王立学院編

第27話入学、そして初の魔法講義

自室にて休養をとること数時間後

俺たち合格者6人は学院内にあるホールに招集され、入学説明を受けることとなった。


順位の順番で横並びの状態で用意された席に全員が着席し、説明者の到着を待っていると案の定ドルフが話しかけてきた。


「なあチビ、お前そんなに小せぇのに学院に入って何するんだ??」


「お、俺ですか?色々ありますけど、解呪の研究とかですかね。」


「なんだ、誰か身内で呪われてるのか?」


「いえ、俺自身がです……。」


「はぁ!?どんな呪いなんだ?」


「体の痺れくらいでそこまで困ってないんですけど、かけてきた相手が相手なので早めに解きたいなと……。」


「そんな状態で試験受けてたのかよ……だからとはいえ俺の勝ちは揺るがねぇ。」


「そ、そうですね、結果俺は4位でしたし、これから修練して挽回しますよ!!」


「言うようになってきたな!?最初は、ただなよっちいガキかと思ってたけど、試験見る限り見所ありそうだし子分にしてやろうか?」


「そ、それは………。」


その時ホールの扉が開き、あの無口な女性試験官が合格者の前まで来て話を始めた。


「みなさん揃っていますね、試験改めてお疲れ様です。」

「晴れてあなたたち6名はこの名誉ある王立学院に入学が決定した訳ですが、問題行動や規則違反が目立つ生徒は、除籍処分とされることもありますのでご留意を。」


「そして、申し遅れましたが、試験官兼王立学院の教授のひとり、ネルファと申します、これからあなた達の担当教授になるのでそちらも併せてよろしくお願いします。」


一通りネルファ教授が話し終えたところで、ドルフが質問を投げつける。


「で、教授!!この6人でいつも講義なりを受けることになるってことっすか?」


「ドルフ君少し態度を改めましょうか……まあ、それは後として講義に関しては、基礎講義はこの6人で受けていただきますが、放課後の活動に関してはもちろん自由ですし、今自室として使っている部屋があなた方の寮にそのままなります。」


その後も説明は色々と続き、どうやらこの学院では2年間基礎講義というものを受けるのが原則らしく、飛び級を認められると例外的な扱いを受けることがあるとのこと、そして、講義は『魔法、武具の扱い、精霊術、体術、敷地外講義』が基本となるが、今期合格者には精霊術士志望がいないので割合はかなり変わるようだ。


その他にも説明はあったが、今すぐ必要そうな情報はなかったので、追々確認することにするのだった。



「では、以上で説明を終わりとし、この後ささやかながら宴会の席を設けてありますので、30分後にこの部屋に再集合をお願いします。」


そして、半ば強制の宴会はぎこちなく進み、俺は基本的にセリーアと凛と過ごし、ロロアとリリアは常に一緒に、ドルフは少し暇そうに食事を済ませて自室に戻り皆別々に一夜を明かした。




翌日、また大きなノックの音で目が覚めた。


「もし、起きておるかのぉ?」


「あれ?今回は凛だったか、どうぞ!!」


「失礼する……。」


「お主の耳にちょっと入れておきたい話があってのぉ。」


「なにさ改まって?」


「妾はどうでもよいのだが、お主が気にすると思っての……ロロアとリリアがおるであろ?」


「あの二人が何か?」


「どうやらドルフがいらんことを2人にしておるようでな。」


「いらないことって具体的になんなの?」


「ふぅむ、2人に対して嫌がらせのようなもので、妾が見聞きしたのはラッキーで合格した、俺が鍛えてやるから俺の攻撃避けてみろと小突いたりだのぉ。」


「それで!?2人は無事なの?」


「あー、それなら妾が咳払いひとつしたら素知らぬふりでドルフの奴め消えよったわ。」


「なんだよそれ、あからさまな弱いものイジメじゃないか!!」


「そういうことだのぉ、だが妾も面倒事に首を突っ込む気は無いし、お主が止めたいのなら証拠を集めるなりして頑張るんだのぉ。」


「わかった……こんな話聞いちゃったからには2人は俺が助けてみせる。」

「凛、話を聞かせてくれてありがとう。」


「だが、まずは授業を受けなくてはいけぬから教室に行くとするかのぉ。」


「それもそうだね、行こうか。」


俺と凛はまもなく始業の時間になることもあり準備を整え、2人で教室に向かうのだった。



教室には既に他のメンバーが揃っており、教授を待っているようだった。俺は先程の話が、どうにも気になってしまいドルフに詰寄る。


「ねぇ、ドルフさん……。」


「あ〜?」


「ロロアさんとリリアちゃんにしてることやめてくれませんか?」


「なんだそりゃ!?俺があの二人に何したってんだよ、いきなり人を悪者みてぇによ〜。」


「しらばっくれないでくださいよ!!2人に行き過ぎた嫌がらせしてますよね?」


「へっ、証拠もなしに俺を罪人に仕立てあげようってか??」

「俺はちっとはお前のことを認めようと思ってたがヤメだ、お前は俺が直々に潰してやる。」


「潰すってどういうことですか!?」


「そのまんまだよ、どっちが上か白黒ハッキリさせるんだよ!!」


「あーそうですか、そこまで言われたら俺だって引き下がったりしませんよ、然るべき場所で決闘でもなんでも受けてたちますよ!!」


「珍しく鼻息荒くして感情剥き出しじゃねぇか、いいぜぇ決闘だ。」


ガチャ


「コホンッ!!初日からドルフさんディノールさん、教室から追い出されたいですか?」


ネルファ教授が入室早々、俺とドルフを一瞥し言い放った。


「すみません、以後気をつけます。」


「俺はなんも悪くないっすよ、言いがかりをつけられたんで反論してただけっす。」


「ディノールさん席に着きなさい、ドルフさん今回だけ発言を許しますので説明を。」


「説明も何も俺にでっち上げの罪で詰め寄ってきたんで、どっちが上かハッキリさせるために決闘をしようってことになったんすよ。」


「そうでしたか、確か2人は試験で直接対戦してませんでしたし、試験結果だけでは推し量り切れない部分もありますから、決闘は認めます。」


「だとよチビ。」


「具体的な日取りは追って連絡しますので、ここからは授業に移りますが、ディノールさんは後で職員室に来てください。」


「分かりました……。」


証拠もなしに感情任せに詰め寄ってしまった今回の話はどうやら失策だったようだ。

とりあえず、決闘に勝ってドルフにいじめを辞めさせる足がかりにはなったと願うばかりだ。



そして授業が始まるかと思いきや、全員で修練場に移動することになった。

どうやらいきなり屋外で授業ということらしく、基礎魔法をより強く発動するための魔素のコントロールを学ぶようだ。


「では、みなさん自分の1番得意な属性の基礎魔法でいいので順番に的に向かって撃ってください。」

「では、試験順位6位リリアさんから最後は1位の凛さんになるように並んで順番に1人ずつ得意属性を申告してからお願いします。」


「リリアです……か、風魔法が……1番得意です。」


「では、始めてください。」


「ウィンドカッター!!」


リリアが控えめに叫ぶと砂埃が巻き上がると共に、的が切り傷のようにえぐれた。


「結構です、では次。」


「ロロア、火が得意です。」


「では、どうぞ。」


「ファイヤーボール」


ロロアがそう唱えると火の玉が手のひらの前に発現し、周囲が少し暖かくなったように感じた次の瞬間、射出された火の玉によって、的が燃え上がった。


「いいでしょう、では次、時間がおしてるので、ここからは私の返事を待たずに魔法を行使してください。」


「ディノール、得意なのは雷です。」


「サンダー!!」


小さな雷鳴が響き的が真っ二つに割れ落ちた。


「次。」


「ドルフ、得意属性は風。」


「格の違いを見せてやるぜ、ウィンドカッター!!」


リリアの時同様、砂埃が巻き起こった次の瞬間的は2つに綺麗に割れ、後ろの壁にも少し傷が入った。


「次。」


「セリーア、得意属性は風と水です。」


「ウォーターボール!!」


詠唱と共にボコボコと水が球体となり発現し、射出されると、的は支柱ごと吹き飛び、粉々になってしまった。


「次。」


「凛、得意属性は闇だのぉ。」


「闇ですか、他の属性は使えますか?」


「風なら少々使えるのぉ。」


「ではそちらでお願いします。」


「ウィンドカッター。」


凛が小さく呟くと砂埃などはドルフ、リリアと同様に巻き起こったが、的が4つに綺麗に割れていた。


「いいでしょう、いくつか気になる点はありますが、皆さんの現状はだいたい掴めたので、次回はこの威力を底上げしていくための講義とします、次回の魔法講義もここに集まるように。」


「では、次の体術講義まで休憩してください。」



こうして初めての学院での授業は終わりを迎え、各々自由に休憩をするのだった。

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