第3話 対立

1限目が始まっても、正直みんな授業どころではなかった。また1人クラスメイトが消えたのだから当然だ。

だが、これで分かった事が2つある。日付に気付いたから消える訳ではない事と、消えるのは1日に1人ずつという事だ。ただそれが分かった所で安心も、何か手を打つ事も出来ないのが現状で、次は自分が消えるんじゃないかという恐怖と不安に誰もが怯えていた。

授業が終わり休み時間になると、生徒達はそれぞれ仲の良い友達の所へ行ってヒソヒソと話をし始める。津堂も加東の所に行ってみようかと席を立とうとすると、田井中と木原の会話が津堂の耳に入って来た。


「今度は原道かぁ。マジで誰なんだろーな?犯人」

「だぁから、荻原か氷上だって!」

「お前まだそれ言ってんの?つーか声デケーよ!」


田井中達の会話を聞いて、津堂はハラハラしながら篠山の様子を伺っていた。朝の廊下での雰囲気からして、理由は分からないが篠山の前で氷上の話をするのはタブーだと津堂は感じた。それに津堂も友達が黒幕だなどと言われるのは良い気がしない。当の本人は地雷を踏んでいる事に気付いていないので、直接伝えようと津堂は木原達の元に向かった。


「木原、ちょっといい?」

「ん?なに津堂」

「お前が推してる犯人説なんだけど・・・」


氷上の件と自分の気持ちを津堂が伝えると、木原は申し訳なさそうに謝ってくれた。


「ごめん。俺ミステリーの事になると見境なくなって・・・」

「いや、分かってくれればいいから」

「俺からもごめん。これからはちゃんと木原の事注意するわ」

「うん、よろしく」


しょんぼりと反省する木原と田井中の様子に、津堂は耳を垂れた子犬を連想してフッと口元を緩めた。加東とはまた次の休み時間に話すことにして、津堂が自分の席に戻ろうとした時、閉まっていた教室のドアが開いた。

教室に入って来たのは、ここ何日か休んでいた氷上だった。

クラスメイトの注目を一斉に浴びながら自分の席に向かう氷上に、加東が今起きている事態を説明しようと近寄る。


「おはよう氷上。来て早々悪いが、手短に話させてくれ」

「うん、わかった」


何を?とは聞かずに、氷上は加東からの説明を黙って聞いている。普通ならまず信じない、耳を疑うような話を表情1つ変えず、加東の目をじっと見ながら。


「夢みたいな話だけど、実際にもう2人消えてるんだ」

「だったら荻原君と原道君を消した犯人を見つけるのが最優先だね」


また誰かが消える前に、一刻も早く2人を消した犯人を見つけるべきだと氷上は言い、その意見に加東が深く頷いた。


「何言ってるの?犯人は神様だよ」


唐突な発言に、加東と氷上を始めクラス全員が声の方へ目を向ける。発言の主は夢宮で、思いがけない彼女の主張にみんなが驚く中、蒔苗はスマホ越しに夢宮をジッと睨み、篠山も夢宮を流し目で見ている。夢宮が発言を続ける。


「これは神隠しで、神様が思いつきで荻原君と原道君を消したの」

「いや、そう見せかけて何か法則があると僕は思う」

「証拠は?」

「ない。君だってそうだろ?」


対立する夢宮と氷上の一触即発な雰囲気に、教室をピリついた空気が包み込む。そこへタイミングよく始業のチャイムが鳴り、次の教科担当の教師が来た為、夢宮は不機嫌な顔で自分の席に戻った。


「あんなさち初めて見た・・・」


夢宮と仲の良い野々田が、唖然とした表情で呟いた。

普段の夢宮からは想像出来ない言動を目の当たりにして、クラスメイト達の彼女に対する印象は一瞬の内に悪い方へと変わった。


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姫り眠 古坂京子 @necolove

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