026

「何と、カイト君は我儘だな。この私様がここまで譲歩していると言うのに」


 失望を装って、肩を竦めて首を横に何度も振った。どこが譲歩なのか聞いてみたいが、龍族からすれば、長からすれば譲歩で名誉な事なのだろう。


 俺相手じゃ無けりゃな。


「はっきり言って、俺は国王とかに興味はねーんだよ。やれと言うのなら、それは褒美じゃなく拷問だ」


「私様の身体は?」


 ……いや、それはな?思春期の童貞だから、そりゃあ、なあ?


「まあ、会って間もないのに伴侶は流石に急な話。まずは恋人からでもいいぞ」


「だから、お前の要望だろ、それ。俺の要望を叶えろっつってんだよ。そこで漸く対等だろうが」


 勝手に話を進められちゃ困る。俺がいつお前の旦那になるっつったんだって話だ。


「そう言われればそうか。ではカイト君の要望を聞こうか?」


 脚を組んで、腕を組んで背凭れに深く腰を下ろして問うた。なんでそんなに偉そうなのか?お前ウィンウィンの間柄とか言わなかった?


「まあいいや、じゃあ現状で困っている、と言うか、お前等龍族に会いたかった理由があるんだが……」


 手のひらをそっと前に出す。


「なんだ?何もないが」


「まあ、見ててくれ」


 魂の奥底に置いてあった魔王因子サタン・ファクターを取り出す作業に入る。何故魂の奥底に置いたかと言うと、マリウエルのアホ共から守っていたと言う理由がある。


 あいつ等は魔王因子サタン・ファクターを見つけられるし、マリウエル地上領当主嫡男様から奪った能力で当たりを付けられる可能性があったから、見つけられない場所に保管しておいたのだ。


 ポケットに連動させて、俺の意で出し入れ可能にしておいたが、アンナには警戒不要と言う事で、保管場所から手のひらへの顕現化を見せてもいいだろ。


 そして、それは俺の手のひらに顕現した。宝玉と言う形の情報集合体として。


「なんだこれは?宝玉……っ!?」


 仰け反って椅子から跳び上がり、更に距離を取る。


「なんだ!?その禍々しい宝玉は!?」


 禍々しいのかこれ?俺には何も感じないんだが。


「これは魔王因子サタン・ファクターを可視できるように宝玉の形にしたものだ。これの所有者は魔王。もっと言えば最初の魔王なんだろ?」


魔王因子サタン・ファクター!!?」

 

 まさに飛び跳ねたアンナ。そんなにビビるもんなのか、これって?


「な、何故君がそれを持っておる!?」


「まあ、成り行きで。つうか説明が面倒だから、読心マインド・リードで勝手に見て知ってくれ。だからそんな事はどうでも良くて、初代魔王の直系の種族が龍族ドラグナーらしいな?」


「ま、まあ、そう言われてはいるが、遥か昔の事なので、今は全く別物と言って差し支えが無いぞ」


 それ、悪魔ディアボルスからも聞いたよ。だけどあっちよりも近いんだろ?本家のようなもんだと言っていたし。

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