第4話 大和言葉

 「ご返金致します」、「ご入場を開始します」、「当方からご入金いただきます」等々。

 最近、「それは誰が誰に対して敬語を言おうとしているのか?」と違和感を抱くことが多い。


 「ご返金致します」は、某チェーン店内で流れていた放送。「ご返金ください」なら、先方に敬意を表しているように見えるので、違和感はない。不良品があった場合の対応を言っているようなので、返金するのは、店の方だろう。ならば、「お返しいたします」や「返金させていただきます」が正しいのではないだろうか?


 「ご入場を開始します」は、某学習系シアター施設での入場開始時間を告げる放送。「ご入場」するのはお客さんだが、「開始する」のは、施設側じゃないのか?「ご案内を始めます」や「ご入場いただけます」じゃないのか?バイトスタッフが近くにいる人に声をかけるのであれば、そこまで気にならないが、公式の放送がこれでいいのか?


 「当方からご入金いただきます」は、本当に、ちょっと訳が分からなくて、混乱した。金がもらえるのか、払わされるのか。そんなけったいな言い方するくらいだったら、敬語など使わなくてもいい、と思ってしまう。


 これは時代の流れなのかもしれないが、最近は、音読みの漢字熟語に「お」だの「ご」だのつけてそれで敬語作ろうとするのが一般的になっているように感じる。だから間違えている、ということではないが、なんとなく簡単に済ませて、それで終わらせようとしているせいで、言葉のおかしさに気が付かなくなってしまっているのではないか?とは思う。

 でも、言葉って、そんな単純なものではないだろう。もっと丁寧に言い方を考える意識があっていいのではないか?


 理系科目に比べて、国語は軽視されがちなところがある。普段の会話で苦労することはあまりないし、「小説の主人公の気持なんか考えてどうするの?」と思う人も多いのかもしれない。


 ただ、国語って、そんな単純なものじゃない。


 たとえば「主人公の気持ちを考える」のようなところは、人と人とのコミュニケーションに必要な能力を養うものだと思う。「空気が読めない人」などというのは、国語を重要視してこなかった人かもしれない。あと、単純に、自分が被害にあわないために、この能力は大事だ。詐欺師の言葉の意図を読み取れない人は、被害にあうだろう。

 また、「文章を読み取れない人」というのは、世の中にあふれる各種説明書、契約書、新聞の類をどうしているのだろう、と思う。いろいろな不利益を被るだろうし、生活に支障が出るように思う。

 あと、個人的な感想ではあるが、論文や各種書籍などの文章を読むとき、理系の人よりも文系の人の文章の方が文章の起承転結がしっかりしていて、読みやすい場合が多いと感じる。

 そこはやはり、文章を専門にしっかりやってきたかの違いであって、学ぶに値するものであるということの証拠ではないだろうか。


 国語は、日本語は、学ぶべき価値のある学問である。そして、国語を使いこなすには、音読み漢字の熟語だけでどうにかできると思うべきではない。

 日本語には、訓読みがある。送り仮名を使ってさまざまに変形するので、適切な言い回しにたどり着くのに役立つだろう。


 国語・日本語を軽視しないでほしい。

 外国由来のものを使うのも良いが、それを使いこなすには、それなりの技術がいるのだ。

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天地星空 言ノ葉ノ種(カクヨム版) 暁香夏 @AkatsukiKanatsu

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