第15話 ローレン家のこれから

家に帰り家族全員で夕食を囲んでいる時に父さんが皆に向けて


「明日、皆んなに紹介したい男がいる。

もう既に知っている者も多いと思うが改めてちゃんと紹介したいのだ。

明日朝食を食べ終わったら、客間に集まってくれるか?」


と言った。


次の日、朝食を食べ終わったあと急いで客間に行くとまだハリス兄さんしか居なかった。


「ハリス兄さん、早いですね。」


「ユーティアか。俺はこれから父さんが紹介してくれるという人を良く知っているんだよ。

だから楽しみでな。

あの人がダリルとユーティアの先生になってくれるっていうなら安心だ。

しっかり学ぶんだぞ!!」


そう言ってハリス兄さんはニカッと笑った。


ハリス兄さんにはダリル兄さんとはまた違う、人を惹きつけるような魅力がある。


「うん、兄さん。俺、頑張るね!」


「あぁ、ユーティアの成長を楽しみにしてるよ。」


少しするとダリル兄さんがやってきた。


「二人共早いなぁ〜。父さんが紹介したい男って僕達の先生のことだよね。楽しみだな〜」


「ダリルも頑張るんだぞ!!」


「うん、大丈夫だよ兄さん。僕は強くなることでローレン家に貢献する。それが僕の存在意義だって分かってるから。」


「むぅ・・・、そういう意味ではないんだけどなぁ… 自分の為に強くなれってことだ。

自分の大切なものを守る為にな。」


「そっか、兄さんありがと。まぁ僕の大切なモノってこの家族なんだけどね。」


ダリル兄さんは、ふふっと笑って言う。


…俺は本当にこの家族に救われたなと思う。

前世で受けた心の傷は今はもうほとんど気にならない。


まだ恋愛感情に対しては怖さがあるけれど…

それ以外では前を向く事が出来る。


俺もこの家族を守りたい。って思える人達に、この世界でも恵まれた幸運に感謝しなきゃな。




バァーン!!


突然ドアが結構な勢いで開いた。


「はぁ、はぁ、はぁ・・・」


入って来たのはシエル姉さんだった。

中腰で膝に手を付いて、肩で息をしてる…


「良かった…、間に合った・・・」


シエル姉さんの顔を見ると、ばっちり化粧していた。すっぴんでも充分綺麗だけど…

というか普段は姉さん化粧なんてしないもんな・・


もともと大人っぽい顔立ちに加えて、ちゃんと化粧をしたシエル姉さんは実際の年齢より2才くらい上に見える。


「おいおいシエル、化粧なんかして珍しいな。一体どうしたんだ?」


ちょっと呆れたような顔をしてハリス兄さんが言った。


「ハリス兄さんには関係ないでしょう。お客様が来るから、ちゃんとしただけよ。」


「それより、ユーティア!朝食を食べている時に、これから誰が来るか言うなんてひどいじゃない!昨日教えてくれれば良かったのに!」


あれ、言ってなかったけ・・・?


「ふふっ、そっか、そっかぁ〜。」


ダリル兄さんがくすくす笑ってる。

何かもう察したみたいだ。


「ダリルは何を笑っているのよっ、もう!」


姉さんはまた顔を赤くして、ぷんすかしてる。


そうこうしていると、ゆっくりと扉が開いた。


まず母さん二人が入って来て、次に父さんが入って来る。父さんの後ろには・・・

やっぱりファーレス先生が居た。


「おーし、皆んなちゃんと集まっているようだな!それじゃあ、これから新しいを紹介する!!」


んっ???家族?先生じゃなくて?


父さんはそのまま後ろに居たファーレス先生の肩を抱きながら、皆んなの前に出して言った。


「ファーレスだ。血は繋がってはいないが、俺の息子としてこの家に来て貰った。

突然の事だから、皆んなも驚いていると思うが新しい家族として迎え入れてやって欲しい。」


ファーレス先生が父さんの言葉を受けて皆んなに頭を下げながら、


「ファーレスです。縁あってマクス様に拾って頂くことになりました。皆さんよろしくお願いします。」


と言った。すぐに父さんがファーレス先生の言葉に被せるように、


「ファーレス、俺はお前を拾った訳じゃない。

俺がファーレスにこの家に一緒に居て欲しいから呼んだんだ。

これからは家族の一員なんだ、自分を卑下するような言い方はするな。」


ファーレス先生は一瞬苦笑いを浮かべたけど、顔を引き締め直して、


「僕はローレン家の一員になります。10才の時に母を亡くして…、孤児院の皆んなも家族みたいに思っているけれど・・・、

この家族の1人として迎え入れて貰えて嬉しいです。改めてよろしくお願いします!」


ちょっとだけ先生の瞳が濡れている気がする。

俺の気持ちは素直に嬉しかった。

まだちょっとしか知らないけど、でもファーレス先生が家族になってくれたら心強いし、何より人として間違いなく素敵な人だ。


「ファーレスさん、お久しぶりです。まだ兄さんと呼ぶのは慣れないので、すぐには難しいですけど・・・自然にそう呼べるようになったら良いなと思っています。宜しくお願いします。」


ハリス兄さんが最初に挨拶をした。


「はじめまして、ダリルです。これから色々と教えて下さい。

宜しくお願いします、ファーレス兄さん。」


ダリル兄さんは、もう兄さん呼び?

いや適応力すごいな・・・


シエル姉さんは・・・


姉さんは口を半開きにして完全に固まっていた…

まぁ・・・好きになった人がいきなりお兄さんになっちゃったんだもんな。

ショックだよな・・・・


俺が先に挨拶をしようかと思い始めたところで、姉さんが口を開いた。


「昨日はありがとうございました!

わっ私も、ファーレスさんと本当の家族になりたいですっ!!!頑張りましゅっ!!」


・・・噛んじゃってるし。

姉さんのキャラが迷子になっちゃったよ…

なんかもう…姉さんがどんどんポンコツになってる・・・


まぁ、でも本人は頑張ってるんだから、それで良いか。ちゃんと応援はしよう。


今度は俺の番だよな。


「ファーレス先生、ちょっとびっくりしましたけど、嬉しいです。これから宜しくお願いします。」


先生はニッコリ笑ってくれた。


「ファーレス、子供達は皆良い子だから仲良くしてやってね。」


ナタリア義母さんがそう言うと、エリーゼ母さんは、


「皆もお兄さんが出来て嬉しいでしょ〜!家族皆んなで仲良く頑張りましょうね〜。」


ニコニコしながら言った。



「よしっ、自己紹介は皆終わったな。

それじゃあ、ちょっとこれからの事を少し話そうと思う。

少し長くなるが、しっかり聞いて欲しい。」


「まず王国でのローレン家の立ち位置だが、ウチは基本王族の継承者争いには関わらない方針だったが今回はその方針をやめる。

第1王子リチャード様を支持することとする。」


「次にローレン家の話だが、これからハリスに少しずつ俺の政務関係の仕事を任せていくつもりだ。空いた時間にはファーレスに剣を習うこと。

ハリスには政治の、領地をまとめていく才覚が俺よりもあると思っている。ハリス、頼むぞ。」


「はい、父さん。任せて下さい。」


「ダリルには槍の天稟がある。俺を超える可能性を秘めていると俺は思っているんだ。

だから、ダリルにはこれからは俺が主に稽古をつけていこうと思っている。

厳しくするが、頑張れるな?ダリル。」


「もちろん大丈夫です。きっと父さんを超えて見せますね。」


「シエルには、これからはナタリアから直接魔法の練習を受けて貰うのと、ハリスの政務のサポートをして貰いたい。

どちらもシエルなら相当なモノになると俺は考えている。シエルやれるか?」


「もちろんよ。魔法だって、政務だって頑張れるわ。」


「最後にユーティアだが…、我が家では10才から本格的に練習場に通って稽古を始める慣習だったが、やめだ。

ユーティアは明日から練習場に通うこと。ファーレスを師と仰ぎ、稽古をつけて貰う。それとエリーゼから魔法を習うこと。

ユーティア、少し早いが大丈夫か?」


本格的に修行が出来る。嬉しいと思った。


俺が抱えている秘密を守るために、強くならなきゃいけない。でもそれを抜きにしても、前世には無かった魔法や武術を学べるのは正直楽しいのだ。


「はい、楽しみです!」


俺はそう答えた。


「最後に、俺は今のローレン家は歴代最強になり得ると思っている。過ぎたる力は災いの元にもなり得るが、守らねばならないモノを守る為には力が必要になる。

正直なところ、今の王国はかなり不穏な雰囲気がある。今はまだ大丈夫だが…、先の事は分からない。俺は戦禍を防ぎたい。皆、力を貸して欲しい。頼む。」


「ウチの子達なら大丈夫でしょ。皆んなで力を合わせて頑張りましょう。」


「ナタリアさんの言う通りだわ。皆でやれば何だって大丈夫よ〜」


そして皆頷き、気を引き締めて話は終わった。


よーし、俺も頑張ろう!!



************

おまけ


自己紹介の時のナタリア視点です。



「ファーレスだ。血は繋がってはいないが、俺の息子としてこの家に来て貰った。

突然の事だから、皆んなも驚いていると思うが新しい家族として受け入れてやって欲しい。」


父が突然そんな事を言った。


いや…私も将来的にはね、それはもちろん家族になりたいなって思っているわ。

でもね、それはまだ早いわよ・・・


だってまだ私13才よ。成人まであとまだ2年あるし・・・・

でもお父さん公認かぁ・・・


ふふっ、でもこれからちゃんとお互いを知って・・・


「僕はローレン家の一員になります。10才の時に母を亡くして…、孤児院の皆んなも家族みたいに思っているけれど・・・、

この家族の1人として迎え入れて貰えて嬉しいです。改めてよろしくお願いします!」



えっ10才の時にファーレスさん、お母さんを亡くしているの!?


そんな・・・

私…、絶対にファーレスさんに寂しい思いをさせない!!

そしてファーレスさんと温かい家庭を築くんだ

絶対、絶対わたしが幸せにしてみせる!!


決意を込めて、私は大きな声で言った。



「昨日はありがとうございました!

わっ私も、ファーレスさんと本当の家族になりたいですっ!!!頑張りましゅっ!!」


あっ、噛んじゃった・・・


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


更新が遅くなってしまい申し訳ありませんでした。ちょっと今週末に試験があり、次回の更新も少し遅れるかも知れませんが、頑張って書いていきたいと思います。

次話で一章は終わりになる予定です。

読んで頂きありがとうございます。

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やり直し夫婦の冒険譚 @gfdlove

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