冬の朝

西短

冬の朝

 ピンポーン。

 私が朝食を摂っていると、インターホンが鳴った。

 誰だよ。まだ、6時半だぞ。

 まだ眠い目を擦りながら、玄関の扉を開ける。手に息を吹きかけて暖を取る姉が居た。寒そうだったので、とりあえず部屋に上がってもらった。

 姉が部屋にある炬燵の中に入って一息つくと、姉はふざけた感じで言ってきた。

「あなたが選ばれました」

 わけがわからず聞き返す。

「何が?」

「いや〜。実はさ、今日から一週間出張で家を開けなくちゃいけなくなっちゃってさ。だから、その間のあんずの世話をお願いしたくって」

「何で、こんな朝早くから言うの?」

 私はゆっくりとした朝を邪魔されたことを非難するように質問する。

「昨日、いきなり課長に言われたんだよ。仕方ないだろ〜。断れなかったんだよ」

「っ、だからと言って」

「お願い!正月三が日はどこのペットホテルも空いてなかったんだよ。あんた、どうせ今大学は冬休みで暇でしょ。お礼は後でちゃんとするから」

 この姉は私が何もすることがない暇な奴だと思っているのだろうか。いや、まあ実際暇なんだけど。

 私はため息をついて、

「仕方ないわね」

 と渋々承諾した。でも、実は、

 っしゃぁぁぁー。

 私は心のなかでガッツポーズをしていた。姉の家の猫はまだ幼くてすごく可愛いのだ。

 私はさっそく身支度をして姉とともに彼女の家に向かう。外は雪が結構積もっていたが、今からあの猫に会えるかと思うと、そんなことはどうでもよかった。

 姉は、家に着くと猫の世話のやり方と注意点について一通り教え、そのまま出張に行ってしまった。

 とりあえず、猫と触れ合いたかったので、しばらく姉の家で猫が私のそばに来るのを待っていた。

 しばらくすると、部屋は暖房が効いていたが、それでも寒いのか、正座している私の足の上に丸くなった。

 可愛すぎる……!

 これから一週間この子のお世話をすることに、胸を躍らせていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

冬の朝 西短 @siitakenohana

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る