一寸の虫にも五分の魂
花桃 碓
後悔先に立たず
子供の頃、まだ昆虫を平然とつまみ上げられた頃の話です。
細部は曖昧になっていますが、学校からの帰り道だったように思います。暑い夏もようやく過ぎ去ろうかという時期、足下を見ると茶色い葉っぱのようなものが落ちていました。
子供というのは多く道に枝が落ちていれば柴犬のように揚々と掲げ、石ころが落ちていれば周りに車が止まっていようと蹴り飛ばす。
その本能のような衝動でもちろんその葉っぱを踏みつけました。
けれど、それは、
バッタでした。ひと踏みでぺしゃんこに。
もちろんそれまでにもアリの巣を砂や枝で悪鬼羅刹の如く破壊し、蚊がいればパチンと潰してきましたが、なぜかそれとは違う「生き物を殺した」実感。
家に帰って収まらない感情を整理すべく親に打ち明け、済んだことだと思っていたものの、それから何年経っても忘れられません。
そしてそれから車に轢かれた猫や、何かに襲われた鳥のヒナなど、道ばたで動物の死骸を目ざとく見つけてしまうようになりました。その度にバッタを踏み潰した記憶もよみがえります。
一寸の虫にも五分の魂、五分の魂でも人を呪うには充分ということでしょうか。
一寸の虫にも五分の魂 花桃 碓 @cat_us
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
創作記録最新/千織
★3 エッセイ・ノンフィクション 連載中 10話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます