なにかがひとつかふたつ噛み合わなくなって、それによってただ普通に生きるということが途端に難しくなる——残念ながら現代ではこういうことがありふれているのではないでしょうか。本作で語られるサキの状況も、言ってしまえばものすごく特別なわけではない、誰にだって訪れ得るものだと思います。
本作ではそんなサキの周りに三人の人物が現れます。担任のジミケン、生徒会長のリク、そしてギャルのアユミ。状況を変える力を持っていたのは誰だったのか、実際に一歩を踏み込んだのは誰だったのか、それをぜひその目で見届けていただきたいです。私はとても大切なことをたくさん教えて頂きました。
そして同時にこれを美談にしてはいけないとも感じました。ラストの「子供の情景」を取り戻すシーンはとても感動的です。一方でシューマンはこれを「大人のための作品」だと言ったことを胸に刻み、我々大人がきちんと考えなければいけない問題なのだと思います。
余裕のない今だからこそ、多くの方に読んでほしい名作です。