第55話 終了
中での騒動が終わり、倒れていた人達が正気を取り戻し始める。
それに気がついて、警官達がドヤドヤと入ってくる。
手にした銃は押収され、拘束されていく。
そう大騒動という言葉が、本当にぴったりな状態。
その奥では、泣いているアマンダを、陸斗が慰める。
「とにかく、服を着て、いつまでもその格好では風邪を引くから」
キリッとした表情で世話を焼く。
「あう、あう、あうぅ」
「はい。よしよし君は美人で格好いいから。颯司が変なだけだからね」
陸斗がそう言ったら、アマンダだけではなく雫と朱莉までが口をそろえて反論をする。
「そんな事ない、颯司はステキなの」
だがそんな言葉はガン無視。
服を着せながら、頭をなで世話をやく。
「僕は君のことが好きだからね」
ついでに告白まで……
その珍しい行動に、雫と朱莉は顔を見合わせると、にまっと笑う。
「そうよ、陸斗はちょっとあれだけど、たまに優しいし」
雫はそういってにっこり。
「そうそう。かなり変で陰気なところがあるけれど、たまに頼りになるし、うん、おすすめ。この際付き合っちゃえ。家はお金持ちよ」
そう言って、朱莉はサムズアップ。
陸斗はそれを聞いて、苦笑。
ヤッパリそんな認識だったのかと。
言葉として聞くと胸に刺さる。
その愁いを帯びた悲しそうな顔に、アマンダの母性が刺激される。
なだめていたはずだが、逆に抱きしめられる。
「かわいそうな子、そうそうね。私が慰めてあげるから。おっぱい吸う?」
「あっいや、はい」
かぷっと……
「こらっ、そんな事は家の中でやれぇ」
そう言われて、陸斗はアマンダの部屋に引っ張り込まれた。
だが、一〇分もしないうちに、事情聴取のため呼ばれることになる。
だがその短い時間で、二人はなる様になったようだ。
照れ照れの陸斗と、少し元気になったアマンダは事情聴取に向かう。
後日聞くと、抱きながら褒めまくったらしい。
その姿を見ながら雫はつい思ってしまう。
羨ましいと。
やはり秘めた思いなど、くそだわ。
伝えてなんぼね。
向き直ると、朱莉が颯司の張り付き頬ずりをしている。
ベリットはがすと、抱きつく。
「もう傷は大丈夫?」
「うん。ああ、雫のおかげで治ったよ。ありがとう」
「よかった、血を流して倒れているあなたを見て、心臓が止まるかもと思ったわ。好きよ、死なないでね」
そう言って、躊躇なくキスをする。
いつもの軽いやつではなく、ねっとりと。
でも、受け入れてくれる。
良かった、嫌がられない。
さらに、強く抱きしめ合う。
だが側で、おとなしく見ているわけはない。
「ちょっと待って、何をしているの? 私だって好きなのよ独占しないで分けてよ」
「分けてって、そう言うもんじゃないでしょう。ねえ颯司」
「えっ、あっ困ったな」
その反応を見て、ええっと思う雫と、にんまりする朱莉。
「独占しようとするなんて、心の狭い奴ぅ」
「心が狭いじゃなく、普通はそうじゃない」
「あら昔から、仲間なのだから、喜びは分かち合えって言うじゃない」
「それはそうだけど、颯司はどう思うの」
究極の質問。
「雫は好きだし大事。でも、朱莉も大事なことには違いはない」
雫は、その好きの部分でてれっとなり、朱莉も大事と言うところでむっとなるが、理解はできる。
でもこの場では、つまらないが勝つ。
だが此処でへそを曲げ、離れると、こいつが入り込んでくる。
追い込まれる、雫。
「じゃあ、勝負ね。どちらが、颯司にとって大事となるのか」
「良いわねぇ。颯司、お部屋に行こう、私のすべてを見て理解して」
多少命のやり取りがあり、テンションが上がりっぱなしだったようだ。
ギャアギャアと言いながら、三人は部屋に引き上げる。
それを見ていた親達は、やれやれという風に見ている。
「どちらかを妻で、もう一人は側室で良いかな」
「あの様子では、そうなるな」
「だが、颯司の因子。無事に子ができるのかが、少し不安だな」
そう、最低限の親達は、真実の共有をしていた。
そもそも、アマンダは枠外だったが、血族外で特異的に発生した特性持ち、一人くらい産ませるのも一興かと考えていた。
そうその辺りは、一般の家庭とは違い、血が命。
家のためになるならば、それが優先される。
それから数日後、アルバイトのために魔物を狩る中に忍者が混ざるようになっていた。
そう、アマンダに付き合い、陸斗も忍者装束で走り回る。
そして、少し距離感に近くなった三人。
「見つけた、いくぞ」
「はい」
「うん」
鬼の残党などが、まだ密かに姿を潜めている。
そして、古からの脅威もまだ居るはず。
今日も彼らは、闇を走り魔を狩る。
千年以上続く家業として……
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お読みくださり、ありがとうございます。
彼らはこれからも、世を守る戦士として頑張ります。
恋愛を主で書こうとしたのですが、なかなか難しいですね。
精進いたします。
では。
俺達は暗闇の底で、そっと世界を守る。 久遠 れんり @recmiya
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