とある夕方
風薫る肌寒い夕方
何度も繰り返し往復した道を同じ歩幅で歩く夕方
何度も繰り返し往復した道を変調な歩幅で歩く夕方
ライコ「ねぇ、ズラム
私達って何のために何をしているんだろうね」
ズラム「んぁ?なんだよ今更
何か問題でもあるのか?」
ズラムが興味無さげに淡々と歩を進める。
ライコ「いやぁ、お姉ちゃんさ、もっとクリエイティブに生きたいなーって
このステージに来るといつも思うんだよね~」
ズラム「?…破壊と創造は紙一重って事か?」
ライコ「おいおいおい、弟くんさぁ…ちょっとお姉さんより大きくなったからって
調子乗ってんじゃないの?姉の威厳パンチ食らわすぞ」
ズラム「はいはい、姉さんが変わってないだけだろ
機械だからしょうがないか」
ライコ「は?アンタも機械じゃない。なんで成長してんのよ」
ライコがズラムの威厳パンチを浴びせながらも、ズラムは坦々と歩を進める。
ズラム「俺は姉さんより高性能だから…ぴーす」
ズドン!さらに重い威厳がズラムの体に負荷をかけるが、ズラムは耽々と歩を進める。
…
ライコ「エッチしたいなー」
ズラムは硬直した、足が。
ズラム「はっ!?いきなり何だよ!」
にやつきが張り付いた顔でライコがズラムの挙動をとらえる。
ライコ「え?さっきの話の続きでさ
クリエイティブと言えば子作りかな~って
弟君はどう?」
ズラム「はっ!?はぁ!?意味わかんないし!
どうって何だよ勝手にすればいいじゃん!!」
ライコ「え~、ひど~い
お姉ちゃんが何処の何者かも知らない人とクリエイティブしていいんだ」
ズラム「クリエイティブを隠語にするな!何で知らない他人前提なんだよ!」
ライコ「え~、だって~
知ってる男性って弟君しかいないし~
でももう、お姉ちゃん好き好き大好きだった弟君はいないようだし~
どうしようかな~って」
ズラムは完全に硬直していた、足が。
ズラム「…無理だよ、機械なんだから」
ライコ「え?女は産む機械って事!?
酷い!鬼畜!悪魔!ズラム!」
ズラム「はいはい古典構文乙」
ふぅ、と一息。
ズラムが足の感覚に意識を伸ばす。
ズラム「機械が子供作れるわけないでしょって話」
ライコ「ふへーん!子作りすると言っただけで子供を作るとは言っていませーん
行為の話をしてまーすぅ」
ズラム「ぐっ!殴りてぇー…」
ズラムは力を込めた拳を力なく振り払った。
そしてまた、淡々と道を歩いて行く。
ライコ「ねぇねぇ!私が機械だって言うなら試してみない?
セックス…してみない?」
にまにま顔で覗き込んでくるライコに、ズラムは肩を大げさに伸ばし視線を遮断する。
ズラム「う、うるさい!誰が機械なんかとするか!!」
ズラムは速足で、淡々と道を歩いて行く。
ライコ「あはは!やっぱかわいいねズラムは
お姉ちゃん安心しちゃった
最近冷たいから」
ズラム「そんなんだから冷たくするんだよ!」
その時、ライコがズラムに抱き着いた。
ライコ「そうだね、ズラムは温かいね…
ねぇ、ズラムって人間なんじゃないの?」
ズラム「は?俺は機械だ
そして姉さんも機械だ」
ズラムは抱き着くライコを見下ろし、諭すような声色で言った
ズラム「そして機械として決められた事を決められた様に遂行する、
そんな人間いる訳ないだろ」
ライコ「そうだねぇ、そんな人間はいないねぇ」
ライコは上目遣いが下手なのか、もしくは鋭い目つきを放っているのか
どちらかわからないが、ズラムは少し怯えを感じた。
ズラム「分かったなら離れろ」
ズラムはライコを無理やり引き剝がす。
ライコ「はいはーい、分かりましたよー
どこの馬の骨とも知らない雄とクリエイティブしますよーだ!」
ズラム「勝手にしろ
そんな奴がいるなら会ってみたいね俺も」
二人騒がしく歩調を合わせて帰った。
機械問答【短編SF小説】 HIkosiki with ふたつぅ。 @hutatu
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