第7話


 博士が言うには、この「アクシオン」という粒子は、僕たち人間の持つ感情の動きに由来されたエネルギーであるということがわかってきており、理性を持つ生物の細胞の中にのみ存在する、ニューロン細胞(脳や脊髄などの神経系を構成し、細胞体、神経突起、軸索の3つの部分に区別される形をもつ細胞)の素子の一つであるとされている。


 その科学的な関連性や妖魔との遺伝的な繋がりは分かっていない部分が多いが、その「性質」はおおよそわかっている。


 最も基本的な性質は、フィラメント構造と呼ばれる『乱雑な動きの度合い』を結ぶひも状構造の集まり(領域)であり、この「場」に於ける重力不安定性(感情の不安定性)が、エネルギーの“密度成長”を促しているとされている。


 アクシオンという粒子によって構築されている妖魔の肉体は、人間と違ってその「質量」も「密度」も不安定な流域にあるとされており、この流域の中に絶えず発生している『FB(量子フィラメント)』という亜空間歪曲の“曲率“によって、妖魔としての細胞を構成する分子間力が、物質としての量子結合過程に働くとされている。


 これは、妖魔にとっての基礎エネルギー、「妖力」を生み出すための原動力となっており、上記の分子間力が強ければ強いほど、扱える妖力の幅や肉体としての強度が増すと考えることができるだろう。



 …と、博士から聞いただけで、詳しいことはよくわかってない。


 ただ、博士の部屋にある学術誌とか専門分野の資料とかを見てると、よく目にするんだ。


 妖魔についてのことや、その「正体」についての議論が、様々な分野から考察されている内容を。

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青より青し -氷おにぎりを求めてくる雪女が、夏の猛暑で死にかけている- 平木明日香 @4963251

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