星を観にきた家族

透峰 零

I山にて

 つい先日、私が体験したことだ。


 二〇二四年八月十二日。この日、極大を迎えるペルセウス座流星群を観に、私は友人とI山に来ていた。

 I山は岐阜県と滋賀県の間をはしる山で、星の他にも高山植物で有名な山である。

 私達が着いたのは夕刻だったが、すでに駐車場はそこそこ埋まっており、早くも場所取りが始まっていた。

 我々もさっそく車を落ち着け、空いたスペースに椅子やら寝袋を出して準備を整えた。

 夏の日は長い。暗くなるまでは車内でスマホに落としてきた映画を観たり、行く時に調達したコンビニ飯を食べたりして時間を潰していた。

 ふと気がつくと、いつの間にか私達の両隣にも車が停まっている。

 左側は覚えていないが、右側に停まっていたのは大きなワゴン車であった。

 そうこうしているうちに日が暮れ、辺りも暗さを増してくる。星空を売りにしているだけあり、当然ながら日が暮れると周囲に灯はない。

 私達も車を降り、それぞれ空を見上げた。雲は多かったが、幸い山頂付近は晴れていた為か大きな流れ星を幾つも観ることができた。

 右隣はどうやら家族連れだったらしい。子供達の話し声が遅い時間まで聞こえていた。

 グズる子供をあやすためか、車内のライトが煌々とついていたのもよく覚えている。


 日付が変わる頃に我々は撤収し、車の中で流れ星の感想を話しながら帰路に着いた。

 だがそのうち、一人がこう言ったのだ。

「隣のカップルが電気決してくれてたら、もっと良かったのになー」と。

 私は少しびっくりして、その友人に答えた。

「カップルじゃなくて、ご家族じゃない? 小さい子もいたみたいだし、仕方ないよ」

 今度は、友人が怪訝な顔をする番だった。

「なに言ってんの? 子供なんていなかったよ」


 不思議なことに、他の友人も子供の声は聞いていないという。隣の車に乗っていた子供達の声を聞いたのは私だけだったようだ。

 では一体、あの暗闇の中ではしゃいでいた子供達はなんだったのだろう。

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星を観にきた家族 透峰 零 @rei_T

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