第4話&エピローグ

城に戻った王子はクリムや父君、母君を筆頭に城内のあらゆる者に心配され、怒られました。




 しかしそのほとぼりは直ぐに冷めることになるのです。




 朝食の時間に人参が出ても嫌な顔一つせず味わって食べます。


 あの日の事を思い出すのです。


 この人参も誰かの手で大事に育てられているんだと。






 剣術の稽古も熱心に取り組みます。


 それは剣術の書物を貪るように読むほどです。


 強くなるのは大切な人を守るためなんだと。




 日々のその王子の変わり映えを見てクリムらは呆気に取られておりました。


 ポポロ王子がポポロ王子ではない。


 人は一夜にしてこれほどまでに変わって見えるのかと。




 ある日クリムは気づきました。


 ポポロ王子のペンダントの宝石がただの石ころに変わっていると。




 「王子そんな装飾品は一国の王になる者にはふさわしくありませんぞ」




「これはお守りなんだ、人々の心を善に導くお守りさ」




クリムには訳が分かりませんでした。




 見ちがえるように変わった王子でしたが城下町にくり出すことをやめません。




 国民と会うのです。しかし以前とは違います。


 国民が悩んでいることはないか、国民は普段なにをして過ごしているのか聞きたいのです。




 人々の事をたくさんたくさん聞きたい、知りたいのです。




 そしてこないだいじめられていた男の子を見つけると誠心誠意をもって謝りました。


 あの日の王子には分かりようもなかったこと、理解できなかった事を反省していたのです。




 そうして国民に寄り添ったポポロ王子は愛され認められる立派な王様になるのですが、それはまだ先のお話。












ーーーーーエピローグーーーーーーーーーーーーーー








これはポポロ王子が生まれるずっと前


に存在した王子のお話です。






その王子は幼いころから我儘な男の子でした。


自分の思うこと、やりたい事ができなければ


泣きわめき、城内の人間はみな手を焼きました。


激しく注意をしても、その王子は次の日には


いつもの我儘な王子に戻るのです。




そしてこの王子はついには


王の地位にまで上り詰めてしまうのです。




悪政につぐ、悪政。


国民はその王の権力に支配され振り回されます。




耐えかねたある国民の中で反王政の宗派の


一派が暗殺を企て、王は殺されてしまいました。






王は人間の憎悪、悲哀を知りませんでした。


自分に向けられた銃口がどんな意味を持つのか


銃を構えた人間の心に気づいたのは死後の事でした。








死後、王は生涯を悔やみ


後に生まれるポポロ王子に自分には果たすことができなかった事を託すことにしたのです。


王は人の上に立つものではなく、人の中心に立つものだという事を。






その意志をペンダントという形に変えました。






「光のペンダント」




身に付けるだけで人に愛される光のパワーを持った宝石が嵌め込まれたペンダントです。






『しかし時間が経つとその光は一瞬にして効力を


失うという制約を込めて。』


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光のペンダント @uchiyashuma

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