第30話保健室にて

「「「勝者ディノール!!」」」


俺は安堵と新技の反動でその場に仰向けになって倒れてしまった。

どこからかセリーアの歓声が聞こえてくるが、今は指1本動かせそうにない。


「おい、大丈夫かよっ……。」

「どっちが負けたか分からねぇだろこれじゃあ。」



「あはは、俺のこれは技の反動なので人形は反応してくれませんでした。」


「俺のダメージはもう回復しちまってるけどよ、人形なかったら死んでたぞあれ。」


「あの技、ぶっつけ本番だったので……。」


「あの戦いの最中で思いついたって言わねぇよな?」


「ここしかないって思ったら勝手に技を繰り出してました。あはは。」



「ディノールさんおめでとう、まずはその魔力回路を修復するためにも保健室へ行きましょうか。」


俺はネルファに抱き抱えられ、保健室へと強制連行されながら眠りについてしまった。



「お主が戦った訳でもないのに、騒ぎすぎだのぉ。」


「いいじゃない、お姉さんとしてディノールの頑張りと勝利に喜ぶのは当然でしょっ!!」



「ふぅむ、だがあの戦いの最後は凄まじかったのぉ。」


「あれって結局どういう原理なのかしら?」


「恐らく……。」


「それは俺が説明するよ!!」


俺は2人の会話で目を覚まし、会話に乱入する。


「わぁ!!ディノール起きてたの??」


「ごめん驚かせて……さっき起きたところだよ。」


「お主、体はどうかのぉ?」


「今の感じだとなんともないかな。」


「そうか、あの最後のライトニングマーダーとやら、相当な威力であったしその程度で済んで良かったのぉ。」


「それもそうだね……あれ以上やってたら魔力回路はズタボロになってしばらく何も出来なかったと思うしラッキーだった。」


「ラッキーってディノール自身も反動を読み切れてなかったの?」


「うん、ぶっつけ本番であの時思いついた技だからね。」


「はぁ〜、呆れた……今度からは周りに心配かけない戦い方してよね!?」


「は、はい。気をつけます。」


どうやら本気で2人は俺を心配してくれていたようで、特にセリーアは目に涙を滲ませていた。



「でだお主よ、先程の新技だがどうやったのだ?」


「イメージとしては、斬撃をまっすぐ飛ばすイメージだった、それに雷属性の魔法を流し込んで一緒に飛ばしたって感じかな?」


「ほほお、あくまでもあれは斬撃だということかのぉ。」


「そうだね、それを魔素が追いかけていくイメージだけど実際は違うかもしれない。」


「あの技は雷撃というか雷を剣で操ったようにも見えたわ!!」


「でも、剣を突き出すだけじゃ多分ライトニングマーダーは上手くいかないんだ。」


「それはなぜかのぉ?」


「突きだと魔素を押し出すだけのイメージ、剣撃に乗せると剣の振りによって遠心力とか諸々の振動とか勢いによってより遠くに飛ばせる感じなんだよ。」


「ごめん説明下手で……。」


「つまりはあれかのぉ、ものを投げる時前に押し出すだけだと飛ばないが、振りかぶって投げると遠投できるのと同じかのぉ?」



「まさにそれ!!」



「なんにせよ、凄まじい技を手に入れたわね!!」



こうして、俺の思いつきで放った技の認識は共通したものに一応はできたようだった。


その後も、くだらない雑談などを交わしたあとで2人は自室へと戻って行った。

俺はと言うと、念の為に保健室に一泊することとなった。

やることもなくぼーっとしていると、部屋に誰かが入ってくる音がカーテン越しに聞こえた。


「あの〜ディノールくんいますか〜?」


細々と小さな声の主は俺の寝ているベッドを探しているようだ。


「ここですけど〜?」


返事をしながらカーテンを少し開けるとそこにはリリアがいた。

リリアは安心したように笑いながらこちらへと駆け寄ってきた。


「あの、ウチとお姉ちゃんのためにありがとうございました!!」


「いやいや、当然のことをしたまでですよ。」


「ディノールくんのことは信用してるので、また何かあったら頼ってもいいですか??」


「もちろんですよ、学友としてまずは仲良くしてくれると嬉しいです!!」


「ウチからもぜひお願いします!!」


「あとこれはウチからの提案なんですけど、敬語をお互いにやめませんか?距離感を感じてしまうので……。」


「俺も同じこと思ってました、これからは敬語はやめにしていきましょう。」


「うん!!改めてよろしくね、ディノールくん。」


「よろしくリリア!!」


その後はロロアの様子を話したあと直ぐに、ロロアに用事があったようでリリアは保健室を後にしていた。


そして消灯時間になったので、俺は目を瞑り眠りにつくのだった。



翌朝、目を開けるとそこにはドルフが椅子に腰をかけたまま寝ていた。



「うあああ、びっくりした!!」


「ん?あ、起きたかチビ!!」


「どうしたんです?」


「あ〜、いやそれがな、悪かったと思ってよ、お前に強く当たりすぎちまったから……。」


「そんなことは気にしてませんよ!!」

「気にしてませんけど、気になることはあります。」


「一体なんのことだ?」


「なんで、そんなに周りを目の敵にしてるのかです。」


「それは話すと長くなるから今は軽く説明してやるよ。」


「俺の名前はドルフ・アンダーソンって言うんだけどよ……。」


「ん?名字があるんですか?」


「あぁ、俺は家名がちゃんとある貴族の出なんだ。」


「ドルフさんが貴族!?」


「そんなに驚くとこかよ!!」


「いや、だって言葉遣いとか色々と輩でしたし。」


「あ〜それはわざとっていうか、家族への反抗みたいなもんだよ。」



その後も、ドルフの身の上話が続いた。

要約すると、ドルフは幼少から優秀な兄や姉と比較され、多少目を見張る行動や結果を残しても認めては貰えず、居場所が家にはなかったようだ。

それからは認めて貰うことを諦め、気を引くために悪事に手を染めたりしていくうちに家族からは逆に無視されるようになったようだ。

そして、家を出て学院でも卒業すれば見返せるだろうという動機で学院に来たそうだ。


やがて、それらは劣等感となり自分より弱いのにヘラヘラしている人を見るとイライラしてしまうようになったのだとか。


ロロア、リリアのことも姉妹で仲良くしてお遊び気分で学院に来てるとしか思えずとの事だそうで俺はもう辞めるように言った。


「ロロアさんとリリアちゃんにはこれ以上嫌がらせをしないって約束できますか?」


「それはどうかな、俺はお前には負けたがアイツらには何一つ負ける気がしねぇからよ。」

「そりゃ、ディノールのことはしっかり認めてるからよ、聞き入れてやりたいけど、あいつら見てるとイライラしちまって仕方ねぇんだ。」



「まあ、見かけたら容赦なく俺が止めますから恨まないでくださいね。」



「そうかよ……俺はどうせ一匹狼だからよ、好きにしてくれ、あとネルファからの伝言で今日は午後から出席しろだってよ。」


「どこで講義するんですか?」


「修練場だとさ!!」



そう言いながらドルフは保健室を後にして午前中の講義に向かっていくのだった。



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こっくりさんから始まる異世界冒険記〜〜異世界こっくりさんと紡ぐ成長譚〜〜 かふぇおれ @cafe36

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