もっとかわいいって

@yosi-

第1話

「みんなー!!もっと、もっとかわいいって言ってー!!」


「かわいいーー!!」


夜中の2時。アニメの推し、めぐちゃんのライブ映像を見ていた私。


「やっぱめぐちゃんかわいい!天使!神だよおおお…」

ライブ映像の余韻に浸りながらスマホでめぐちゃんの画像を検索する。

「ほんとにかわいいなあ…どの画像もビジュいいし…何だよ神なのか!神が与えてくれた点からのギフトなのかあああああ…(泣)」


画像のリンクを開く。すると、画面は黒くなり、自分の顔が映し出される。


「それに比べて私は……」


私、高崎恵は学校でいじめを受けている。理由は私の容姿。自分の見た目が大好きで大好きでたまらない1軍女子どもはきもちわるい私を排除しようとしているのだろう。


もちろん可愛くなる努力はした。顔中のニキビを治すため、県外の皮膚科に通い、プランパーとかいうリップみたいなのをつけて唇をプックリさせたし、二重整形もした。


それでも奴らは

「唇分厚っwwたらこかよww」「目腫れぼったすぎるでしょww」

とか言ってくる。もはや私という存在自体がブスすぎるのであろう。


そんなことがあってから、何しても意味がないという結論に至った私はもう何もかもやめた。


「生まれたときから可愛かったら、もっと違う人生だっただろうなあ……」


そう思いながら、画像検索を続ける。

「……!」


でてきたのは、めぐちゃんのコスプレ写真。

「…すごいかわいい…」


眩しい笑顔を浮かべるその人は、写真の中で、ペンライトよりも光っているように見えた。


「私も…こんなふうに輝きたい…!」


そう思った私は、ほとんど無意識にめぐちゃんのウィッグ、衣装、カラコンを購入していた。

「これ…本当に私…?」


鏡から覗いているパッチリとした大きな目、美しい白い肌、ぷっくりかわいらしい唇をもち、めぐちゃんと同じ服を着た少女は私ではないみたいだった。


くるりと回ると、ふわりとスカートが広がり、そのかわいらしさに思わずにこりと微笑んだその姿はまるで天使のようだった。


その姿に酔いながら、ポーズを決め、シャッターを切る。

写真の中の私は、あの日見つけた写真より、遥かに輝いていた。


この姿をみんなに見てもらいたいと思った私は、『もっとかわいいって言ってー!!』という言葉とともにトゥイッターにアップした。


翌朝、トゥイッターを見てみると、500ものいいねと、300もの『かわいい!!』というコメントが付いていた。


たくさんのいいねと、はじめてもらった『かわいい!』という声。とても、言葉で言い尽くせないほど、嬉しかった。


もっともっとみんなに『かわいい』と言ってもらいたい。


そう思った私は、カラコンを追加で購入、また写真を撮り、トゥイッター、イソスタにアップした。3時間後、トゥイッターを見ると、800ものいいね、700もの『かわいい!!』というコメントが付いていた。


もっともっと、いいねがほしい。もっともっとかわいいと言ってもらいたい!


そして私は翌日、めぐちゃんのコスプレをしたまま、久しぶりに学校へ登校した。

みんな私を見てなにやら言っている。きっと『かわいい!!』という言葉だろう。


みんなが私に注目している。


みんなが可愛いと思っている。


みんなが私を認めてくれている!


その事実がどうしようもなく嬉しい。味わったことのない快感だ。


『ありえない』『何考えてんの』『きも』


そんな言葉は聞こえない。私は世界一かわいい。みんな私に嫉妬する。

「高崎!止まれ高崎!何考えてんだ!」

先生が何やら叫んでいる。かわいいって言っているんだろうな。

だから私も叫ぶ。みんなに向けて。


「みんなー!!もっと、もっと、もーーーーーーーーーーーっっっっっと『かわいい!!!』って言ってー!!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

もっとかわいいって @yosi-

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

参加中のコンテスト・自主企画