能力
「ふぅ…」
家についた俺はソファに腰を下ろし、ため息をつく。なんだか新しい情報ばっかでやたら疲れたな
その時、頭の中に再び邪神の声が響いた。
「学よ、小さき眷属を創り、目を増やせ」
「目を増やせ…?」
意味がわからず、俺は首を傾げた。こいつは何を言ってるんだ?
「お前は創り出した生き物の視点を共有できる。それを利用して、外の様子を確認するのだ」
「へぇ、視点を共有ねぇ。てか俺が創る生き物って小さき眷属って言うんだ」
邪神の指示に従い、黒い球体を生み出す。適当にゴキブリでも生み出して好きに行動させるか。
ゴキブリの姿を想像すると、黒い球体は無数の小さな昆虫の姿に変わり、俺の手の中で蠢き始めた。
家の中にこんなものを創り出すのは気が引けるが、俺は意識を集中させ、それらに命令を下した。
「目立たないように行動しろ。外の様子を探ってこい」
命令を受けたゴキブリたちは静かに床を這い、窓の隙間から次々と外へと散っていった。突然、狭い隙間や暗い路地を這い回る映像が脳裏に浮かんできた。
複数の場所を同時に観察するという奇妙な感覚に、最初は戸惑ったが、すぐに慣れてきた。
「お前が創り出した眷属の視点は私も確認できる。何か分かったことがあれば伝えてやろう」
邪神の声が再び響く。俺はゴキブリたちの動きを確認しつつ、さらに新しい生物を創り出すことにした。
今度は空を飛ぶのがいいかな。
「じゃあカラスを創ってみるか」
黒い球体に再び意識を集中し、カラスの姿を思い浮かべる。
すると球体は羽ばたく黒い鳥に変わり、部屋の中に生まれたカラスが羽音を立てながら部屋の中を飛び回り始めた。
俺は追加で40羽ほどのカラスを創り出し、彼らにも命令を下した。
「お前たちは空から監視だ。誰か襲われてるやつがいたら適当に助けてやれ」
カラスたちは窓から飛び立ち、夜空へと散っていった。今度は上空から街を見下ろす視点が脳裏に浮かぶ。
「こんなもんでいいか?」
俺は邪神に問いかけた。ゴキブリたちが地面を這い、カラスたちが夜空を飛び回っている。
「ああ、悪くない。これでこの周囲の動向は大まかに把握できる。次は扉を創ってみろ」
「まだあるのか…」
少し戸惑いながらも俺は黒い球体を生み出し、扉を創り出すことにした。少し試行錯誤していると黒い木製の扉を作れた。
「我ながらいい出来だ。これでいいよな?」
「それでいい、開けてみろ」
邪神の指示に従い、俺は黒い扉の取っ手に手をかけ開けた。
「えっ?」
扉の向こうには、なぜか白くバカみたいに広い空間があった。邪神と出会ったとこと良く似ている。
「これもお前の能力だ。お前が創り出した生き物をここにストックしておけ」
「ストック?」
「そうだ。暇な時間に様々な生き物を創っておけ。必要な時にいつでも引き出せるようにな」
俺はその言葉にうなずきながら、再び扉を閉じた。いちいち生き物を創り出す手間が省けるし、かなり便利かもな。ストックしておけば緊急時にもすぐに対応できるし。
「便利だな、これ。いつでも準備ができるってわけか」
「その通りだ。緊急避難先としても使える」
邪神の声がどこか満足そうに響く。俺は部屋の中に戻った。時計を見ると、もう22時を回っていた。いつもならそろそろ眠る時間だが、なんだか妙に眠くない。
「なんか眠くならんな」
「お前は私の眷属となったことで睡眠を必要としなくなった」
「えぇ…」
一般人だった俺が邪神の眷属になってしまい色々やらかす話 塩ハラミ @ji3ba3
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。一般人だった俺が邪神の眷属になってしまい色々やらかす話の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます