優しさの奇跡

@zuttodaisuki




21世紀の話です。アメリカに住む高校二年生の女の子メアリーは、学校でも家庭でもその純粋な優しさで皆から愛されていました。彼女の笑顔は太陽のように明るく、周りの人々を自然と幸せにする力がありました。しかし、メアリーの優しさは誰かを助けるためならば自己犠牲も厭わないほど強いものでした。


ある日、メアリーは放課後の帰り道で傷ついた小鳥を見つけました。羽が折れて飛べなくなった小鳥を放っておけないと感じた彼女は、すぐに保護し、自分の家に連れて帰りました。彼女は夜遅くまで小鳥の世話をし、自分の手で作った小さな巣に小鳥を寝かせました。


「お願い、治って…」


メアリーはそっと祈るように願い、眠りにつきました。その夜、彼女は不思議な夢を見ました。夢の中で、メアリーは森の中を歩いていました。そこには幻想的な光景が広がり、キラキラと輝く花や宝石のように透き通った川がありました。そして、そこに一頭の美しいユニコーンが現れました。


「あなたの優しさがこの世界を救うのよ。」


ユニコーンは優しい声でそう言い残し、メアリーの前で消えていきました。メアリーはその夢の意味が分からず、目を覚ました時にはすべてが夢であったかのように感じました。



しかし、メアリーの体に異変が起こり始めたのはそれから数日後のことでした。彼女の髪は徐々に銀色に変わり、肌は透き通るようなに白くなっていきました。また、耳も微かにとがり始め、体に違和感を感じ始めました。


心配した彼女の友人や家族は、メアリーを病院に連れて行きましたが、医者は何も異常を発見できませんでした。それどころか、彼女の健康状態はむしろこれまで以上に良好であると診断されました。しかし、メアリーはその変化に恐怖を感じ、誰にも相談できずに悩み始めました。


変化は止まることなく進行し、ある日、メアリーは鏡の前で自分の姿が完全にユニコーンのような姿に変わっていることに気づきました。角が額から伸び、背中には美しい羽が生えていました。メアリーは驚きと恐怖を感じ、誰にもこの姿を見せるわけにはいかないと決心しました。




その日を境に、メアリーは学校に行けなくなり、自宅に引きこもるようになりました。家族も友達も彼女を心配しましたが、次第に彼女の存在が少しずつ記憶から薄れていくように感じ始めました。なぜなら、メアリーがユニコーンになるにつれて、彼女がこの世界から徐々に消えてしまう魔法がかかっていたのです。


メアリーは、自分が周りの人たちの記憶から消えていくのを感じながら、無力感に覆われました。彼女はただ、周りの人を幸せにしたかっただけなのに、その結果がこの孤独だとは思いもしませんでした。



しかし、たった一人メアリーのことを忘れなかった人がいました。それは彼女の彼氏であるジョージでした。ジョージは、メアリーが少しずつ変わっていく姿に最初は気づきませんでしたが彼女が学校に行かなくなり始めた時には、既に周りの友達や家族さえも彼女のことを話題にしなくなっていることに驚きました。


ジョージは、メアリーが何か深刻な問題を抱えていると思い、彼女の家を訪ねました。しかし、家族は彼女のことを話そうとせず、まるで存在しなかったかのように振る舞いました。



ある夜、ジョージはついにメアリーの家の庭で、ユニコーンの姿に変わったメアリーを発見しました。彼はその美しい姿に驚くと同時に、涙を流しながら彼女に駆け寄りました。


「メアリー…本当に君なのか?」


メアリーはジョージの姿を見て、久しぶりに人と話すことができる喜びと、自分の姿を見られたくない恐怖で、複雑な気持ちで彼を見つめました。


「ジョージ…私、こんな姿になってしまったの。」


彼女は悲しそうに話し始め、ユニコーンになってしまった経緯と、自分が消えていくことへの恐怖を打ち明けました。ジョージはそんなメアリーの話を黙って聞き、そして力強く言いました。


「僕は絶対に君を忘れない。何があっても、君を人間に戻す方法を見つけてみせる。」


その言葉にメアリーは胸が熱くなり、彼の優しさが自分を救おうとするその決意が、どれだけ心強いものかを感じました。


ジョージはインターネットで「ユニコーン」「魔法」「忘却」といったキーワードを検索し、彼女を助ける方法を探し始めました。




ジョージは、メアリーがユニコーンになった原因が、彼女の過剰な優しさにあることを見抜きました。そして、彼は真奈美にこう提案しました。


「メアリー、君はいつも周りの人のために自分を犠牲にしてきた。でも、今度は君が幸せになる番だ。僕が君を幸せにしてみせるから、少しでも心を開いてくれないか?」


ジョージはメアリーを思いやり、彼女を一生懸命に支えました。彼の存在は、メアリーにとって希望の光でした。彼女は少しずつ自分自身を許し、他人に甘えることを覚えていきました。


そしてある日、奇跡が起こりました。メアリーがジョージの腕の中で目を閉じていると、突然彼女の体が薄紫色の光に包まれ、その光が彼女の体を覆った瞬間、ユニコーンの姿が溶けていきました。光が消えた後、そこには元の姿に戻ったメアリーがいました。


「ジョージ…私戻れたよ…」


メアリーは涙を流し、ジョージに抱きつきました。ジョージもまた、涙をこらえながらメアリーをしっかりと抱きしめました。




それからというもの、メアリーは少しずつではありますが、再び学校に通い始めました。友達や家族も彼女のことを思い出し、彼女を迎え入れてくれました。


メアリーはもう、自分を犠牲にすることなく、人々を幸せにする方法を学びました。そして、彼女の優しさは今も変わらず、周りの人々に光をもたらし続けました。


しかし、メアリーはもう一つ大切なことを学びました。それは、自分自身を愛し、他人に助けを求めることができる強さを持つことです。そして、彼女はジョージと共に、人生の第二章を歩み始めました。


ある時、メアリーはふとあの夢のことを思い出しました。あの時のユニコーンの言葉の意味が、今でははっきりと分かります。メアリーの優しさが、彼女自身の世界を救い、そして彼女を本当の意味で幸せに導いたのです。


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