第29話ドルフとの決闘
翌日、俺は朝早くからネルファに職員室へ呼び出しをされていた。
「失礼しまーす……。」
「ディノールさんでしたかよく来てくれました、呼び出された理由は分かりますね?」
「えっと、決闘の件でしょうか?」
「そうです、ドルフさんには昨日の夜伝えましたが、決闘は本日午後1番に私ネルファが審判のもと執り行います。」
「そ、そんな急にですか!?」
「ええ、あの時既に始まっていてもおかしくない戦いですし、これは試験ではなく私怨で始まった問題ですから、準備期間などはございません。」
「そういう理由なら反論はありません……。ドルフさんもOK出したんですよね?」
「彼は今すぐにでもと言ってましたよ。」
「そうですか、分かりました。では、審判をよろしくお願いします。」
こうして急ではあるが、ドルフとの決闘の日程が決まり、俺は少しハラハラしながら午前の講義を受けることになったが、いじめを止めるためにもやるからには、全力でドルフを倒しにいかなくてはならないと、自分を心の中で鼓舞して、前世では出来なかった守りたい人を守ると言う行為を全力で遂行すると意気込むのであった。
そして少し時間が進み午前の講義が始まる。
「はい、では皆さんこちらに注目をしてください。」
ネルファの声掛けに全員注目する。
「本日の午前の講義ですが、午後からドルフさんとディノールさんの決闘がありますので、予定していた連携魔法の講義から内容を変更して行います。」
「教授ぅ!!決闘て具体的なルールとかあるんですか?」
ノリノリのセリーアが間髪入れずにネルファに対して質問をぶつけた。
「決闘のルールとしては相手を死に至らしめてはならないと言うことくらいしかありません。」
「じゃあ、それ以外はなんでもありってことですか?」
「禁忌魔法などを使わなければなんでもありですが、そもそも禁忌魔法の殆どは相手を殺傷する為の魔法ですし、術者への跳ね返りもありますから使う人はいないでしょう。」
「なんか楽しそうね、私もいつかやってみたいかもっ!!」
「コホン、セリーアさんの意気込みは良しとして、午前の講義は決闘もあると言うことで学院内を案内することにしますので、皆さん私についてきてください。」
こうして俺たちは、ネルファに連れられ学院内の各講義室や運動場、修練場と図書館などを改めて案内され午前の講義を終えたのだった。
そして休憩も終えた午後1番、俺とドルフの決闘を始めるため同期生6人は闘技場に集合していた。
少し遅れてネルファが闘技会場に姿を見せ、俺とドルフを闘技会場の真ん中へ呼び出し、注意事項などを改めて説明した。
「これからあなた達ふたりにはお互いを真の敵だと思い戦っていただきます、なお今回の決闘では万が一に備え、一定以上のダメージを超えると代わりに破壊される、魔導人形を用意しています。」
「魔導人形は全部で2体づつで、全て破壊された時点で決闘を止めますが、ここまでで質問はありますか?」
そう言われたので俺は質問をなげかける。
「魔導人形がダメージを全部身代わりしてくれて、怪我などは負わないということですか?」
「けっ、そんなこと気にしてんのか、やっぱチビらしいビビりっぷりだぜ!!」
「俺が心配してるのはドルフさんが怪我しないかですよ、勘違いしないでください。」
「んだとぉ!?魔導人形なんて使わずやってやろうか!!」
「はい、それ以上は決闘でお願いします。」
「ディノールさんの質問に答えておくと、怪我はしませんが、怪我したように痛みは一定時間続きますし、その継続時間も半日以上なので決闘中に癒えることはありません。」
「俺にかかれば魔導人形があったところで、こんなチビは楽勝だろうよ!!」
「凛達が言うようによく吠える駄犬ですね、その威勢がどこまで続くかはっきりと見させて貰いますよ。」
前世から俺は自分のことより、周りの人のことで怒る性格だ、今回もリリアとロロアが辛い目に遭っているのがいたたまれなくなってしまい、俺はここまで憤慨している。
俺は昔から怒ると感情は表に出さず、淡々とキレているので、口は悪くなりやすいが声を荒げたりはしないというのは変わってないようだ。
「では、そろそろ始めますが、準備はいいですか?」
「おう、いつでもこいよ。」
「俺も大丈夫です。」
「ドルフさんは槍、ディノールさんは剣を用いての戦いです、私としてはこれも講義の一貫ですので、相手の動きを見極め最適な対応をしてくれることを願います。」
「では、両者前へ!!」
「「「勝負、はじめ!!!」」」
合図が終わるやいなや、ドルフが槍で一閃突きを仕掛けてきた、魔法で強化された突きは魂の知覚をしていなければ反応すら出来ないほど早かった。
俺は合図中に魂の知覚ソウルパーセプションを展開していたおかげで間一髪避けることに成功。
俺はクルっと槍をかわしながら、その回転を活かしドルフに剣を振り下ろす。
ドルフは一閃突きに神経を注ぎすぎたのか、反応が一瞬遅れ、腕に剣がかすった。
「けっ、初撃を俺が喰らうとはな……あの一撃どうやって避けたんだ!!」
「ただ、攻撃が鈍いだけでは?」
「言うじゃねぇの、次はそう簡単にはいかねぇぞ。」
そういうとドルフは背中をのけぞらせてタメを作り、槍を構えた。
俺は引き続きソウルパーセプションを展開しつつ、剣に雷を纏わせる。
「エンチャントサンダー!!」
「風鬼の槍参の段……牙突!!」
ドルフの槍はとてつもなくしなりながら俺に向かってくる、しなりと突きのスピードにより残像が生まれ、上から向かってくる槍と下から向かってくる槍の2本が見える。
俺はあまりの速さと美技に圧倒され避けるのは間に合わないと判断し、立ち向かうことにした。
片方は残像だとたかを括り、急所目掛けて迫ってくる上の牙を弾こうとした。
剣と槍がぶつかろうとした瞬間、右足に槍が刺さっていた。
「ぐあぁあ!!」
どうやら、急所狙いはブラフで元々足を狙っていたようだ。
「急所目掛けてるのを見抜いたのはさすがだが、そもそも動きを止めちまえば槍は避けられねぇだろ?」
すかさずドルフは構えを変え、攻撃を仕掛けて来る。
「風鬼の槍弐の段……兜割り!!」
ドルフは高くジャンプし槍を構え縦回転に素早く回り出した、刃が回る先にはしっかりと俺の頭があった。
俺はギリギリのところで、剣を頭の上に構え放電することで難を逃れた。
放電が功を奏し、長い槍を持っていたドルフは着地と同時に痺れていた。
「ソウルバインド!!」
俺はソウルバインドでドルフの動きをさらに止めつつ、攻撃を仕掛けようとする時、ドルフの魂に違和感を感じたがチャンスを逃すまいと畳み掛ける。
まずは距離を詰めるまでの牽制として遠距離魔法を唱える。
「フォースフルサンダーアロー!!」
黒い稲妻が走り、放物線を描きドルフに目掛けて魔法の矢が降り注ぐ。
「ぐ、ぐがぅあああ!!」
ドルフの魔導人形一体が身代わりとなり砕け散った。
その間に俺は剣を構え溢れ出るインスピレーションのまま、ドルフと自分との間の空間を2回斬るモーションをした。
「ライトニングマーダー!!」
俺の剣が斬った残像が稲妻となりクロスしたまま、ドルフ目掛けて飛んでいく。
「ま、まて動けな……ぐああああ。」
「そこまで!!勝負あり!!」
「「勝者ディノール!!」」
「きゃーー!!やったわねディノール!!」
セリーアがとてつもなくはしゃいでいた。
終わってみると、魔導人形2体を残し完全勝利を収めるここととなっていた。
俺は新技ライトニングマーダーも編み出すことに成功したが、技の反動でその場に倒れ込んでしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます