私が人生で1番恐怖を感じた話【曾祖母と指】

きびだんご先生

だれ?

供養として書かせてください。

これは、私が12歳ぐらいの時の話です。

その頃にはまだ曽祖母が生きていて、自分の子供のように私を可愛がってくれていました。

曾祖母とだけあって齢は90とちょっとぐらいだったので、昔の色々な話を聞かせてもらっていました。戦争で亡くなった私の曽祖父に当たる人の話、子供の頃に何をしていたか、戦争の話などのありきたりな昔話が主なものでした。

その中で、宝物の話をした時の話です。

私達が住んでいる一軒家の和室の仏壇の棚から小さな古びた箱を一つ持ってくると、中から黒く変色した棒きれの様なものを取り出しました。


「それなに?」


と聞くと、


「これが、宝物だよ。○○(私の名前)同じぐらい大切」


と、少し嬉しそうに言いました。


「なんなのこれ」


と、どう見ても棒にしか見えなかったので聞いてみると


「指。○○(私の名前)のひいおじいちゃんの」


と言いました。まだまだ精神的に若かった私は奇妙さと怖さで何も言えず、子供ながらにはぐらかしながら母親の元へと逃げました。

暫くしてその後も沢山の話を聞かせてもらっていましたが、宝物の話だけは妙に頭に残り、本音を言うと怖かったのでその話だけはしないようにしていました。

そうして暫くした後に、静かに曾祖母は息を引き取りました。たまたま近くに居た母親の話によると、聞く限り曾祖母の最後の言葉は「あぁひどい。だれ?だれ?だれ?」だったそうです。

これに関しては親族一同なんの事か全く分からず、皆が首を傾げていました。

次の日になると遺品の整理を手伝えと言われて、ダンボールに詰まった遺品を見ていた時に、ふとあの箱のことを思い出して仏壇の棚を開けました。もちろん突如として消失することはなく、箱はありました。

そうした時に、少し見えてしまったんです。箱の蓋と本体の間に挟まっている、白い髪の毛が。怖かったので母親を呼び、少し指の話をされた時の事を伝え、恐る恐る箱を開けてみました。

中には、やはり棒きれにしか見えない黒くなった指が入っていました。ただ前回と違うのは、その上から乱暴に放られていた大量の白髪と紙。

白髪には毛根も付着し、乱暴に抜き取ったことが伺えました。


「ひぃいい!!なにこれなにこれ!!」


部屋の中に母の叫びが響いたのを覚えています。私はもう何が何だか分からず、母にしがみつき声もないままに泣き出す寸前でした。

暫くして祖父等を呼び、横の紙も開いてみました。中には、曾祖母の字で乱暴に一つ。


つぎはわたし。これはだれ?


と大量の矢印と共に書きなぐられていました。普段はとても温厚な人だっただけに、異常なソレは私達に恐怖を与えました。

その夜のことです。

12歳と言えども私でした。当時は夏休み真っ只中であったこともあり、昼夜逆転した生活ゆえに私は1時を超えてもまだ起きていました。

家族が近場で寝ているのでリビングに行き、一通りゲーム等をした後に戻って寝ようとした時でした。

祖母が使っていた和室の障子が、少し開いていました。私は、そこから覗くものを見てしまいました。曽祖母でした。私が知っている通りのの彼女が、私を覗き見ていました。ただ、違うのが目でした。

目が縦に付いていました。

それを見た私は、力の限り叫んだことを覚えています。少し遅れて足が動き、リビングへと飛びもどりました。

リビングの扉越しに、奥から小さく「ひどいよーひどいよー」と、録音のように一定に曾祖母の声が聞こえていました。

そうしてその次に和室の障子が力の限り開かれた大きな音が響きました。

曾祖母の形をしたアレが、こちらに向かっている。私はそこで本当に恐ろしくなり、ソファの上でクッションを被りながら曾祖母がリビングの扉を開けるのを待つしか無くなりました。

恐怖と死への嫌悪感でぐちゃぐちゃに歪んだ顔を覆い隠して震えて"その時"を怯えて待ちました。

そうして遂にリビングの扉が開き、バタバタとこちらに向かう足音を聞いて、私の恐怖が最高潮に達した時でした。


「○○(私の名前)!?大丈夫!?」


母の声でした。クッションを剥ぎ取り私の顔を覗き込む、心配が見て取れる顔をした母親を見た時に、どれほどの安堵感を得たか。忘れもしません。

それからは本当に何も無く、母と共に朝を迎えました。アレがなんだったのかは分かりませんし、知りたくもありません。


ああ、それと一つ後日談を添えます。

曾祖母が持っていたあの棒きれみたいな指。あれ曾祖父のものではありませんでした。

少なくとも男性ではなく、女性のものだそうです。

それでは、ここまで聞いて頂いた貴方へ。私から一つ。


これは、だれ?

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私が人生で1番恐怖を感じた話【曾祖母と指】 きびだんご先生 @Kibidano_Sensei

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