。

 これは、良い。

 七並べは考えなしでは勝てないのだ。


 後悔するのだサラリーマン。

 焦った己を恥じ、絶望しろ。

 それでワタシの慰めとなれ。

 

 「俺の、、負け、、、、今まで、、本当に申し訳なかった、、騒いで、あなたも殴ってしまい、、申し開きもない」


 サラリーマンが女子高生に頭を下げる。

 周りはそれを神妙な顔で見つめた。



 ふふふ。

 サラリーマン。

 急に理性を取り戻すな。

 これからは、幾ら発狂してもいいから。


 「くくくく、悔い改めて」

 

 「今更、、何だよ、、」


 「ちっ」


 「敗者は従うのみ、、」


 いや逆に、だ。

 理性を取り戻った事でより苦しむ事になる、かもしれない。

 逆に。


 『ふふふふ。最後はUNOだ。そして、大盤振る舞いだ。今回は下位4人を殺す。生き残るには一位になるしかない』


 下の階にUNOを投げる。


 これで、最後だ。

 冷静な心で潰し合え、お前達。

 逆に。


 「ゆゆゆゆるせんなぁ。ゆるせんなぁ」


 「、敗者は従うのみ、、」


 「ちっ」


 中学生がUNOを配っていく。


 全員、それぞれ手札を持つ。

 最後はムキムキ、ホームレス、中学生、サラリーマン、女子高生という順番になる。

 ふふふ。

 順調だ。

 


 見せてくれ、人間の愚かさを。

 晒してくれ、お前たちの絶望の顔を。

 喜ばせてくれ、一人で観戦するワタシを。


 「自分の手札はこれだ、、出されたい物があったら言ってくれ、、潔く負ける」


 「私も、、負ける、、」


 サラリーマンと女子高生が手札を公開する。



 は?

 お前達には期待していた。

 特に女子高生。

 全滅エンドも見たかった。

 

 いや、まだだ。

 この判断を、奴らは後悔するかもしれない。

 その時の顔を、ワタシに見せてくれ。


 「ややややりましょう、、いつも通り、、」


 「、、敗者は従うのみ、、」


 「ちっ」


 と思ったら、普通に始まった。


 ふふふふ。

 流石、中学生。


 デスゲームの進行にかけては、右に出る物なしだ。

 生き残ったら、次のデスゲームにも招待してやろう。

 ふふふ。


 「、、分かった。三人に従う」


 「私も、、」


 次々に皆カードを出していく。

 ➕2、➕4、➕2が中学生に襲いかかる。


 「敗者は従うのみ、、UNO」


 「ちっ、UNO」

 

 「ままま、負けそう、、潔く死ぬ、、」


 ムキムキとホームレスの残りカードが一枚になる。

 中学生も残り一枚だが、順番的に負けそうだ。

 

 始まれ、始まれ。

 殺し合い。

 ワタシは見たい。お前たちの愚かさを。

 

 「ちっ。ちっ、ちっ、楽しかったぜ。パス」


 「敗者は死しかない、、パス」


 「あああ、出す、出す、、」


 中学生がカードを出そうとしては、引っこめる。

 これを繰り返す。

 

 ふふふ。

 中学生。

 決断するのだ。

 お前が、こいつらを殺す。



 いや、ちょっと待て。

 ムキムキとホームレスの手札。

 これ、絶対に上がれていた。


 若い奴を残す判断でもしたのか?

 また謎の倫理観。

 《デスゲーム》が成り立たなくなるから、やめて欲しい。

 

 だが、逆に乙か。


 『ふふふ。お前の勝ちだ。そして、目に焼き付けるがいい。他人の死に様を』


 「ややや、やめて、、」


 中学生よ。

 自分の為に死んでいく者を見るその顔を、ワタシに見せてくれ。


 そして、他の連中よ。

 己の選択を後悔し、死に絶望する顔、それを見せてくれ。





 急いで、ワタシは椅子から立ち上がる。

 そのまま鉄パイプも持った。


 「あれ、?ば、爆発、しない、、もしかして、もしかして!生き残った!生き残ったぞ私!!やった!!やったぞ!!」


 「殴ってしまい、、本当に、、申し訳ない、、皆様もお騒がせし、本当に、」



 ふふふ。

 安心しただろう。

 そこの不意を打つのだ。


 敗者はワタシが鉄パイプで殴る。

 お前達の末路は、それなのだ。

 残りは下の階に降りるだけ。





 と思ったら、プルプルと電話が鳴る。

 叔父さんからだった。


 「何?叔父さん。今佳境」


 『すまん!!たか子!!お前が誘拐した中に!!政府高官の孫が居たらしい!叔父さんの友達でももみ消せなかった!!『確保ぉ!!確保ぉぉ!!』』


 「お、叔父さん!?え!?どうしたの!?え!?」


 プツンと、電話が切れた。

 ツーツーという音だけが残る。

 すると、ドアが一人でにガチャガチャと動き出した。




 家の扉が開けられる。

 そこにには、大量の機動隊が待ち構えていた。

 

 「「「「「容疑者を確認!確保ぉ!!確保ぉぉ!!」」」」」


 何十人もの、盾を持った元気な機動隊。

 重傷のワタシの手には、鉄パイプ。





 「おおお!!抵抗だ!!ワタシなら勝てる!!!うおおお!!!!!」






 ワタシは、捕まった。

 五人は普段の生活に戻ったらしい。




 クソが。

 ハズレ引いた。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

まともな奴が居なかったデスゲーム @tetetet

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ