第3話
男の襲撃から、二人は場所を変え壁が崩れかけた建物の一角に移動した。
雨風をしのぐための粗末な布がかけられた場所…ここが少年のねぐらだった。
「ここが、僕の家…なんだ。」少年は、少し恥ずかしそうに言いながら、座り込んだ。
「ありがとう、お兄ちゃん。あのままだったら、きっと僕…」少年は言葉を詰まらせ、頭を下げた。
「気にしなくていいさ。大事がなくて良かった。」青年は、優しく微笑む。
「僕、ライと言うんだ。」少年は顔を上げ、主人公に名乗った。
「俺はシャルノ。今日は君を助けれて良かった。」
ライはシャルノを見つめたが、その目には力強い輝きが見てとれた。
スラムの住民のような濁った眼ではない。
暗闇の中で、差し込んだ光のような感覚を覚えた。
ライは口を開いた。
「君、ここの人じゃないよね?服も綺麗だし、こんな危ないスラム街で会うなんて変だよ。」
シャルノは少し笑みを浮かべ、肩をすくめた。
「実は、就職活動中なんだ。」
「就職活動?」ライは首をかしげた。「こんなところで?」
こんな貧民窟にまともな職なんてあるはずもない。
いやそもそもまともな人間ならこんなところで職を探すはずがなかった。
ではこれは何を意味しているのか。
こういう時の勘は鋭い。ライは唾をのんだ。
この男は堅気では無い。
そしてシャルノは答えた。
「俺はね…『勇敢なる市民隊』に入隊しようとしているんだ。」
その言葉を聞いた瞬間、ライの目は大きく見開かれた。
賤民隊の没落貴族 たそがれキャンディー @tasogarecandy
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。賤民隊の没落貴族の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます