エビニンゲンの第四間氷期 - 濃尾
濃尾
エビニンゲンの第四間氷期 - 濃尾
エビニンゲンの第四間氷期 - 濃尾
1
エビニンゲンたちは絶滅に瀕していた。
環境耐性が高いエビニンゲンでさえ、急激な地球温暖化による環境の激変に耐えることは、もはや絶望的に思えた。
エビニンゲンの長老“ONGY”は、大深部地下中央コンソールルームで呟いた。
「共生関係にあったニンゲンが滅びてからもう半世紀。我々がニンゲンを絶滅から救えなかったときから、我々も滅びの運命にあったのかもしれん…」
若いエビニンゲンたちは皆、うつむいた。
その時、声がした。
「“SIPKA”はどうでしょうか?ニンゲンが残した英知といわれる」
声の主は“KENTA”だった。
若いエビニンゲンたちの中で評判がいい。
“ONGY”は言った。
「“SIPKA”か…確かに動態保存されておる。しかしな、ニンゲンでさえうまく操れなかったあやつを、我々エビニンゲンがどうこうできるわけがない。それに、“SIPKA”までの経路は危険な灼熱地獄だ。“KENTA”、あきらめろ…」
「ニンゲンのことわざ、“イチカバチカ”。それの出番じゃありませんか?」
“ONGY”はじっと“KENTA”を見つめ、やがてこう言った。
「そうじゃのう…。ニンゲンはこうも言った。“ミヲステテコソウカブセモアレ”…。“KENTA”、やってくれるか?」
「“ガッテンショウチ”!」
皆から歓声が上がった。
2
“KENTA”の「“SIPKA”捜索ミッション」は仲間の助けもあり、順調に進んだ。
最大の問題は、“SIPKA”への経路に立ちはだかる“OSU灼熱地獄”だ。
これへの対応策は、“KENTA”がすでに考えていた。
かつて遥か過去のこと、エビニンゲンはニンゲンと共に「星まで飛んだ」という伝説がある。
そのとき、エビニンゲンは“エビアーマー”といわれる特殊スーツを使ったという。
“エビアーマー”の残骸は、“エビフライ神殿”の奥深くに鎮座していた。
それを基に、“KENTA”専用の特殊スーツが完成した。
3
いよいよ「“SIPKA”捜索ミッション」の日が来た。
皆に囲まれた“KENTA”に向かい、“ONGY”はこう言った。
「“KENTA”よ、ここまでようやった。お前はわしらエビニンゲンの中でも“勇者”と呼ばれるにふさわしい。最後にこれを授ける。」
と言って、“ONGY”は“KENTA”に金属製の小さい何かを渡した。
「これはな、恐らく“SIPKA”の駆動キーじゃ、とワシは思う。ニンゲンはこうも言った“スベテノモノニハモノガタリガアル”。これにはその古代文字が彫られておる。これは“アクセサリー”という。護符じゃ。」
“KENTA”は凄まじい精巧さで彫刻された“護符”を首に下げた。
「みんな、行ってきます!」
こうして“KENTA” の長い旅が始まった。
完
エビニンゲンの第四間氷期 - 濃尾 濃尾 @noubi
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