第14話 BBQパーティー②

「えっ!?うそっ?  なんで・・・?」



シエル姉さんが素っ頓狂な声をあげた…


うん?、姉さんが取り乱すなんて珍しいな?



「あれっ、シエルお嬢様ですか?」


先生がシエル姉さんに声をかけた。


姉さんはさらさらの長い銀髪を指先で弄りながら、消え入りそうな声で答えた。


「はっ…はじめまして。

ユーティアの姉のシエル・ローレンです…」


少し俯きながら、顔は真っ赤だ。


シエル姉さんはナタリア義母さんに似て、普段からとても落ち着いている。

姉さんをよく知らない人には、ちょっと冷たい印象を与えるくらいに。


その姉さんが・・・、めっちゃ女の子してる。


何か姉さんは先生のこと知ってるみたいだけど、知り合いってわけじゃなさそうだ…


・・・ファーレス先生、イケメンだしな。

よしっ、応援してやろう。


「先生、姉さんも一緒にバーベキューに参加させて貰っても良いですか?」


「えっ!!」


またシエル姉さんが素っ頓狂な声をあげる。

いつもクールな姉さんが狼狽えてる。


「あぁ、もちろんだよ。シエルお嬢様さえ良ければ、是非楽しんでいって貰えると嬉しいな。」


先生が笑顔でそう答えると、シエル姉さんはワタワタしながら、


「そっ、そうですね。

そう言って頂けるなら・・・、私も参加させて頂いてもよろしいでしょうか…」


姉さんは真っ赤な顔のまま、遠慮がちにそう答えた。

俺は姉さんが手にしているケーキを指差して、


「先生、これシフォンケーキです。昨日、シエル姉さんと一緒に焼いたんですけど、良かったら皆で食べて下さい。」


そう言うと、姉さんは俯きながらおずおずとケーキを先生に手渡した。

姉さん、指震えてるよ…


「ユーティア君、シエルお嬢様、ありがとう!すごく良い香りがするね。とっても美味しそうだ。」


姉さんがケーキを先生に渡すと、周りで俺達のやり取りを眺めていた子供達が一斉に集まりだした。


「やったー!ケーキだって!!」


「お兄ちゃん、お姉ちゃん、ありがとー!」


小さな子達が元気良くお礼をしてくれて、


「ユーティア様、シエル様、ありがとうございます。」


それなりの年齢の子達は、小さな子達を落ち着かせながら丁寧にお礼をしてくれた。


「それでは後で私が切り分けさせて頂きますね!ユーティア様の作るケーキ、とっても美味しいので皆様楽しみになさって下さいね。」


アリシアさんがそう言って、先生からケーキを受け取って孤児院の中に持って行った。




「じゃあ、バーベキューを始めよっか?」


先生が開始を宣言した。


バーベキュー会場は孤児院の目の前、簡素な木製のテーブルと椅子が人数分バーベキューコンロを囲むように並べてあった。


テーブルには花が飾られていて、子供達も手伝ってくれてたんだろうなというのが分かる。

豪華ではないけれど、心が温かくなるような会場だった。


俺とアリシアさんと姉さんが同じテーブルに着くと、院長先生と小さな子供達がやって来た。


院長先生は小柄な女性で、60歳くらいだろうか、穏やかな笑顔を浮かべて俺達に一礼すると


「本日は来て下さり、ありがとうございます。

昨日ファーレスが帰ってきて、ユーティア様達をご招待するんだと嬉しそうに話しておりました。

日頃のご援助を含めまして、重ねてお礼を申し上げます。」


ものすごく丁寧な挨拶をしてきてくれた。

俺は領主の息子なんだなぁと実感すると共に、かなり気まずかった。

慣れてないんだよな、こういうの・・・。


助けを求めて姉さんの方をチラッと見ると、はぁ、しょうがない・・みたいな顔をして、


「丁寧なご挨拶ありがとうございます。

こちらの方こそ、領内の孤児となってしまった子達の面倒をみて下さって感謝しております。」


凛とした声で感謝の意を表した。

おぉ、凛々しいシエル姉さんが帰ってきた。


「ねーねー、お兄ちゃん達は領主様の子供なんでしょう?いつもありがとうね!」


小さな子がそう言ってくれる。

嬉しいけど、頑張っているのは父さんや母さんだ。俺も頑張らなくちゃな。


「ありがとね。俺も君達に負けないように頑張るよ!」


「ふふっ、その意気ですよ。ユーティア様!」



笑顔でそう言ってくれるアリシアさんを見て、やっぱり意識してしまう・・・

まずいなぁ…




「はいっ、お肉焼けたよ!」


先生が焼きたてのお肉を持ってきてくれた。

香辛料がたっぷりと掛かっていて、結構スパイシーな感じだ。

一緒のお皿にトマトやレタスが乗っていて、小麦粉を薄く焼いたパンと一緒に食べるんだよって先生が説明してくれた。


前世のメキシカンタコスみたいな感じで、とても美味しかった。


「んっ、これはとても美味しいですねっ、ユーティア様!!」


「あら、本当。今度は我が家でもやってみましょうか。ねぇ、ユーティア。」


みんなにも評判がいい。


「口にあったみたいで良かったよ!

これはね、北の方で食べられてる料理なんだ。」


先生は笑顔になりながら教えてくれた。


「じゃあ、ゆっくり食べていってね。僕はこれから子供達の分も焼くからね。」


「あっ、それでは私もお手伝いします!!」


姉さんがバッと言って、立ち上がった。

おぉ・・・、やるな姉さん。


「私もお手伝い致しますよ。」


「僕も手伝うよ。」


アリシアさんと俺がそう言うと、姉さんは


「そしたらせっかくの料理が冷めちゃうじゃない。2人は食べ終わってから手伝ってくれたら良いわ。」


そう言って、先生に向かってニッコリと笑って


「ファーレス様、それでよろしいですよね?」


「でもお客様に手伝って貰うのは、悪い…」


「皆で和気あいあいと一緒にやるから、バーベキューは楽しいのです。

さぁ、子供達のためにお肉を焼きに行きましょう、ファーレス様。」


姉さんは振り切れたのか、圧がすごかった。

うん、姉さん頑張れ!



まぁそんなこんなで僕達も食べ終わってから、盛り付けを手伝ったり子供達に配ったりした。


あらかた食べ終わった後は子供達と一緒におしゃべりをしたり遊んだりして、とても楽しい一日だった。


家に帰りながら、気になっていた事を姉さんに聞いてみた。


「姉さんは先生のことを知っていたの?」


「ウチは10才になると、練習場で訓練をするようになるでしょう。私がね、初めて練習場に行った時、ファーレス様はお父さんと稽古をしていたのよ。

その時に私、憧れちゃったのよ。

あの若さでお父さんと真剣に稽古してるファーレスさんに・・・

でもすぐに練習場で見掛けなくなってしまって…だからもう一度会えたこのチャンス…

私は頑張るわ。だから応援しなさいよね、ユーティア。アリシアもお願い!」


もちろん俺は姉さんの恋を応援する。

きっとファーレス先生とシエル姉さんなら上手くいくと思うんだ。


◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆

次話の投稿は3日後くらいになると思います。

宜しくお願いします。








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