桑ちゃん

白兎

桑ちゃん

 これは私が中学生の頃のお話です。

 私は中学に入って、合唱部へ入部しました。合唱部の顧問は桑ちゃん。あだ名で呼んでいたので、本当の名字は思い出せません。

 この桑ちゃんですが、ちょっと謎です。というか、とても優れた指導者なのです。桑ちゃんが合唱部の顧問となってから、良い成績を収めるようになったとのこと。私が入部した時には既に桑ちゃんが顧問だったので、地元の合唱コンクールで上位に入賞することは当然でした。私のこの合唱部、女子しかいないのですが、運動部の男子を有志で集めて、練習していたのです。彼らにはあまり時間がない中、桑ちゃんの指導により、完璧に仕上げていく。正に神業。桑ちゃんの指導以外に受けたことはないので、他の合唱部がどんな練習をしているのかは分かりませんが、初めに柔軟体操、それから腹筋、背筋それぞれ百回。仰向けに寝て両足を上げたまま歌う。学校の周りを走りながら声を出す。学校の近くの川の両岸に立ち、向かい合って歌う。外での活動は、人の目もあり、かなり恥ずかしい。けれど、このすべてが、歌う為の身体の基礎を作るためだったのでしょう。

 私が三年生になった年は、地区戦を勝ち抜き、全国大会へ出場。NHKホールで歌い、テレビ放送され、自分が映っているのを確認して嬉しかった。この大会の課題曲、作詞が俵万智さん。桑ちゃんは、この歌に込められた意味を感じながら歌って欲しいという事で、なんと、俵万智さんを学校へ呼んだのです。その当時の私は、その方がどれほど有名かなんて知りませんでした。桑ちゃんは教師だから、きっと教え子の一人なのかな? なんて思っていたのです。

 ですが、大人になって、すごい有名な人だと知り、桑ちゃんって、一体何者なのだろう? とその偉大さを再認識しました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

桑ちゃん 白兎 @hakuto-i

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ