EITOエンジェル総子の憂鬱(仮)53

クライングフリーマン

間違った危機感

 ======= この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 南部(江角)総子・・・大文字伝子の従妹。南部興信所所長の妻。EITOエンジェルのチーフ。

 南部寅次郎・・・南部興信所所長。総子の夫。

 大前英雄管理官・・・EITO大阪支部の管理官。コマンダー。総子からは『兄ちゃん』と呼ばれている。

 足立祐子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 石動悦子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 宇野真知子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 丘今日子・・・EITO大阪支部メンバー。看護担当。元レディース・ホワイトのメンバー。

 河合真美・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 北美智子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。現在は休暇中。

 久留米ぎん ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトの総長。EITOエンジェルス班長。

 小峠稽古 ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 和光あゆみ・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。

 中込みゆき・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。

 海老名真子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。

 来栖ジュン・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7の総長。EITOエンジェルス班長。

 愛川いずみ・・・EITO大阪支部メンバー。EITOエンジェルスの後方支援担当になった。

 本郷弥生・・・EITO大阪支部、後方支援メンバー。

 大前(白井)紀子・・・EITO大阪支部メンバー。事務担当。ある事件で総子と再会、EITOに就職した。

 神代チエ・・・京都府警の警視。京都府警からのEITO出向。『暴れん坊小町』の異名を持つが、総子には、忠誠を誓った。

 芦屋一美(ひとみ)警部・・・大阪府警テロ対策室勤務の警部。総子からは『ひとみネエ』と呼ばれている。アパートに住んでいる。

 用賀(芦屋)二美(ふたみ)二曹・・・。三つ子の芦屋三姉妹の次女。陸自からの出向。総子からは『ふたみネエ』と呼ばれている。オスプレイやホバーバイクを運転することもある。後方支援メンバー。総子の上の階に住んでいたが、用賀と結婚して転居した。

 芦屋三美(みつみ)・・・芦屋グループ総帥。EITO大株主。芦屋三姉妹の長女で、総子からは『みつみネエ』と呼ばれている。芦屋三姉妹と総子は昔。ご近所さんだった。


 小柳警視正・・・警視庁から転勤。大阪府警テロ対策室室長。

 佐々一郎・・・元曽根崎署刑事。横山と同期。大阪府警テロ対策室勤務。通称佐々ヤン

 指原ヘレン・・・元EITO大阪支部メンバー。愛川いずみに変わって通信担当のEITO隊員になった。

 用賀哲夫空自二曹・・・空自のパイロット。EITO大阪支部への出向が決まった。二美の元カレだったが、二美と結婚した。

 真壁睦月・・・大阪府警テロ対策室勤務の巡査。小柳と一時不倫をしていた。

 幸田仙太郎所員・・・南部興信所所員。総子のことを「お嬢」と呼ぶ。

 花菱綾人元刑事(巡査部長)・・・大阪阿倍野区の元刑事。南部興信所所員。

 横山鞭撻元刑事(警部補)・・・大阪府警の元刑事。南部興信所所員。

 南部寅次郎・・・南部興信所所長。

 デビット・ジョンソン・・・アメリカ空軍軍曹。EITO大阪支部専従パイロット。


 =====================================

 = EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す =

 ==EITOエンジェルズとは、女性だけのEITO大阪支部精鋭部隊である。==


 午前9時。EITO大阪支部。会議室。

「気象庁も罪なことしてるなあ。」と、コマンダーこと大前は呟いた。

「何、兄ちゃん。」と総子は大前に尋ねた。

「地震が起きたんはな。宮崎県や。1週間余震に注意しましょう、ってこのウインナー見せたら、皆、ウインナーに近い県全体が1週間以内に地震起きるぞ、って予報出した、と思い込むやんけ。」

「え?チャイますのん?コマンダー。」と、ぎんが暢気な声で質問をした。

「チャイますのん?『南海トラフ地震情報』ではあっても、『南海トラフ地震情報厳重注意』やない。マスコミが勝手に付け足したから『注意報』やと勘違いした人達が大騒ぎや。」と、大前は返した。

「そう言えば、ペットボトルの水が品不足やって、幸田が言ってたわ。」と、総子がぽつりと言った。

「典型的なガセね。今はね、まだ予報とか注意報とか出せないの。出せたとしても10秒前らしい。」と、二美が言った。

「10秒で逃げられるのは、スーパーヒーローかスーパーヒロインだけだろうな。」と、用賀が言った。

「南海トラフ地震は、『いつか』の話で1週間以内なんて区切れる話やない。マスコミは、誤報流したことは知らん顔で、五輪の話とかに切り替えてる。」

「で、コマンダー。そのいつか、が来た時、どうしますのん?どこもかしこも、ペチャンコになるか流されて終り、ですか?」と、ジュンが改めて大前に尋ねた。

「万一の時の話な。三美に確認した。実は、EITO発足よりずっと前に移転計画があるらしい。芦屋のグループの移転。」

 お茶を啜ってから、大前は続けた。

「地震で右往左往してたら、悪党退治も避難誘導もデケへん。そやから、EITOが発足してから、EITO大阪支部の移転計画も練り始めた。間に合うかどうかはともかく、準備はしておかんとな。ペットボトルだけやない。色んな準備や。南部興信所も移転計画に入っている。まだ未決定やが、『天橋立』付近が候補に上がっている、という話や。お前らは、俺の可愛い妹や。妹達と心中するときは、敵に負けた時や。自然災害なんかに負けてたまるかい。」

「俺は『妹達』じゃないけど、闘いで一緒に死ねるなら本望です、コマンダー。」

「二美は、ええ男と一緒になったなあ。」と、大前は涙ぐんだ。

「吉村人情劇もいいが、警察に、ヘンな脅迫状が来た。『ビリケンさんは、返して貰う』という文面だ。念の為言っておくが、ビリケンさんこと通天閣のビリケン像は、レンタルじゃない。取り敢えず、聞き込みに行ってくれ。それから、『太陽の塔が気に入らない』という脅迫状なのか予告状なのか分からない郵便も届いている。ヘレン君、印刷して配ってくれ。」「了解しました。」

「よっしゃ、二手に分かれて調べよう。同じグループやとしたら、立派にテロ行為やからな。」

「了解!」と、皆は元気よく応えた。

 正午。通天閣5階。ビリケン像の前。

 通天閣の社長が、大前を迎えて畏まっている。

「レプリカ?にせもんちゅうことですか?」「ええ。先日、盗まれました。」

「盗まれた?盗難届は?」「出してあります。こういう時の為に、三代目を設置した時に、影武者を拵えたんですわ。」「影武者?時代劇みたいやな。」

 小町は、普段父親のことを『ちゃん』と呼んでいることを忘れて呟いた。

「コマンダー。ひょっとしたら、手紙出した犯人が、予め盗んだのかも?」

「なんでやねん。」「偽モンってバラしてええんか?とか。」と、ジュンが思いついて言った。

「実は・・・。」と、社長が脅迫状を出した。

 ジュンの推理は当たっていた。

 府警に手紙を出したのは、社長自身だった。目の前の脅迫状を読んで、以前、EITOに助けて貰ったことを思い出したのだ。

 府警は、警察は、「事件が起ってから」動くのが前提だ。

 EITOは違う。そう、社長は考えた。

 大前は、以前の事件を思い出した。あの時は、二美が急遽用意したグライダーが活躍した。

 ふと、思いついて、大前は社長に尋ねた。「閉館時間は何時でしたっけ?」

「午後7時です。」

 その時、大前のスマホが鳴動した。大阪支部のヘレンからの通信だった。

 大前は、小町達を残し、ジョンを連れて、その場を離れた。

「コマンダー。東京本部の草薙さんから、緊急です。繋ぎますから、直接話して下さい。」

「大前コマンダー。お久しぶりです。実は、ネットで気になるSNSの会話を見付けました。読みますよ。『あいつみたいなことしたら、すぐに捕まるなあ。俺らなら上手く強盗出来るで。』話の前後から、先日の心斎橋時計店の強盗殺人事件と思われます。大前コマンダー。『あびこ』って大阪にもあるんですよね。時間は午後7時らしいんですが。」

「了解しました。」

 耳を近づけて聞いていたジュンは、「コマンダー。ひょっとしたら、通天閣と太陽の塔は・・・。」「うん。陽動やな。準備が出来たら、留守番残して高級時計店強盗退治や。」

「場所は?」「ヘレンは優秀な通信士や。見当つけた店の名前も地図も送って来た。」

「ホンマや。コマンダー、ボーナス弾んであげて。」「ああ、勿論や。」

 午後1時。エキスポランド。太陽の塔の前。

 総子は、ぎん達と、エキスポランド社長と話していた。

 総子は、『太陽の塔が気に入らない。閉園前にエライ目にあわしたる。警察に言うなよ。』という文面から『警察に介入したがっている』と、考えた。

 エライ目にあわせるというのは、関西弁で『後悔するほど暴力を振るう』とか『後悔するほど痛い目にあわせる』という意味だ。

 大前から、スマホに連絡が来た。

「そうか。やっぱしなあ。ヘレン、成長したなあ。ボー・・・。」

「ボーもナスも上げるよ。そっちも、留守番置いて、一旦引き揚げてくれ。晩に決戦や。」「了解。兄ちゃん。すきやで。」「照れるから止めて。」と、大前は冗談で返した。

 午後7時。地下鉄あびこ駅近く。

 我孫子筋に、パイナップル時計店大阪支店はあった。

 覆面をした十数人の男達が、入り口を壊して「入店」した。

 警報ベルが鳴り響く。男達は、警備員が誰一人来ないことに何の不審も抱かず、我孫子筋に駐車した車に乗り込もうとした。

「待ってたでー。」と、ジュンが言った。

 総子が、連中の前に出て口上を言った。

「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ。悪を倒せと我らを呼ぶ。参上!正義の戦士、EITOエンジェルズ。満を持して。」

「なんやこら、いてまえ!!」とリーダー格が言った。

 彼らのナイフは、瞬く間に地面に落ちた。最初、突っ張り棒だけで闘っていた、元レディースだ。バトルロッドとバトルスティックだけで充分だった。

 男達は、腕を押えて、立ちすくんだ。

 総子は、長波ホイッスルを吹いた。長波ホイッスルとは、犬笛に似た簡易通信機だ。

 オスプレイのパイロットのデビッドは、教えられた通り、ボタンを押した。

 通信は、大阪府警とEITO大阪支部に届けられ、大阪府警では、通信を受け取ると

 警察無線で確認連絡をする。

 忽ち、我孫子筋の北側と南側からパトカーが駆けつけた。

 午後7時。エキスポランド。太陽の塔付近。

 閉園して、客が帰ろうと出て行ったが、3人だけ別行動をして、爆竹を投げ始めた。

 そこに、ホバーバイクに乗った用賀と二美が駆けつけ、水流ガンで爆竹と少年達を水浸しにした。

 ホバーバイクとは、民間開発の『宙に浮くバイク』で、EITOが採用、改造して戦闘や運搬に使用している。

「ご苦労様、EITOエンジェルズ、EITOガーディアンズ。」と言って、一美と真壁が出てきた。ついて来た警官隊に三人を逮捕連行させた。

「三人か。余っちゃったね。」と一美が言った。

 午後7時。通天閣タワー。

 出て行く客と逆行して、エレベーターで5階にやって来た、男が3人。

 本来の、ビリケン像がある辺りに来てキョロキョロしだした。

 3人に、ブーメラン、シューター、メダルカッターが跳んできた。

 シューターとは、うろこ形の手裏剣で、先端に痺れ薬が塗ってある。

 メダルカッターとは、メダルの周りにプロペラ状のカッターが付いている。これも、先端に痺れ薬が塗ってある。

「銭なんかやるかーーいい!!」

 小町は、あっと言う間に跳び蹴りをし、肘打ちをして、背負い投げをした。

 トドメに、股間を・・・と足を繰り出した所、大前が大声を出した。

「ようやった、EITOエンジェルズ。流石、早業やなあ。」と言って。

 苦笑いをした佐々ヤンが、警官隊、花ヤン、横ヤンと現れた。

「今日は、オムツないさかいな。」と、大前は大真面目に言った。

 午後8時。総子のマンション。

「今日は、遅いから、取り調べは明日やな。大前さん、よう見切ったな。」と南部が言うと、「京都府警の茂原さんに教わったんやて。股間を蹴る前に深呼吸する癖があるって。」と総子が応えた。

「大前さんも『人の使い方』、上手くなったな。総子で鍛えられたか。」

「それ、褒め言葉やナア、ダーリン。夜は,俺が鍛えたるで、っちゅう合図やな。」

 南部は後悔した。口は禍の元、だと再確認した。

 ―完―


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