第2話 会えない時間(大輝)

こまちちゃんが転勤して2週間が経った。

有料老人ホームの仕事は忙しいのか、まだ会えていない。

そろそろ会って、エネルギーチャージしたいな。

今月は、ずっと中番勤務だって言ってたから、帰りに来るとかはちょっと無理かな?

酒井さんにも宮田さんにも、こまちちゃんからこっちに遊びに来るという連絡はないそうだ。

「櫻井さん、最近元気なさそうですね。」

と、宮田さん。

表には、出さないようにしていたけど、出ていたみたいだ。

『転勤してから、会えてなくて…。火曜日に会う予定なんだけど、あと3日長いな〜と思ってるんだ。』

「こまちですか?こまちも櫻井さんに会いたがってますよ。」

同じ気持ちでいてくれてるんだ。

それを知れただけで、ちょっと安心した。

今日は、俺が夜勤で、宮田さんが遅番。

「待ってる時間って長いですよね〜。有料の方も忙しいみたいです。」

と、共感してくれた。

『そうなんだよ。待ってない時は、あっという間なのに、不思議だよね。松本さんって、今日仕事?』

実は、今月のシフトもらってないんだよね。

だから、いつが休みなのか分からない。

「こまちですか?今日は、仕事ですね。あっ…!」

『えっ?何?どうしたの?』

「今、LINE来て、仕事終わりにこっち寄りますって!」

と、宮田さん。

おぉ、マジか!!

『本当?!やったー!ラッキー!』

「(思いがけずこまちに会えて)良かったですね!」

『宮田さんも会って行くでしょ?』

「もちろんです!私も会いたいです!」

だよね。きっと、酒井さんも会いたいはず。

もう少しで、遅番の退勤時間になるけど、宮田さんは残る気満々(笑)


少し待っていると、外から窓をコンコンと叩く音がした。

「こまち、玄関のドア開いてるから入っておいで。」

と、窓を開けて伝える宮田さん。

「ありがとう。」

と、玄関の方へ行くこまちちゃん。

少しして、

「お疲れ様です。」

と、こまちちゃんが入ってきた。

「こまちお疲れ!久しぶりだね!会いたかったよー!」

こまちちゃんとハグをする宮田さん。

『こまちちゃんお疲れ様!』

久しぶりに見たけど、変わらず元気そうで安心。

「今日は、夜勤2人体制なの?」

「そんなわけないでしょ(笑)こまちが来るって言ってたから待ってたの!」

「そうなんだ!じゃあ、菜月が遅番で大輝さんが夜勤なの?」

「うん、そうだよ。」

こまちちゃんって、相変わらず天然(笑)

これは、俺は”こまちちゃん”って呼んでいいのか?”松本さん”と呼ぶべきなのか?

でも、”大輝さん”って呼ばれたし、宮田さんしかいないからいいのか。

『こまちちゃんは、中番?』

「うん。今月はずっと中番勤務だから、この時間に帰ることが多いよ。」

『そうなんだ。大変だね。』

グループホームの何倍の人数がいるから大変だと思う。

「仕事は慣れた?日中勤務ばっかりも、久しぶりにやるとキツイでしょ?」

「うん、少しは慣れたかな!日中の方が職員の人数もいるから楽だと思う。」

利用者が多い分、職員の人数もいるのかな?

『職員の人数もいるの?あんまり変わらない?』

と、聞いてみる。

「うーん…。少し多いかな。でも、まだ2,3人は欲しいみたい。」

『そうなんだ。また、どっかから異動するのかな〜。』

「どうだろ?新しく来てくれるのを待つんじゃない?」

求人も出しているようだけど、新しい職員が入る気配はない。

「それもそうだよね!有料が人手不足だって言って、有料ばかり異動してたら他が人手不足になっちゃうもんね。」

と宮田さん。

確かにその通りだ。

こまちちゃんが異動してから、こちらもちょっとギリギリで回している。

『1年って長いね〜。半年とかにして欲しかったなあ。』

と呟くと、

「早くこまちに戻ってきてほしいよ!」

も、賛同してくれる宮田さん。

『半年じゃ見つからないよ。それに、1年でも怪しいし。』

と話すこまちちゃん。

だから、余裕もって1、2年にしたのか。

「こまち、また来るなら今度は、昼間においでよ!梨乃も会いたがってるよ!」

貝瀬くんもね(笑)

この前、勤務が被った時、こまちちゃんどうしてるかな?LINEの返事、あんまり来ないけど元気かな〜?会いたいな〜。って、話してきた。

『うん!じゃあ、今日は帰ります。また、時間がある時に来るね!』

と、こまちちゃんは宮田さんと一緒に帰った。

こまちちゃん、前に会った時より可愛くなった?

いや、キレイになった気がする。

2週間ぶりに会ったけど、元気そうで良かった。

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