溶ける
もがな
アイスクリーム
「頭、冷やして来たら?」
私はただ、長く一緒に居たかった。たったそれだけなのに、彼女は私を突き放した。
今年の夏休みは、ずっと常世菫と過ごしていた。いつ、どのようにして出会ったのかも分からない。しかし、夏休みが終わらなければ良いのに、そう思う程良い時を過ごせた。
私が彼女にそのことを告げると、彼女は怒った様にため息をついた。
「そんなことあって良い訳ないでしょ。」
普段の様子とは全く違う彼女を前に、思わず体が硬直した。
「ごめん。訳分からないよね。こんなこと言っても。強く言い過ぎた。」
突然、普段通りの彼女に戻る。
彼女は一拍ほど息を吸い、話し出した。
「この夏休みを終わらせるのは、貴方なんだよ。夏休みは終わらなければならないの。ずっとこのままではいけないの。頭、冷やしてきたら?」
私は彼女に見放されたのか。そう思った途端、視界が暗転した。
目が覚めると、私は真っ白な部屋にいた。ベッドに寝かされていたようだ。後に話を聞くと、どうやら自殺未遂で入院しているらしい。不思議なことに、全く記憶がないのだ。自殺未遂のことも、常世菫という少女とその前に過ごしたことも。
九月一日に自殺をする人は多いらしい。夏休みが終わってしまうからだろうか。そんな彼らは、アイスクリームの様に一瞬でなくなってしまう時をそのままにしたいのだろうか。
アイスクリームは溶けても、謎は深まるばかりだ。
あぁ、アイスクリームを食べると頭が冷える。
溶ける もがな @mog7
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