燃えない人間
星咲 紗和(ほしざき さわ)
本編
私は、これまで何かに熱狂的になったことがありません。周りの人々が何かに夢中になり、熱い思いを抱いて応援している姿を見ると、まるで違う世界にいるような気分になります。例えば、スポーツの試合でみんなが一斉に歓声を上げているとき、私はその熱狂の渦に入り込むことができず、どこか冷めた目で見てしまうのです。
感動したり、面白いと感じたりすることは確かにあります。しかし、その感情は常に一定の距離を保ったままです。心の中で「これは素晴らしい」と感じても、それを超えて興奮することはないのです。周囲が興奮しているとき、私の心は静かであり、そのギャップに戸惑うこともありました。
人々が一丸となって応援している場面では、私はつい違うことが気になってしまいます。熱い思いを共有することができず、周りからは冷たい人だと思われることも少なくありませんでした。応援する気持ちが湧かない自分に対して、どこか後ろめたさを感じることもありましたが、それが私の「普通」なのです。
焦ったり、イライラしたりすることはありますが、それが他人を応援するために使われることはほとんどありません。私の感情は、自分の中で完結してしまうことが多いのです。人々が燃え上がるような情熱を持っているとき、私は冷静で、冷めたままです。
それでも、今ではこれが私の個性だと感じています。誰もが同じように感じる必要はなく、私には私の感情の持ち方があるのだと理解するようになりました。熱狂的な人たちを見ると羨ましいと思うこともありますが、私は私らしく、冷静な視点を持ち続けることに誇りを感じています。
人々が何かに燃え上がる中で、冷めた視点を持ち続けることも一つの生き方です。他人と同じ感情を持つことができなくても、それが悪いことだとは思いません。むしろ、自分の個性として受け入れ、自分らしく生きることが大切だと感じています。
「燃えない人間」――それが私の姿です。しかし、その冷静さこそが、私の中にある価値なのだと信じています。
燃えない人間 星咲 紗和(ほしざき さわ) @bosanezaki92
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます