027

「俺はこれを持ち主に返したいんだが、如何せん持ち主は地獄の最下層に封印されているんでな、本家とも言えるお前等なら欲しいのかな、と」


 だから受け取れと伸べたがいやいやいやいやと首を横に振った。何度も。


「なんでだ?お前等の物のような感じじゃねーの?」


「えっと……カイト君は純貴族がどのように誕生したか知っているか?」


 何をいきなり?何かの確認か?


「確か昔、昔にでっかい戦争があって、そこで頑張った天使四人が最初の純貴族だとか?その後、純貴族は天界に留まったユピテエル、冥界で冥王となったプルトエル、堕天して魔王となった奴と、もう一人は知らん」


「その通りだ。堕天する前は天使に属していたが、天界の半分を率いて創造主に反乱を起こし、魔界を創造して王となり、やっぱり長きに渡り天使と戦い、敗れて地獄に封印された」


 魔界を興して王となったから魔王か……まあ、そうだろうな。


「うん?じゃあ悪魔の方が本家?」


 だったらあいつは俺を騙した事になるよな?ぶち殺されてもしょうがないんじゃねーのそれ?


「いや、本家と言うのなら我々龍族ドラグナーの方だろうよ。悪魔ディアボルスは魔王に仕えた堕天使の子孫。龍族ドラグナーは魔王を倒した三天使、ユピテエル、冥界を興したプルトエル、そして、堕天した魔王の嫡子、ドラゴエル……即ち、私様の先祖だ」


 何と、魔王の息子の方の子孫だったのか!!いや、だから直系、本家と言ってもいいのか!!


悪魔ディアボルスは先程も言ったように、魔王に仕えて堕天した天使の子孫。よって魔王に仕える事こそが使命。そこはもはや魂が縛られている、と言ってもいいのかもしれんな。呪い、と言った方が良いのかも」


 だからあいつ等は魔王ならば、魔王因子サタン・ファクター適合者ならば種族を問わずに従っている訳か。使命、呪いとやらのおかげで。


「私様達龍族ドラグナーは魔王と血縁関係なれど、袂を分かって戦った。よって魔王因子サタン・ファクターはいらぬし、寧ろ敵の部類。悪魔討伐の勇者に武器を授けている理由もそこにある」


 成程……地上に出て武器をくれてやった理由が漸く解った。要するに悪魔をぶち殺して欲しかった訳だな。


「うん?あれ?でもお前等って天使も死神も敵じゃなかった?海界にも時々現れては暴れるっつう話だぞ?」


「敵となった、が、正しいよ。魔王打倒で共闘した天使は裏切った。魔王の血筋故にいつか災いを齎すだろうとな。天界全部にフルボッコにされたようだぞ。魔界にこそ堕ちなかったが、失望して絶望した先祖は龍界を創り、そこを鎖国とし、他との関わりを一切絶った。しかし、興したばかりの国には物資が殆どなく、他から調達する以外なかった。一番困ったのが食料だ。それを得るために海界に赴き、そこの縄張りの天使……今では人魚と言うらしいが、よく争ったようだぞ。地上にも赴いて物資を得ていたが、こっちは逆に献上して来る者が多かったとか」


 人間、亜人は龍を崇めたって事か?俺の世界でも似たような話があるからそうだろう。つうか、こいつ等の戦闘力がヤバいとか、超凶暴とか聞いていたが、そんな事情があったとはな。先に裏切られたんだから喧嘩売ってもしょうがないような気もする。

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階級《クラス》・奴隷《スレイヴ》4 しをおう @swoow

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