第2話 悠斗

「ここはどこ?」


悠斗は周囲を見渡し、驚きと困惑の表情を浮かべた。彼は自分が空中に浮かび上がっており、巨大な広場を見下ろしていることに気づいた。広場には大勢の人々が集まっていて、彼をじっと見つめていた。しかし、悠斗は自分の体が明らかに虚ろで、実体がないことを感じ取った。


「俺、死んだのか?」悠斗の瞳孔が急激に収縮し、この考えが彼を一瞬で恐怖に陥れた。たかが夜更かししてゲームをしていただけで、まさか突然死ぬなんて信じられなかった。


そんな彼が自己疑念に陥っていると、その時、先生の声が鮮明に彼の耳に響いた。


「守護霊?凡級?これは何だ、一体どこかのテレビ番組の設定みたいな感じだな。」


悠斗は心の中でひとりごちた。突然、彼は夜宮莉莉香が口にした、受け入れ難い事実を耳にした。


「私の守護霊が凡級なの?」夜宮莉莉香は悠斗を見つめ、その目には隠し切れない失望と悲しみが漂っていた。凡級守護霊とは、その守護霊が生前ただの凡人であったことを意味し、凡人の守護霊はほとんど覚醒していないのと同じようなものだ。


夜宮莉莉香が悠斗を見つめる一方で、悠斗も彼女をじっと見つめ返した。


「なんて美しい人だ!」


悠斗は心臓が今も鼓動しているなら、それが激しく打ち鳴らされているに違いないと感じた。一目見た瞬間、彼は夜宮莉莉香の美しさに心を奪われ、まるでキューピッドの矢に射抜かれたかのように恋に落ちた。


同時に、彼の心の中に奇妙な感情が芽生え始めた。まるで夜宮莉莉香との間に何か言い表せない特別な絆があるかのように、彼は自然と彼女を守りたい、ずっと彼女のそばにいたいと思った。先生の言葉や今の状況を考えると、悠斗の頭の中にある考えが浮かび上がった。


「俺、この美女の守護霊になったってことか?」


この認識は恐怖を引き起こすどころか、悠斗に無限の喜びをもたらした。状況はまだ完全には理解できていないが、この美しい女性と一緒にいられるなら、守護霊になることさえも受け入れるつもりだった。


突然、強烈な吸引力が彼を襲い、悠斗の視界が真っ暗になった。広場も、夜宮莉莉香も、水晶の柱も、すべてが一瞬にして消え去った。


再び目を開けると、彼は自分のよく知る賃貸部屋のベッドに横たわっていた。


「え?さっきのは夢だったのか?いや、あまりにもリアルすぎる、どう考えても夢じゃないよな。」


悠斗は頭をかきながら、困惑した表情を浮かべたが、再び眠気が彼を襲った。


「まあ、いいや。まだ眠いし、続けて寝よう。」


彼は大きなあくびをし、再び目を閉じて眠りについた。


その頃、夜宮家では、夜宮莉莉香が一人、自室に閉じこもり、困惑と無力感に満ちた表情を浮かべていた。彼女は、二度の失敗の後、ようやく成功した守護霊の覚醒が希望の兆しになると信じていたが、覚醒したのはただの凡級の守護霊だった。


「凡級の守護霊で、一体どうやって他人と競争するの?これじゃ、私は肉体浄化の『洗髄』段階にさえ到達できないかもしれない。」夜宮莉莉香の心は、深い苦しみでいっぱいだった。


陰陽師と守護霊は一体であり、ともに成長していく必要がある。しかし、凡級守護霊は潜在能力が低く、適切な修行書を見つけることさえ難しい。


この時代では、古ければ古いほど価値があるとされている。強力な守護霊の多くは、何万年、あるいは数百万年前の伝説的な存在であり、彼らが死後、幾千もの年月を経て、今の時代の人間たちにとって強大な守護霊となっている。もし、神級の守護霊を手に入れれば、それは神になる可能性を秘めていることを意味する。守護霊のレベルが高ければ高いほど、陰陽師に与える戦力も強大であり、修行の速度も大幅に向上する。しかし、凡級の守護霊はまったく役に立たないどころか、成長の妨げにさえなる。


強力な守護霊以外にも、修行書が未来の成功を決定づける鍵となる。古ければ古いほど、その威力も強大であり、数百万年前の普通の修行書は、一万年前の強力な修行書よりも貴重である。そのため、修行書はその年代と威力に基づいて九つのレベルに分けられており、その上には神級の修行書も存在する。


夜宮家が飛蘭市でその地位を確立し続けているのは、三百万年前の七級修行書を所有しているからに他ならない。家族の中で最も強力な肉身境の修行書は六級だが、それは高級守護霊を持つ陰陽師にしか授けられない。夜宮莉莉香は家主の孫娘であっても、その修行書を修める資格はなかった。


「九級の修行書なんて、我が家が全力を尽くしても手に入れられない宝物を、私がどうやって手に入れることができるの?」夜宮莉莉香は深くため息をついた。


ふと、彼女は自分の守護霊のことを思い出した。あまりにも普通に見える、凡級の守護霊を。


「たとえ実力はどうあれ、私の守護霊である以上、少しは理解しておかないとね。依存するつもりはないけど、一緒に成長していかなきゃ。」そう思い、夜宮莉莉香は目を閉じ、意識を自分の守護霊空間に入れた。


守護霊空間は陰陽師の魂の奥に位置し、守護霊が居座る場所だ。しかし、彼女がその空間に入ったとたん、目の前に広がる光景に言葉を失った。


「これ……私の守護霊空間がこんな風になっているなんて?」

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天下一の女弟子 @zcr

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