不思議ちゃんのまとめ!

崔 梨遙(再)

1話完結:2500字

 小出しにしていた不思議ちゃんネタ、まとめようと思います。



 まず、不思議ちゃんは36歳頃から宇宙からのメッセージを受け取れるようになりました。それから、宇宙からのメッセージに従って行動するようになりました。宇宙の誰から? どんな風に受け取るの? などの疑問は湧きましたが、あえてツッコミませんでした。


 或る日、


「温泉地で運命の出会いがあるというメッセージを受け取ったので、いってきます」

「いってらっしゃーい!」


と言って温泉地の仕事に就きました。


 やがて帰って来ました。


「出会いはあったんか?」

「ありましたー!」

「お! ほな、もしかして結婚とか?」

「まだお付き合いもしていませんよ」

「どういうこと?」

「運命の人というのがお客さんやったんですよ。でも、その時は気付かなくて、後になって気付いたんです。“ああ、あの人だったんだ!”って。だから名前も社名もわかりません」

「アカンやん」

「大丈夫です、別の温泉地で再会できるというメッセージを受け取りましたから。ということで、また温泉地にいってきます!」

「いってらっしゃーい!」


 不思議ちゃんは、別の温泉地へと旅立って行きました。


 そして、また帰って来ました。


「運命の人と再会できた?」

「ああ、あの人のことはもうどうでもいいんです。新たな出会いがありましたから」

「良かったやんか、どんな男性?」

「なんと! 22歳の男の子なんですよ。強引に口説かれちゃってまいりました(上機嫌)。私、若く見られるのかもしれません」

「ふーん、まあ、歳の差は関係無いからなぁ」

「でも、1つ問題がありまして」

「問題って何?」

「22歳の彼、副業がAV男優なんです」

「ええんとちゃうの? お互いに好きやったら」

「それが、“友達を呼ぶから3人でしよう!”って言われて慌てて帰ったり」

「そこら辺は彼氏さんと話し合うしかないなぁ」

「それが、もう連絡がとれなくなったんですよ」

「アカンやん!」



 そうこうしている内に、39歳になった不思議ちゃんは、大きな物流倉庫の事務を始めました。どうやらそこでも出会いがあったようです。宇宙からのメッセージは、意外に間違っていないのかもしれません。不思議ちゃんが行く先々で出会いがあるのですから。


 この時のお相手は社員の多田野さん。不思議ちゃんよりは年下だったらしいですが、多田野さんの正確な年齢を僕は知りません。不思議ちゃんも正確には知らなかったような気がします(多分)。


「多田野さん、よく私達の事務所に来て、私のことジロジロみるんですよ。何故だと思います?」

「マスクしてるから(コロナ中)、素顔を見てみたいんとちゃうか?」

「いや、多分、私のことが好きなんだと思います。彼は私の魂の片割れです。私も多田野さんのことを好きになっちゃいましたから」

「片割れ? ほな、運命の人ってこと? へえー! 出会えて良かったやんか。目標は結婚? でも、不思議ちゃんって、“年収700万以上、専業主婦をさせてくれる人”というのが条件だったよね? 多田野さんは条件をクリアしてるの?」

「ああ、もうそんなことは考えていません。条件なんて、もう考えていません。共働きでも、週末婚でも、事実婚でもいいんです」

「かなり言うことが変わった気がするけど、ほな、やっぱり目標は結婚やな」

「いえ、ハグです。愛する運命の片割れとハグしてみたいんです。何か化学反応が起きると思うんです。楽しみです」

「ふーん、願いが叶うといいね」


 そして後日。


「多田野さんへのメッセージを書いたんですけど、内容をチェックしてもらえますか?」

「うん、ええよ、“私とあなたは、前世で深い関係でした、私とあなたが結ばれたら、きっとものすごい化学反応を起こすでしょう。そして今世でも私とあなたは出会うことが出来ました。これは偶然ではありません。運命です……”って、これはアカンやろ、いきなりこんなメッセージが届いたら引くで。段階を踏むことが大切や。今の段階でこのメッセージを送るのはやめとき」

「もう、送っちゃいました-!(笑)」

「送った後やったら、僕がチェックしても意味が無いやんか」


 或る日、不思議ちゃんから電話がかかってきました。落ち込んだ声でした。


「暗いなぁ、どないしたん?」

「SNSで、多田野さんに妻子がいることがわかったんです」

「ふーん、まあ、目標はハグやから、食事に行ってハグしてもらったらええんとちゃうの? 不倫はアカンけど、ハグくらいやったらええやろう?」

「いえ、ハグももういいです。多田野さんのことは、もういいです。どうでもいいです。他の片割れを探します」

「え! 魂の片割れって、1人じゃないの?」

「何人もいますよ」

「……片割れとちゃうやんか」


 そして思いました。“なんや、結局、結婚したかったんやんか”と。


 そして、僕は、話の流れで母校の文化祭に不思議ちゃんを呼んでみました。


「僕の母校の文化祭に来る? 気が進まなかったら来んでもええよ。独身の僕の同級生が来るから紹介してあげられるけど」

「出会いがある、行った方がいいというメッセージが来たので行きます」


 なんだかんだ、理由をつけて約束の時間よりもかなり遅れてきた不思議ちゃん。僕は、しばらく同級生と不思議ちゃんを2人きりにしてみました。


 同級生と不思議ちゃんはマッチングしなかったようです。僕が戻ったら、コロナ前だったのにソーシャルディスタンスでした。やがて夕方になり、僕は言いました。


「晩飯、3人で食べに行こか?」


 すると不思議ちゃんが言った。


「え! 今日の紹介はこれだけですか?」


 何人紹介してもらえると思っていたのでしょう? そこで僕は納得しました。不思議ちゃんは、僕が学校の事務の正規職員と知り合いなのを知っていました。学校の正規職員を狙っていたのでしょう。ですが、僕は前もって言っていました。“学校の正規職員の男性事務員は30歳前後やで、不思議ちゃんとは歳が離れてるで”と。


 39歳女性に30歳の男性を紹介するわけがないやろ!



 それから、不思議ちゃんからの連絡はありません。というか、多分、拒否されているでしょう。不思議ちゃんはいったいなんだったのでしょう? お騒がせ野郎です。







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不思議ちゃんのまとめ! 崔 梨遙(再) @sairiyousai

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