最終話:帰ってきた天使。

「この調子だど二三日でよくなりそうだから、ね、おとなしく寝てて・・・」


「分かりました・・・」

「あの、ご主人様・・・私のこと愛してる?」


「愛してるよ・・・どうしたの?いきなり」


「私の病気がよくなったら、天界に帰らなくちゃいけないから・・・」

「ご主人様の気持ち、確かめておきたかったの・・・」


「ああ・・・そうか、もうそんな時期が来るんだ」

「早いね・・・だけどしょうがいなんだよね、メイサちゃんにも天界での

暮らしがあるからね」

「僕的にはメイサちゃんには、ここにずっといて欲しいって思ってるけど」

「でも強制も束縛もできないからね」


「ごねんね。ご主人様」


そう言ってメイサちゃんは僕の頭を自分の胸にハグしながら言った。


「病気治ったら、一番に抱いてね」


そうか最後のエッチになるのか・・・。


結局、メイサちゃんの風邪は完全完治して彼女が望んだように僕とお別れの

エッチをした。

だけどまあ、いままでで一番激しいエッチだった・・・まじで死ぬかと思った。

こんなの毎日やってたら、絶対死ぬよな。


メイサちゃん天界に帰る日・・・どことなくぎこちない僕と彼女。


「あ、あのさ・・・今日までありがとうね・・・一生忘れられない毎日を

僕にくれてありがとう・・・向こうに帰っても元気でね」


「ご主人様・・・」


メイサちゃんはそこにしゃがみこんで号泣した。


「メイサちゃん・・・泣かないでよ・・・君の気持ち分かってるよ・・・」


僕はメイサちゃんを抱き寄せて言った。


「ね、泣かない・・・僕も悲しくなっちゃうだろ・・・これでも必死で感情抑えてる

んだから・・・」

「しかたがないよ・・・メイサちゃんにはメイサちゃんの学生としての

生活が待ってるし、君の帰りを待ってるご両親だっているんだから・・・」


「あのさ・・・君が天界に帰ったら、僕はまた君を指名するよ」


「それは無理・・・私のバイトは学校が長期のお休みの時だけだもん」

「すぐに学校がはじまるからね、そうしたら私はヒーリングヘブンの登録から

抹消されちゃうから・・・」

「次、学校が長期のお休みに入るまでは私とは会えないんだよ」


「学校が長期でお休みの時期っていつ?」


「不定期なの・・・だから分かんない・・・いつになるのか1年後か2年後か・・・」

「学校で、大きなイベントがないかぎりお休みにはならないの」

「その時、ヒーリングヘブンもシステム自体もなくなちゃってる可能性あるし」


「そうなんだ・・・ちょっと意気消沈かな」


「きっとその間にご主人様、素敵な彼女ができてるよ」


「彼女なんか作らないよ・・・君って大きな存在を知ったあとで彼女なんか

作れる訳ないだろ、僕は一生君を思って暮らすよ」


「ダメだよ・・・消えた幻を追いかけないで、ちゃんと生きてね、ご主人様」

「約束だよ・・・私のことは忘れて人間の女性と恋愛して幸せになって」

「いい、約束して・・・私のお願い」


「・・・だけど」


「お願いご主人様」


「分かった・・・約束するよ」


メイサちゃんは涙を拭いて笑顔で僕にサヨナラのハグとキスをしてバイバイって

手を振りながら玄関からドアを開けて出て行った。


僕はどうしても、彼女にサヨナラが言えなくてその場で立ちすくんでいた。

だけどもう一度メイサちゃんの顔が見たくなって玄関まで走ってドアを開けて

すぐに外に飛び出して彼女の名を呼んだ。


「メイサちゃん!!」


でも、そこにメイサちゃんはいなくて見慣れた風景だけが広がっていた。


「本当に帰っちゃったんだ」


僕は呆然とメイサちゃんのいない空間を眺めていた。


長いようで短かった一ヶ月・・・夢のような毎日・・・ラブラブな暮らし・・・

絶対味わえない刺激的な天使とのエッチ・・・二度とないんだろうな、こんな

幸せなことって・・・。


メイサちゃんが天界に帰ってから僕はヒーリングヘブンのサイトを覗いてみた。

そこにメイサちゃんの存在はなかった。

他にもたくさん天使はいたけど、他の子は一切目に入らなかった。

僕はまたひとりになった。


どんなに寂しくても悲しくても、非常な日常は否応なしにやってくる。

僕の心情を分かってるれる人は誰もいない。


ただ淡々と仕事をこなし、コンビニ弁当を買って帰って寂しい部屋でひとり

飯を食って、あとは寝るだけ。

メイサちゃんがいないってことの反動がここに来て悲しみの渦となって押し

寄せてきた。

僕は夜毎、彼女を思い出して枕を濡らした。


そして会社が休みの日、誰も起こしてくれることのない僕は昼過ぎまで寝ていた。

そしたらドアホンが鳴った。

誰だよ、放っておいたら帰るだろうと思ってしばらく放置した。


そしたらまたしつこくドアホンが鳴った。

早く出ろよって言ってるようにバカみたいに何度もドアホンを鳴らす誰か。

しょうがないから僕はベッドから出て玄関ドアの鍵を解除した。


そしたらいきなりドアが開いて、見たことある女の子が突然、僕に抱き

ついてきた。

見たことある女の子じゃなくて、それは見たことある天使だった。


「ただいま、ご主人様」


おしまい。






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レンタル天使。〜ご奉仕して差し上げちゃいます〜 猫野 尻尾 @amanotenshi

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