第13話 これってデートですか?

 俺たちが向かったのは海のある町だった。

 海の側の古いレストランで食事をした。

 幼馴染は貝の形の皿に盛りつけられたシーフードグラタンを美味しそうに食べた。

 俺はカニとホタテの入ったクリームコロッケだ。

 子供の頃に、親たちに連れられた入ったその店は窓ガラスが薄茶色だったり、銀の塩コショウ入れがあったり、昔はバーカウンターに使っていたであろう場所があったり全部が時代に取り残されたみたいだった。


「海を見に行くの?」


 食事をしながら幼馴染は俺に尋ねる。


「うん。海好きだよね」


 俺が返事をすると幼馴染はこくりと頷き、そこから二人とも言葉を発しなかった。

「ごちそうさま」それだけを言って店をでた。

 店の窓ガラスがセピア色だっただけで、外に出れば青い海が見えた。


 海辺にありがちない緑のある公園やら木も見える。


 俺たちは言葉を交わすことなく、坂のある道を歩く。

 不思議と気まずさはなかった。

 ただ、あまりにも現実離れしていて俺はそっと幼馴染に手を伸ばす。

 彼女の手を握ると、彼女もそっと手を握りかえしてきた。


 のんびりと歩いていると、浜辺につく。


 小さなころ夏になると連れてきてもらった場所だ。

 俺たちは何をするわけでもなく、海を見つめた。

 手はつないだまま。


「好きです。付き合ってください」


 やっと言えた。


「私も好きです」


 幼馴染は照れながら、なぜか敬語で答えている。

 恐らく照れているのだろう。耳が薔薇色に染まっている。


「これってデートとして認められる?」

「はい」


 彼女は今度は顔まで真っ赤にして頷いた。


「練習って言って油断させましたね」


 彼女はすごく恥ずかしいのか、俺のわき腹をちょっとだけつつく。


「君が、デートって認めてくれるか分からないから」

「ずっと、デートしたかったんですよ。気持ちを言葉にしてくれるのを待ってたんです。あなたと一緒ならいつだって楽しいこれがデートならよかったのにってずっと毎日思っていたんですよ」


 今度は俺が赤くなる番だった。


「好きです。付き合ってください。明日も、明後日も……ずっと毎日デートしてください」


 俺が言うと幼馴染は恋人になった。

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彼女をデートに誘うには 華川とうふ @hayakawa5

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