ソレゾレノカタチ

𝓡𝓲𝓡𝓲

第1話 近況報告会(ひより)

各々の注文が完了し、ソフトドリンクが届いた。

和果さんはグレープフルーツジュース、蘭さんはオレンジジュース、こまちさんはアップルジュース、華音さんはグレープジュース、私はレモネードを注文した。

「今日は、久しぶりに会えて嬉しいよ!」

と言う、和果さんの言葉を合図にカンパイをする。

話題は、この間、和果さんが舞台を観に来てくださった話になった。

「あんなにスラスラセリフ言えるのスゴいよ!練習大変だったでしょ?」

『お稽古は大変でした。でも、とっても楽しかったです!』

「そうなの?!あの衣装もスゴいよね✨」

『ありがとうございます!来週末で、今やっている舞台の公演が終わるんです。そしたら、少しお休みがもらえることになってます。』

来週末というか、今月末まで舞台を頑張れば、4日間くらいお休みがもらえる予定。

そのうちの2日は、家で家族みんなでのんびりする予定。

その他の日は、まだ予定が決まってない。

「そう。少しは休めるのね。体調には、気をつけてね?私も、いつかひよりの舞台を観に行きたわ!」

と、言ってくださる華音さん。

こまちさんは、何か難しそうな顔をしながらメモを書いている。

小説かな?こまちさんの連載小説は、連載が始まってからずっと読んでいる。

でも、舞台公演中は読めないから、ちょっと残念。

今、連載中の小説の主人公のモデルは、きっと和果さんだと思う。

読む人が読めばすぐ分かる。

でも、私もあの連載小説で希望をもらっているのも事実。

だから、厳しいお稽古にも評価にも負けずに頑張れている。

いつか、皆さんに私の舞台を観に来てほしい。

あの頃は、学生だったから学業優先で、お仕事も学校が休みの日に入れてもらっていた。

だから、ミニライブやイベントに来てもらうことができたし、手伝ってもらうこともできた。

そんな皆さんに、あの頃より成長した私を見てもらいたい。


公演も残すところ、あの3日になった日。

日々、最高の演技を更新できるように、毎日台本を読んでダメ出しされた所を念入りに稽古している。

舞台が終わった後の連休の1日は、こまちさんと会うことになった。

舞台が終わったら、いろいろ話を聞きたいと言われた。

今日は、昼公演と夜公演がある。

夜公演は、18時からなので準備中。

1回1回の舞台を大切に、一言一言のセリフを大切に。もらった役を大切に。

挫けそうになった時、尊敬する役者さんに言われた言葉、今でも大事にしている。

いざ舞台が始まると、最初は緊張するけど中盤あたりになると楽しく演技ができる。

この間は、和果さんを見つけることはできなかったけど、LINEで舞台の感想を送ってくれた。


今日の2公演が終わり、全体ミーティングが行われる。

「ひより、この場面の時はもう少し中央に行って。見せ場だから、スポットライトを全身で浴びなさい。あと、こっちの場面では、もう少し悲しそうに。声はバッチリなんだけど、姿勢がもう少し低いといいかも!あとは、良かったわ!」

と、アドバイスを受ける。

忘れないように巻末ページにメモを取る。

他は、全体的に良い舞台だったとのこと。

この調子で、最終日まで気を緩めず頑張ろうと言って、ミーティングは終わった。


ホテルに戻って、シャワーを浴びる。

上がってからスマホを見ると、こまちさんからLINEが入っていた。

開いてみると、今日の舞台の感想が送られてきていた。

観に来てくださったんだ。あの時、行きたいね!って言ってたのは、みんなに合わせてたのかな?

それとも、何も考えずに観たいという意味だったのかな?

こまちさんからの感想は、具体的なものが多かった。

そういえば、学生の頃、みんなにオーディションのセリフ覚えるのを手伝ってもらったっけ。

その頃から、こまちさんのアドバイスは、他のみんなより具体的なものが多かった。

オーディション前の練習も演技の細かい所までアドバイスしてくださった。

和果さんや蘭さんは、スゴいね!とか今の良かったよ!って、褒めてくれることが多かった。

でも、こまちさんは、褒めてくれるけどそこを更に良くするためのアドバイスをくれた。

だから、オーディションで最後のセリフだけ自分で考えなくちゃいけなかった時、真っ先に相談した。

懐かしいなあ。

私は、高校を卒業してからは、芸能活動に専念していた。

だから、みなさんの連絡先も去年の秋に知ったし、こまちさん以外のみんなの近況は、本当に知らなかった。

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