あとがき(ネタバレを含みます)

 豊満熟魔女デリルと豊かな仲間たちシリーズ第二弾、復活の魔王と隻眼の魔導士いかがでしたでしょうか?

 

 ここからは本編のネタバレが含まれますので、まだ読んでない人は先に本編を読んで下さいね。なお、第一弾を読まなくても分かるように書いたつもりですが、読めばさらに世界観が分かると思います。


 ついでにいえばいくつか書いた短編のアナザーストーリーも読んでから本編を読んで頂くと一層コクと深みが増すと思います(煮込み料理か!)。

 

 私の場合、完成するまでどんな物語になるのか作者本人も分からないという小説家にあるまじき自由奔放なスタイルで執筆をしています。

 

 なぜそういう事になるのか?

 

 一、プロットがざっくりしすぎている

 

 二、途中でプロットから脱線し、着地点が予定地から離れてしまう

 

 三、構想してすぐに書かないから途中で気が変わってしまう

 

 ざっくり言えばこんなところだと思います。

 

 今回の作品の方向性のズレは如何ほどの物か。初期のプロットから確認してみましょう。Nolaというアプリに残っていた物を参照いたしました。

 

 テーマ:人間同士で争う事の不毛さ。魔物が悪と決めつけているが果たして人間が正しいと言い切れるのか? そんな事を考えさせる作品にしたい

 

 どうでしょう。この作品を読み終えた方はきっと別の作品のテーマと間違えているんだと思うんじゃないでしょうか? 私も目を疑いました。

 

 この作品の終着点:再び魔王を封印し、世界に平和を取り戻す。王都と帝都が同盟を結び、お互いを高め合う関係性を築く

 

 王都って出てきた? 同盟も何もほぼ帝都で完結してるし。ただ、再び魔王を封印し、世界に平和を取り戻すってのはちゃんと達成できているな。つか、そこだけじゃん!

 

 登場人物の設定にもかなりの齟齬そごがありました。

 アストラ 年齢:五十五歳 身長:百六十五cm 体重:六十kg

 性格:他人に利用される事を何よりも嫌がる。期待の成果を上げるどころか、最悪の状況を作り出して利用しようとした相手を苦しめようとする。

 個性:隻眼、銀髪、冷酷、破滅願望を持つ。人間が滅びればよいと思っている。

 特技:相手の一手先を読む

 能力・スキル:薬の調合、魔法の創出

 生い立ち:デリルと同じ師匠の元で修業する兄弟子だった。常にデリルよりも成績は良かったが師匠はアストラではなくデリルに奥義を伝授する。それをしったアストラは師を殺して姿を消す。

 背景:デリルが討伐し、封印を施した魔王を解き放ち、再び世界を混沌に導こうとしている。

 

 うわー、アストラってこんな悪い奴だったのか! なんか全然違うキャラになっちゃったなぁ。最初はデリルを利用して魔王を復活させ、この世を混乱に導く予定だったんだな。

 

 初期設定の段階で設定崩壊しているのだから、そりゃ予定通りの着地点に到達する訳が無い。むしろよく魔王を封印できたものだ。

 

 封魔ふうま赤石せきせきという便利グッズは、よくある青から赤に変化するタイプの分かりやすいアイテムで、最初は魔王が登場してすぐにアストラが魔王を呼んで封印してしまう予定でした。

 

 この小説の特徴の一つが、代名詞の多用です。例えば王都や帝都。本来であれば王都○○、帝都××と街の名前を設定すると思います。私がかなりネーミングが苦手な事もありますが、王都、帝都、聖都とこれだけで三つも街の名前を決めなきゃいけないなんて手間がかかり過ぎです。

 

 という訳で魔王にさえ名前を付けずに前作は乗り切ってしまいました。今回、初めて魔王の名前が解き明かされるのですが、はっきり言って思い付きです。一応検索エンジンに引っ掛からないかチェックはしましたが、似たような名前が出てきてヒヤッとしました。

 

 本来なら「おい、魔王」「何だ、人間?」で魔王が封印される予定でしたが、代名詞では封魔の赤石は作動しないという設定に変えてしまいました。

 

 それも思い付きだったので、その先の展開が気に入らなければ当初の予定通りすぐに封印されるパターンに戻したかもしれません。

 

 もっとさかのぼると、最初の予定では黒幕はキャスパルでした。書いている途中で、こいつが黒幕だとひねりが無いなと思い始め、実はキャスパルは野心的なだけの政治家で、黒幕は別の人物という構想が浮かんで来ました。

 

 これを実現するには結構修正箇所が必要でした。ミゲイルを救出するのはヘーゼルなのにヘーゼルが黒幕というのはちょっと強引な気もしましたが、キャスパルが黒幕のパターンよりも面白くなったと今は思っています。

 

 今回、初めて登場人物を殺してしまいました。しかも皇帝に慕われている大将軍という中心的役割の人物です。これもどう作用するか分からないまま、話の流れでそうなったのですが、ミゲイルの教えを受け継いだ者たちが最終話で絆を深め、友情を確かめ合うという、まるで最初から構想していたかのようによく出来た結末になりました(江良双の十八番おはこ、自画自賛)。

 

 実はこの物語、割と前半で破綻していました。公開する前に気付いたので事なきを得たのですが、その影響でかなり完成が遅れました。割と勢いを大事にする書き手なので後で読み返して矛盾に気付くなんて事はしょっちゅうあります。

 

 どんなに気を付けても自分だけが分かっている情報を既成事実と捉えてどんどん話を進めてしまう事もあります。もしも説明不足な部分を発見されましたらぜひDMやコメント欄で教えて下さい。可及的速やかに善処致します(腐れ官僚的物言い)。

 

 これで全年齢版デリルシリーズは二作品となりました。せっかくなので三部作にしたいところですが、今のところまだ何の計画もありません。

 

 某少年漫画誌のようにバトルがどんどん派手になっていく(インフレしていく)のはシリーズ物のSaGaサガだと思いますが、出来るだけこれ以上無茶苦茶なバトルシーンにならないよう気を付けたいと思います。

 

 作中でちょっと分かりにくいんじゃないかと思いながらも書いた部分として、一つだけ出典を明かしておこうと思います。

 

 第4章第4話 見当違い より

 

「おい……お前、これから何しに行くと思ってるんだ?」


 アストラが深いため息を吐く。「俺たちがやる事は魔王の封印でしょうが!」

 

 興奮のあまりおかしな言い回しになるアストラ。それを聞いてデリルは悲しそうな顔をしてその場を立ち去ろうとする。

 

「おい! どこに行くんだ、デリル?」


 そのまま店の奥に引っ込んでしまいそうなデリルを呼び止めるエリザ。

 

 

 

 ちょっとふざけ過ぎかな? とは思ったのですが書いちゃいました。

 これは名作ドラマ「北の国から」のワンシーンをそのままパ……オマージュしたものです。

 閉店ギリギリにラーメン屋に来た五郎たちを迷惑そうに接客する店員。閉店時間を過ぎて早く帰りたい店員が話の腰を折って会計を急かし、さっさと丼を片付け始める。

 五郎が立ち上がり、


「子どもがまだ食ってる途中でしょうが!」


 と店員に怒鳴る。店員は黙ってそのまま店の奥に引っ込む。

 

 このシーンですね。割と有名なシーンなのでYouTubeでも見られます。

 

 なんでこんなシーンを入れたのかと言われると自分でもよく分かりませんが、何となくアストラの口調が五郎のこのシーンや金八先生みたいで、勝手に妄想が膨らんでぬるっと筆が滑った次第でございます。

 

 作品が完成した悦びで書かなくてもいい事をどんどん書いてしまいそうなのでこの辺であとがきを終えたいと思います。


 最後まで作品をご覧いただき誠にありがとうございました。これからも懲りずにどんどん書いていきますのでぜひこれからも応援よろしくお願いします。

 

 

 

 2024.12.29 自室にて 

 

 江良双

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