ヨルシカの斜陽に影響された俺がss書いてみた

@xxxkocchi

斜陽

頬色に

茜さす日が柔らかに爆ぜた

斜陽に

僕らは目も開かぬまま



───文化祭準備中

私は図書室でサボっていた。

手に取っているのは太宰の『斜陽』だ。

この本は一文一文が洗練されており、何処を切り取っても美しく、どこかセンチメンタルな気持ちになれる。要するに『エモい』。

太宰の他の作品にも言えることだ。

そこで微かに足音が聞こえた。

いつものことだ。私のことを咎めに来たのだろう。

ドアが勢いよく空き私の名前が大声で呼ばれる。

「佐藤!」

私の名を呼んだのは椎名という女だ。

髪は黒で肩までのセミロングで、黒目。至って普遍的な人間と言っていいだろう。

比較的顔は美形で男たちの話題になっていることを小耳に挟んでいる。

「サボってないで手伝ってよ!」

「何回もいうが手伝わない。私の力は1/30だぞ?力になれるとは思うのか?」

「クラスで一丸になるのが文化祭でしょ?一人でも欠けていたら士気が下がるのよ。」

成る程。一理有る。だが、

「私は文化祭当日もサボるつもりだ。私は居ないもととして扱ってくれないか?いつものように」

私は嫌われていると認識している。

余程のことがない限り話しかけられないし、文化祭をもサボる私はかなり嫌われているだろう。

「そう。ちなみにどこでサボるの?」答えて問題ないだろう。

「いつものようにここでだ。連れ出してくれるなよ?何もできないぞ。」

「学校には来るのね。」

「先生からお達しがあってな…せめて学校には来いだとさ。」

はた迷惑な話だ。私が居たほうが士気が下がるだろうに。

「ふーん?先生わかってるじゃん。」

「どういうことだ?」

「なんでもない!」

全く理解できないが、そもそも他の人間を理解できたことなんて一度もない。流すか。

「そうか。」

「じゃあそろそろ帰るね。」

毎回思うが椎名は何をしにここへ来たのだろうか。

十中八九クラスの奴らから連れてこいと言われてだろうなと納得はしているが。

と、そこでもう五時だと気付いた。

「私も帰るか。」

そんなことをつぶやきながら家路についた。



───文化祭当日

私は例のごとく図書室でサボろうと向かった。

が、図書室については良いものの鍵が掛かっている。

考えてみれば当然か。図書室を文化祭使う人なんてどこにもいないだろう。ましてやこんな文化祭に不向きな立地だったら尚更。

面倒だか、職員室に向かうことにした。担任がいれば貸してくれる。いなくても…まぁ大丈夫だろう。

職員室について、ノックする

「すいめせん!図書室の鍵をお借りしたいのですがー!」

声を張るが一向に返事がない。

おかしく思いドアを開けると人っ子一人居ない。

先生方も文化祭を楽しんでいるのか…にしてもいいのか?留守にして。

テスト期間でもないしまぁ…良いのか。

強引に納得しつつ入口の壁にかかっていた図書室の鍵を借りる。

「失礼しました。」

一応そんなことも言いながら図書室に向かった。

私は散歩の気持ちでいた。

歩きながら想いに耽っていた。

なぜそこまで文化祭というものに躍起になるのだろう。あまつさえ先生までもが。

まぁ、答えは分かりきっているだろう。文化だろうな。人間の。

古来から人間は祭が好きなんだ。

そしてそれは今も変わらないということだ。

全く持って理解できない。

祭りの何がいいんだろうか。

極端に高くなる食品。

失われていく体力。

暑苦しい民衆。

そのどれをとっても素晴らしいとは言い難いものだ。

そんなことを長々考えていたら図書室についていた。

「今日は読んだことのない本に手も出すか」

そんなことを思いながら本の話世界にのめり込む──



気付けば五時。文化祭も終わる頃だ。その時足音が聴こえた。

こんな所まで来たならば用件は図書室だろうと察し、うなだれる。一人がよかった。

案の定ドアが開く。

そこに立っていたのは椎名だった。

「あ、佐藤。」

私に気づいた様子で近付いてくる。

「文化祭、終わったよ。」

「そうか。」

ならば、帰ろうか。いやこれが読み終わったらにしよう。

「帰らないの?」

「今いいところなんだ。」

「そ、そう…」

何処か元気がない。何かあったのだろうか?

「何かあったか?」

「っえ?なんで?」

ひどく動揺している。やはりなにかあったのだろう。

「動揺している。」

「そ、そうかな?何もなかったよ?」

そのように誤魔化された。

まぁそれ以上深入りはしないでおこう。面倒だ。

「帰ろうかな。」

「ちょっと待って!」

まさか呼び止められるとは。

「話したいことがあるの!」

「なんだ?」

そこから少し間があく。

向かい合い座る。

東からは陽の光が入り明るい。

彼女の頬が柔らかに爆ぜた。

「好きです!付き合ってください!」

まさかの告白だ。

いつもの私なら振るだろう。

しかしながら、美しい。

どうしても手放したくない。

決断し、しかし動揺し、はにかみながら泣いている彼女は、今もっとも人間だ。

その揺らぎは私にも伝わる。

しくじった、惚れちゃった。



その後私たちは帰路についた。

なぜ私を好きになったのかを聞いたが教えてくれなかった。

手をつなぎ体温が伝わる。

彼女の眩しい笑みがこの夜闇に煌めく。

あぁ、悪くない。




頬色に

茜さす日が柔らかに爆ぜた

斜陽に

僕らの道をただ照らすのなら

斜陽に

はにかむ貴方がが見えた

静かな夕凪の中

僕らは目も開かぬまま

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