第24話 ナンバーフォーに挨拶を
リュウドオが倒され、一週間が過ぎていた。その知らせはあっという間に広がり、一日だけだった祭りは何度日が昇っても続いている。
リゴーラとゴルドは行方知れず。だが、リゴーラはまたフォーを追い回すだろう。何となくそれだけは分かった。
フォー、コイン、クードゥーの三人は、黄龍城の玉座の間へ向かっていた。
「ねえ、なんか大事な話があるって言われたんだけど」
「俺もそう聞いた」
「コインも。コインも」
「それにしては、華やかすぎない?」
「そうか? まあ、シャロムの皇帝復帰祝いだろ」
フォーが玉座の間へ入ると、シャロムが待っていた。
玉座の前で、真っ赤な婚礼服を着たシャロムが、真っ赤な漢服を着たフォーを手招きする。
玉座までの両脇には、革命軍のメンバーが泣きながら喝采を送り、シャロムの横には親代わりのウ四兄弟がいた。
何が何だか分からないまま、フォーはコインとクードゥーを引き連れ、シャロムの元へ歩く。
「シャロム、これってどうゆうことだ?」
「ワタクシはフォー様の妃になりますわ。これからは、フォー様が皇帝ですわ!」
「はあ! 何で急にそんなことに」
「いいましたよね。皇帝 ナンバーフォーと」
確かにそんなことを言ったが、しかしあれは。
「おい、コイン。どうゆうことだ。皇帝って言えってお前から聞いたんだぞ」
「しーらない。しーらない」
クルクルと花吹雪のように飛び回るコイン。
「おい、クードゥーどうゆうことだ」
「私に聞かないでよ。それより、皇帝になるの? なら私は側室でいいわ」
「はあ! 何言ってんだよ」
「側室の方が自由でいいじゃない。遊んでも文句言われないし」
「いやいや、そうゆう問題じゃないだろ」
「フォー様。ワタクシと婚姻の儀を行いましょう!」
「……一」
「?」
「二の」
「フォー?」
「三!」
「逃げろー! 逃げろー!」
フォーはクードゥーを抱えて、玉座の間から逃げ出した。それを追うのは革命軍のメンバーにシャロム、ウ四兄弟。何となくこうなるだろうなと思っていたのか、皆準備は万端のようだ。
黄龍城を抜け、お祭り騒ぎの街を駆ける。
後ろを追いかけるのは、革命軍。
「なんでこんなことになってるのよ!」
既視感を覚えながらクードゥーは叫ぶ。
フォーは俺が知るか! と叫び、コインを睨む。
「おい、コインが皇帝なんて言えっていったからこんなことになってんだぞ」
「自業自得。自業自得」
「コイン、覚えてろよ」
軽快に街を駆け抜け、目指すはフォートゥウェンティー号。だが、その前に立ちふさがるジェントルマン。いや、ジェントルゴリラがいた。
「ナンバーフォー! 今日こそ捕まえてやるからな」
どうやら今日は変化していないらしい。ご自慢の白いスーツをパリッと着こなしている。
「うわっ、マジかよ」
前門のリゴーラ後門の革命軍。
さすがに今回もパターンCを使う訳にはいかない。
どうしようかと迷っていると、誰かがフォー横をすり抜けリゴーラへ突撃していった。
「マッチ売りの?」
あの時の子供がリゴーラの前に立ちふさがった。
それを皮切りに、フォーを通り越して次々と革命軍がリゴーラへと群がっていく。
「おわっ、なんだ。何が起こった。ナンバーフォー、どこにいる!」
人混みに飲まれていくリゴーラ。
何が起こったと眺めていると、隣にシャロムが立っていた。
「フォー様。ここでお別れですわ」
「……嫌だって言ったら、一緒に旅できるか?」
フォーの返答にシャロムは微笑む。
その笑みに全てが詰まっていた。
「シャロム」
「フォー様。本当にありがとうございました。ワタクシはこのシーワン星を守りますわ。フォー様の妃として」
「そこは曲げないのか」
「勿論ですわ! それと、困った時はいつでも言ってくださいね。シーワン星がフォー様の味方ですわ」
「ありがとう」
「コインさん。クードゥー。本当にありがとうございました。またいつでも遊びにいらしてください」
「油淋鶏食べる。油淋鶏食べる」
「私は城に泊まってみたいわね」
「ええ、いつでも大歓迎ですわ!」
互いに笑顔を浮かべていると、遠くから声が聞こえてくる。
「ナンバーフォー! どこだー! 今日こそは捕まえてやるぞー!」
「フォー、そろそろ。フォー、そろそろ」
前方を見れば、リゴーラが革命軍を押し分け迫ってきていた。
「シャロム。皆も、本当にいろいろありがとう」
フォーは思う。
なんかどうしてこんな事してるのか分からなくなる時がある。
気づいたらこうなってたり、苦しい時もある。
けど、フォーは思う。
「なあ、コイン、クードゥー」
「なんだ。なんだ」
「なによ」
「楽しいな」
コインは上機嫌に飛び回り、クードゥーは目を逸らしながら頷く。
「皆、ナンバーフォーに感謝を!」
その背に、シャロムの声が響く。
「ナンバーフォーに挨拶を!」
ナンバーフォーに挨拶を 虚空 @takeshun00
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