傲慢

秋坂ゆえ

無色透明な

「それも違う」

 と言われた気がして、僕は俯き、貧相な爪先を見詰めるのです。


「貴方は可哀想な人ですから」

 そう言われた気がして、僕は顔を上げるのですが、そこに居るのは古びた人体模型だけなのです。


「実年齢ではなく、精神年齢の話、自分の方が出来た人間なので」

 穏やかな声に導かれ、僕は出刃包丁を手に取り、湿気を多分に含んだ日光の降り注ぐ場所に向かうのです。


「貝印を何種類か使ってます」

 色白の両腕に赤を走らせる若い女子のことを思い出しながら、僕は電車内で、


"How cool is that?"


 と、とある懐メロ曲をあるはずの無い声帯で口ずさみました。

                           

                             (了)

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傲慢 秋坂ゆえ @killjoywriter

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