湧水

@banana_877877

第1話

私の地元には浜辺から水が湧き出る全国的にも珍しいスポットがあります。

そんな場所で体験した怖いお話です。



陽射しが気持ち良い絶好の海日和でした。

周りを見てみれば子供連ればかり、一方の私は大学のオープンキャンパスの帰りで1人でした。

羨ましいなぁ...なんて思いながらネットで見た浜辺から湧き出る水を見るためにしばらく散策していました。

少し探しているとなにやら地面からポコポコ水の泡が出ているところを発見。

陽射しで火照った体を冷やすために片手で触ってみました。するとびっくり、めちゃめちゃ冷たいんです。

どうやら川から流れてくる真水らしく、それのせいかな?なんて考えながら手を冷やしていました。

砂のせいで足が汚れていたので洗うためにも次は足を入れてみました。

またびっくり、かなりの深さがあるんですこの湧水。

片足で立ちながら足を入れても地面に付かず、座ってみて足を入れてもまだ地面に付きません。

深さが気になり、近くにあった自分の身長以上もある漂流物の竹(?)らしきものを突っ込んでみました。

すっぽりハマってしまうんですね、かなり驚きました。

それと同時にいきなり両足を入れなくて良かったと心底ほっとしました。

しばらく足水を楽しみながらふと思ったんです。

これ、子供が入ってしまったら危なくね?と。

私はこの湧水を探しながら下を見て歩いていたので存在に気づきましたが、前を見て歩いていたらなにも看板が無いので中々気づき辛いんです。

しかも私(175cm)がすっぽりハマってしまう深さ。

危ないなぁと思いつつ他にも湧水が無いか探しにまた歩き出しました。

少し海辺から離れた水辺を歩いていたらいきなり右足が下に埋もれ、思わず転びそうになってしまいました。

このときばかりは心臓がヒュンッとなり体がサーッと冷たくなるのを感じました。

確認してみると、ポコポコ水が湧き出ていました。

こんなところにも湧水が、と思うと同時にこの湧水が先程の深さじゃなかったことにとても安堵しつつ足を抜こうとしました。

すると、中々抜けないんです。

水に濡れた砂に埋もれているからか、足が重くなり抜くのに中々苦戦しました。

私は結構筋力には自信がある方なのですがそれでも中々抜けない、子供がはまったらどうすんだと転びそうになって恥ずかしい気持ちを隠すように怒りを感じながらなんとか抜け出しました。

もう帰ろうかなと思いつつ時計を確認してもまだ帰りのバスには時間があります。

田舎なもので海以外に暇つぶしできるような場所がなく、また私は湧水探しに出向きました。

ついでに生き物も見たいなと思い少し離れた岩場に足を運びました。

次は同じようなミスはしないと心に決め慎重に探索していた、つもりでした。

今度は両足です。

絶対に気をつけていたはずなんです、周りに湧いてる泡がないか。

他の湧水のところには泡がありました...

砂で見えなかったのか...?それとも隠されていたのか。

最悪なことにそこの深さは私の身長以上、しかも少し離れていて隠れている岩場。

いきなり全身がとても冷たい水に浸かったこともありかなりのパニック状態に陥りました。

なんとか落ち着かせ、一旦顔を水面に出しました。

必死に足をばたつかせ、両手で掴めそうな岩を掴み脱出を試みました。

感じる違和感

いくら手に力を入れても体が持ち上がらないんです

水泳を6年間やっていた経験があるので水面から自分の体を出す行為は幾度となくやってきました

上がれないわけがないんです

最悪な考えが頭に過り不安を感じながら足に意識を向けてみました


足首を何かに掴まれていた


冷や汗が止まらなかった


そしたら水面に


ポコポコ

ポコポコ

ボコボコ


泡が出てきた


水面下に目を向けるとなにやら黒い影が浮き出てきた


人間はあまりにもパニックになると1周回って冷静になるものです

動けないので私はその影が出てくるのをじっと待つことしかできなかった


こわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわい


水の冷たさもあり心臓がはち切れそうになる

だんだん浮き出てくる黒い物体


黒い髪


叫びたくても叫べない

体が動かない

まだそれは上がってくる


不健康な色

真っ白に青が混ざったような変色した肌


真っ黒な目


寂しそうな表情


そこからは無我夢中でした。

火事場の馬鹿力でもがき振り払い手が離れたのを感じたらすぐさま水面から出ました。

全力で走りました。

きっと子供連れは蒼白した表情で全力で走ってくる高校生を見て何事かと思ったでしょうね。

足に付いた砂を気にすることもできず、ロッカーに預けておいたバッグを手にしバス停へ向かいました。

陽射しのおかげでバス停へ着く頃にはずぶ濡れだった体もある程度は乾きました。


子供はすっぽり入ってしまう湧水

1度はまったら中々抜け出せない砂

人が出入りしにくい岩場

たくさんの子供連れ


あの日、私が見たあれはなんだったのか。

上記の4点から考えるに...

いや、考えたくもないですね...



如何でしたでしょうか。

皆さんも海に行く時は十二分に気をつけてくださいね。

画面の前にいる皆さん、次このような体験をするのは


貴方かもしれませんよ?




※この物語はフィクションです

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