微熱恋

やと

第1話

僕は恋愛体質だ、これまで苦しい程に恋をしてそれが実現する事はなかったどれも

「いい人ではあるけど、付き合うとかではないかな」

という所謂いい人止まりな訳だ。いつか恋が愛に変わる日が来るのではとそうなればなにか変わるのではないかと言う願望が頭、心の中で渦巻く。そんな僕はいかれてるのだろうか。

何時ぞやの十代の学生生活で告白しては振られてを繰り返す。僕は優しくされたり、何かをしてもらうと直ぐにこの人いいなって思ってしまう。でも実は一時はそう思っても人との距離感は簡単に埋まるものではないがそこが埋まると一度心を許すとこれまた簡単に嫌いになれない気難しい性格をしてるせいで恋がより一層進まなく尾を引いてしまう。そんな十代を過ごして大学二年生あいかわず色恋とは遠い。

「付き合ってください」

「ごめんなさい」


「はー」

「また振られたのか」

笑いながら昼ご飯を食べてる高校から一緒の大学に進学した太一にまた馬鹿にされる。

「もう諦めろよ」

「だって今回は大丈夫だと思ったんだもん」

「そうやって何回振られれば気が済むんだよ」

もう何度聞いたか分からない受け答えで今回も同級生に振られた。

「だって彼女欲しいじゃん」

「欲しいって言っても相手がいなきゃ虚しいだけだぞ」

「分かってるよ」

「授業行こうぜ」

振られて家に帰るのにはもう慣れたがやはり虚しいのは変わらない、ソファーに寝そべりながらこのさいマッチングアプリでも始めてみようかと思いスマホをいじり始める。

今は色んなアプリがあるんだなと、なにをやればいいのか分からず適当に一番上に出てきてるアプリを選んでインストールしてみる。

慣れない自撮りや自己紹介文など始めるまでで疲れる、何でも簡単に行く訳ではないのだなと実感する。ただ興味本位とは言え以外とこう言うのも馬鹿には出来ないと進めていく。色々と見ていくと沢山の人が使ってるのが見える、見れば見るほどイケメンな男の人や綺麗で可愛い人が沢山いる以外とこんな人も恋人が居ないんだなと思う、しばらく詮索して画面を暗くする。

「疲れたー」

「さっきの教授の授業内容難しいからな」

「そう言えば最近マッチングアプリ始めたんよな」

「まじで?」

「まあ興味本位てきな」

「まあ、いいんじゃない。今は出会い系も恋人を作る立派なツールになるから」

「だよな」

「太一は彼女いるんだよね?」

「まあ、ぼちぼちだけど」

「ぼちぼちなんて羨ましいわ」

「彼女がいるだけが全てじゃないし恋人がいない時間も必要だぞ」

「彼女いなくてもう二十年経ちますけど」

そう言うと太一は黙ってしまった。太一を言い負かせた所で携帯に通知が入った。見てみると例のマッチングアプリからの通知だった。どうせインストールした事での運営からだろうと思ったらどうやらそうじゃないらしい。

「初めまして」

「なあ太一なんか連絡来たんだけどどうすればいい?」

「どれ」

太一にスマホを渡すと直ぐに帰ってきた

「まあ適当に返事しとけばいいのよ」

「適当ってこっちは女の子と連絡した事すらないんだぞ」

「じゃあマッチングアプリとかやるなよ」

「それとこれとじゃ話し違くない?」

「違くない」

そうきっぱりと否定されてアプリを入れたのを後悔しながら簡単な挨拶を返した。

「高野さん大学生ですよね」

「そうだよ」

「M大ですか?」

最近アプリでやりとりするようになった子と話すことが増えた。趣味が好きなアニメが同じなことやサッカーが好きだったりと共通点が同じな事で話題が尽きることはなかったのだが急に身近な話題になったのでびっくりした

「そうだけど、なんで分かったの?」

「だって同じ大学だから」

自分の情報を握られてると思うと恐怖が襲った。

「そうなんだ」

「うん」

恐怖を感じながらそれを悟られないように返信していく。

「今度学食でお昼食べませんか?」

急な展開について行けなくなるがこれはひょっとしたらとも思えてくる。

「良いですよ」

「明日会えますか?」

「分かりました」

「じゃあ食堂から離れた窓際の席で待ってます」

そこからは時間も味方してお昼の時間が同じことになったことで始めて話すにしては大学になるというなんとも言えない始めましてになった。

次の日1限からの授業だったのだが全く頭に入らなかった、太一もいなかったのでどんな会話をすればいいのか分からないままお昼の時間になってしまった。

時間になったので食堂に行くともうお昼を少し過ぎていたのであまり人はいなかったので指定の場所に座っている一人の女性が直ぐに目に入った。

「あの」

「はい?」

その人はその華奢な体のどこに入るのか分からないと思うくらいに大盛りのラーメンとカレーライスがテーブルの上に乗っていてカレーを口いっぱいに放り込んで僕の方を見ていた。

「もしかして高野さんですか?」

「そうです、座っていいですか?」

「はい、大丈夫です」

「高野はそれだけで足りるんですか?」

それだけって言われても普通盛りのラーメンで普通なら足りるんだが見てみると彼女はカレーもラーメンもどちらも大盛りになっている。

「うん」

そう言うと少し落ち込んだ表情をしてみせた

「やっぱり大食いの女子は駄目ですか?」

「いや、沢山美味しそうに食べてるのは可愛いと思うよ」

「そっか」

さっきの落ち込んだ表情が消えたようにまたばくばくと口に食べ物を運ぶ

「そう言えばなんて呼べばいい?」

「アカウントと同じで霞で大丈夫だよ」

「そっか」

「逆になんて呼べばいい?」

「高野でいいよ」

「なんかそれ距離感感じるよ」

「じゃあ勇気で」

「分かった」

それからお互いの趣味であるスポーツの話題だったりアニメの話題で時間が過ぎるのが惜しいくらいだった。

「そう言えば最近映画化されたの見た?」

「まだ見てないんだよね」

「私も見てないし次の土曜日に映画行かない?」

「いいよ」

「じゃあ私この後授業あるから行くね」

「うん」

初めて話すにしてはじょうできだったのではないのだろうか。

なんだかんだあって土曜日にいたるまで時間はかかんなかった

「時間まで十分前、少し早くつきすぎたかな」

こんな時の時間まで把握できてないので早すぎたかどうかも分からない

「まだ時間まであるのに早いね」

いつのまにか後ろに霞が立っていた。

「早いって言っても五分くらいだよ」

「そう言って、十分前から落ち着きない感じだったじゃん」

そう言ってケラケラと笑う姿がなんとも可愛らしいと思い少し見入ってしまう

「私の顔になんか付いてる?」

「いや、じゃあ行こうか」

「了解」

映画館まで映画の話題で目的地まで着くまで時間は早く感じた。

券売機でチケットを買おうとしたらこれにしない?と霞が選ぼうとしているのはカップルシートだった。

「いやいや普通の席にしようよ」

「えー、いやこれがいい」

なんとも我が儘な、

「まあいいよ」

まあこれも経験だと思い渋々承諾した。

席に着くと普段の席とは違ってふかふかで座り心地がいい

「なんかカップルみたいだね」

「そうだね」

周りからみたら僕らはデートをしているカップルに見えるのだろうか

映画が初まってからは映画に熱中して隣に女性がいる事を忘れせるほどだった

終わってからも二人の熱が冷めることはなくカフェに入ってさっき見た映画の話題で持ち切りだった

「さっきのシーン原作でもなかったから出てきた時声出るところだったよ」

「そうだね、僕も熱くなったよ」

「やっぱりオタクだって隠さず話せるのは楽だね」

「確かに僕もそうだわ」

「じゃあこの先も一緒に秋葉とか行こうよ」

「いいね、じゃあ二人で行こう」

ちゃっかり二人で行く約束まで付けることができた。

それからは二人で学校や色んな所で過ごす時間が増えた。夏には花火大会にも行って冬にはイルミネーションに行こうと約束をした直後霞は僕の前から消えた。

学校に行って探してもいないし霞の友達に聞いてみても知らないと言われて何ならどこにいるか聞き返してくる程だった、連絡してみても返さないし既読もつかない。

そんな時に時期は外れの夏風邪をこじらせて大学病院に行くことになった。

診断はただの風邪だった、受付に行って会計を済ませて病院を出ようとした時点滴スタンドを持って辛そうにロビーを歩いてる一人の女の子を見つけた、普段だったらそんなになの気にしない所だがその女の子は霞だった。

「霞?」

そう気付いた時からその場から離れずにはいられなかった

「勇気」

「霞なにやってんだよ」

「ちょっと車に轢かれちゃって」

「大丈夫なのかよ」

「うん、少し派手にやられちゃっただけ」

「だったら連絡ぐらいしろよ」

「ごめん」

「じゃあ病室教えて」

「え?」

「明日から時間ある時必ず行くから」

少しの間が空いた、僕はこの先この空いた間の中で気付いておくべきだったと後悔することになる。

「分かった」

病室を教えてもらって病院を出ようとしたら霞に呼び止められた

「そう言えば勇気なんで病院にいるの?」

「ただの夏風邪」

そう言うとケラケラといつものように笑ったのをみて安心して病院を後にした。

それからというもの学校終わりや休みの日には必ず病院に行った。

普段どうりにアニメや漫画の話しなど沢山話した

「この漫画オススメだから読んでみて」

「分かった」

このように漫画の貸し借りなど時間があれば病院に行き看護師さんや主治医の先生とも仲良くなった。

そんな時間がずっと続けばいいと思っていた、だが神は残酷だった。

いつものように霞の病室に行って借りた漫画を返すのと霞が退院も近いと聞いていたのでケーキを持って病室に入った。そこには霞の姿はなくベットも霞の持ち物もなにもなかった、まるで最初からいなかったかのように静かだった。

「なんで?」

「高野君」

僕の名前を読んだのは仲良くなった看護師さんだった

「霞は?」

「残念ですが、亡くなりました」

まるで世界の時間から僕だけが残されたようだった。

「なんで、だってもう退院できるって」

「それは霞さんが高野君に嘘をついていたの。霞さんは思い心臓病だったの、高野君が来る時は痛みを和らげる薬を飲んで」

「そんな事故って言ってたのに」

「霞さんから預かってたものを渡すね」

看護師さんは持っていた手紙を僕に渡した。

そこには霞の字で文字が印されていた。

「勇気に会う大分前に余命一年だと先生から言われた。最初は格好いいって思って話しかける事も緊張して出来なかった。でも段々と授業で隣に座ったりしてなんとか勇気と話したいと思って頑張ったんだよ。勇気は知らなかったよね。でも余命を告げられた時に残りの時間で好きなことをしようと思っていた時に勇気がマッチングアプリを始めたって聞いて私もアプリを入れたのそこから仲良くなって本当に楽しかった、イルミネーション行けなくてごめんね。彼氏が出来た時に行きたいと思っていた学食や水族館、映画本当に楽しかった嘘をついてごめんなさい。本当はもっと生きて勇気に思っていた恋がいつか愛に変わる日が過ごしたかったな」

手紙を読んで涙が止まらなかったあんなにも一緒にいたのになにも気付けなかったそんな自分が情けない。

もうどうでもいいと自分だけが止まった世界に僕は微熱を感じた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

微熱恋 やと @yato225

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画