第3話
「考えてみろ。切腹しなかったら、最も苦しむ方法で俺が必ずお前を殺す。でもお前自ら切腹ならお前がコントロールできるから助かるかもしれない。どちらか、選べ」
俺は短刀を取り出して野崎の前に置いた。万が一、短刀で襲ってきたら先に銃を打つつもりだったが、野崎から攻撃するような気配はなかった。野崎は震える手で短刀を取り、鞘を抜いた。照明が刃に反射して怪しく光った。
「早くやれや」
耳元で叫んでやると野崎は服をたくり上げて担当の切っ先を腹に充てた。ただ野崎は叫ぶだけで一向に刺す気配がない。俺は野崎の短刀を握る手を包んでやり、一気に力を入れてたるんだ腹に刺してやった。柔らかい肉を一気に刺しこんでいくと、ぐちゅぐちゅと音が鳴り、切れ目からみるみる血があふれ出した。
「ああああああああああ」
「うるせえまだ刺しただけだろ」
俺は野崎の手を握ったまま、左から右へゆっくりと切っていく。牛コマ肉より切りやすいが時々内臓の何かがつっかえる感触がする。野崎の脂汗が首や顔について気持ちが悪かったが、気を抜くと切腹の軌道が曲がってしまうかもしれなかった。
「やめ、てくれあああああああああ」
腰の幅くらいに切ると短刀を抜いた。直線になった切れ目から血が溢れてくる。俺はゴム手袋をつけた。野崎は叫ぶ気力もなくなったのか、ただ震えるばかりだった。
「てめえの内臓が綺麗かどうか確かめてやる」
思い出す。バッタの頭を引きちぎったことを。
野崎の腹の切れ目に手を突っ込んでみると「ぐうううううう」と野崎が喉を鳴らした。口から血が垂れてきた。よく生きてるよ。まあバッタも首を引きちぎってもしばらく体が動いてたし、生物ってのはしぶといもんだよな。
適当に掴んで取り出すととにかく長いものが出てきた。たぶん腸だな。腸の全部取り出して肛門近くのところを引き裂くとうんこが出てきやがったんだよ。きたねえな。腹が立つから脂汗まみれの野崎の顔に塗ってやったよ。
もう野崎はひゅーひゅーと弱い口笛のような音しか出てなかったよ。胃、肝臓、すい臓、肺。そして心臓を取り出した頃にはもう動いてなかったな。とにかく血の臭いが充満してて叶わなかったぜ。
頭勝ち割って脳みそ見てみようかと思ったけど、面倒になって内臓をゴミ袋に入れてゴミに出したよ。野崎の死体はキャリーケースにいれて山に埋めた。五メートルくらい穴掘って埋めたから動物に掘られることはないだろうけどよ。台風とか地震で山が崩れたらどうなるかわからねえな。けどもういいのよ。野崎があんなに苦しんで死んだことだし満足したよ。
だから、お前ひとり追加したところでもうどうだっていいんだ。
解体本能 佐々井 サイジ @sasaisaiji
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