第28話体術の講義
休憩が終わり、ネルファが修練場に戻ってきたので次の講義が始まろうとしていた。
休憩中はドルフが周りを睨みつけ続けていた、俺はロロアとリリアに話しかけたかったが、2人は席を外しどこかに行っていたようなので話せなかった。
「はい、次の講義を始める前に1人の教授を紹介しておきます、これから体術や武具の扱いはこの方に教えて頂きますのでしっかり挨拶するように。」
ネルファそういうと、屈強な体に傷だらけの大男が出てきて挨拶を始めた。
「よし、紹介に預かったグラントだ!!お前らのことをビシバシ鍛えて魔法なんていらねーってくらい強くしてやるから覚悟と期待しておけよな!!」
「グラント教授、さすがに魔法担当の私の前でそれは失礼かと……。」
「ネルファちゃん冗談だぜ?じょ、う、だ、ん。ガハハ」
「生徒の前でネルファちゃんもやめてくだい!!」
あの無表情で淡々としていたネルファがなかなかに手玉に取られている様子を見て俺は笑いを堪えきれなかった。
それにつられて周りも笑いが吹き出してしまい、ネルファが赤面していた。
「まっ!ネルファちゃんも可愛いとこあるって分かってもらうのはここまでにしておいてだ、体術の講義を始めるぞ?」
「「はい!!」」
グラントはいきなり真剣な面持ちになり、それにつられいつもはバラバラな俺達もドルフを除いてだが、揃って返事をしていた。
何やらグラントは人心掌握の才があるようにも感じてしまった。
その後、体術の授業は進み始め、最初はグラントと1VS1の状況で実力を測られることになった。
だが、誰もが為す術なくコテンパンにやられてしまった。
「ん〜、今のお前らじゃこんなもんだな……ドルフ、ディノール、セリーアは体術とよべる技術は多少あるが、他はてんでダメだ。」
「よしっ、次は全員で俺にかかってこい!!もし、一撃でも綺麗に決まれば、褒美としてみんなに美味いもんを学食の料理長に頼んでやる。」
そう言われると、少しみんなの目の色が代わり一斉に畳み掛ける。
先陣はドルフがグラントの顔面目掛けて殴り掛かる、そこに合わせて俺が足元に滑り込んで蹴りを入れようとしたが、ドルフの攻撃を避けたと同時にアイアンクローで俺目掛けて叩きつけ2人ダウン、凛とセリーアが続こうとしていたが、その光景を見て二の足を踏む、ロロアとリリアは呆然としてしまっていた。
「あーやめだやめ、戦意喪失早すぎるぞ特にそこの姉妹はもっとみんなに合わせる努力をしなさい、凛とセリーアはなにか仕掛けるならもっと間髪入れずに来ること、倒れた2人は直線的すぎる……とまぁ俺は強いから講義を受け続ければ体術だけでも割と戦えるようになると思うぞ。」
「んじゃ、今回はここまでだ!!今日の講義はこれで全部だって聞いてるから各々体の疲れを取るようにな!!」
初日の講義が終わり、みんな自分の部屋に戻ったり、学食に行って食事を取ったりして放課後を過ごすことになった。
俺はセリーアと凛に肩を借りて学食に行くことにしたのだが、先程のダメージのせいか食欲がなく、凛とセリーアの食事を眺めるだけになった。
「ねえ、ディノールはなんでドルフにあんな言い寄り方したの?本当に嫌がらせがあったの?」
「あ、うん、それは凛が詳しいよ。」
「そうさのぉ、廊下の端でいじめのようなことをはたらいていたのを見かけて、妾がこやつに話したらこやつめ正面から行きおってあの始末よのぉ。」
「あらら、少し私にも話してくれれば助太刀したのに……。」
「ごめん、頭がカーッとなってつい……。」
「でも、決闘で勝てば何とかなるよ!!」
「そう単純だといいけどねぇ、それにドルフの奴なかなかあれで強いわよ。」
「それは妾も同感だのぉ、強さはお主らの方が上だとは思うが、勝っただけで弱いものイジメが止まるかどうかはわからんのぉ。」
「そういうもんかなぁ、とりあえずやるからには全力で勝ちに行くよ!!」
「私もスカッとしたいから応援してるわ!!」
「妾も話のネタになるくらいには期待しておるからのぉ。」
「ありがとうふたりとも!!」
こうして、食事を終えた俺たちはそれぞれ自室に戻ることにした。
その途中ロロアが珍しく話しかけてきたのだった。
「ディノールくん、今いいかしら。」
「あ、ロロアさん?大丈夫ですよ、俺も話したいことありましたし。」
「ドルフの事なんだけど、止めようとしてくれてありがと、リリアが怯えちゃって部屋から講義以外は出たくないって言ってるくらいなのよ。」
「そんなに酷い状況だったんですね……俺も昔色々あったから気持ちはわかります。」
「昔?まだ5歳よね……??」
「あ、あぁこっちの話ですから気にしないでください、とにかく協力は惜しみませんから何かあればすぐ教えてください!!」
「わかったわ、ありがとう!!じゃあまた。」
「はい、また!!」
何を隠そう、俺は昔というか転生前に不登校を経験している、家族からの理解も得られず自分の殻に閉じこもった時期もあったが、ネットの進化で趣味がある程度仕事に出来たおかけで暮らせていたのだ。
ネットには色んな人がいて、理解を初めて示してくれた人にはどんなに救われたかわからない。
だから俺はいじめなんかも許せるわけが無い、俺はいじめを受けていた訳ではないが、辛さに理解が何も示されない辛さは知っている。
今は転生して、家族も最高の家族で凛もいて暖かい環境で育ったからまともにみんなと話せてるんだよなぁ。
そんなことを考えながら、俺は自室に戻りシャワーを浴びで自分の時間を過ごすのだった。
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